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20. 乙女ゲーム?
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何だかひどく疲れた私たちはタウンハウスに帰るとお饅頭と緑茶で一息ついた。
しばらくすると、フルール様から「婚約者の方とお話がある様でしたのでお先に失礼させていただきました。ご挨拶もせずにごめんなさい」
というお手紙とお菓子が届いた。なんと、チョコレートでコーティングされたクッキーだった。この世界でチョコレートを見たのは初めてだったのでとても嬉しく美味しくいただきました。
それにしてもラクアート様の彼女、フレグランスと名乗られていたけどあり得ない髪色と振る舞いは到底貴族とは思えなかった。
そして、一応、私の婚約者であるラクアート様がそれを容認しているのが信じられない。以前、好きな人がいると言っていたのはあのピンクの子? あれが好きな人?
「リーナ。俺、ちょっと思い当たった事があるんだけど……」
「なあに、お兄様?」
「あのあり得ない髪の色、見ただろ? 礼儀知らずなのに妙にリーナの婚約者があの小娘を褒めていたし、リーナを呼び捨てにして初めて会ったはずなのに良く知っているような様子だった」
「ええ、そうね。不思議だわ」
「リーナ、乙女ゲームって知っている?」
「乙女ゲーム? そういえば娘から聞いた事があるような……」
「前に変なメモを拾ったじゃないか。そのメモに書かれていた名前って学生会のメンバーで、つまり、彼らが攻略対象者って考えればつじつまがあう」
「つじつま……」
「つまり、俺たち、単に転生したんじゃなくてゲームの世界に転生して、その登場人物になった……と考えれば」
「ゲームの世界なの? この世界」
「そう。そして、あのピンク頭はゲームをよく知っている。だから、リーナを呼び捨てにして親し気にしていたんだ。俺、乙女ゲームはした事ないけど小説は呼んだことがあって、だいたい、主人公が障害を乗り越えて攻略対象者と結ばれる話になっている。ゲームだと選択肢が色々出てくるけど誰を選ぶかによって話が少し変わってきたりする、と思う」
「……メモには私とお兄様の名前もあったわ。フルール様の名前も。それにしてもフルール様って薄情じゃない。トラブルは避けて通りそうな人とは思っていたけど、いつの間にかいなくなっているんですもの」
「確かに。でも、ひょっとして彼女も登場人物でトラブルを避けているのかもしれない。そうすると、彼女も転生者? そうすると、リーナと仲良くしたいというのはどういう事だろう? それと、本当に不本意だけど俺も攻略対象者かもしれない。うーん。わからないな。それで、乙女ゲームには悪役令嬢というのが出てきて、主人公の邪魔をしたり、排除しようとしてくるんだ」
「悪役令嬢……わたしが? でも、どうして親友とか側妃にするとか言ったのかしら」
「多分、悪役令嬢というよりはお助けキャラを兼ねているんじゃないか? 主人公の為に色々と手助けしたり、仲良くしてあげる仲間みたいな? 第一王子を攻略するとしたらフルール様が悪役令嬢になるんだろうけど、あの様子を見るとリーナの婚約者を攻略しているみたいだ」
「ラクアート様なら要らないから喜んであげるけど、彼女の加護は何かしら? 正妻になるって言っていたから水魔法なのかしら?」
「わからないな。あのピンク、頭悪そうだったし口も軽そうだからここに招いて情報を引き出すか。お茶会、開け! って言っていたし」
「学生会を招いて。と言っていたって事は学生会のメンバーと面識があるという事よね」
「リーナの婚約者がらみじゃないか? 今年の新入生の中にあのピンク頭は居なかったから、2学年か」
「私、あまり目立ちたくないし学生会と関わりあいたくないわ」
「だけど、これから先にゲームのイベントとか起きるとしたら情報は必要だ。この世界が乙女ゲームだとしたら攻略対象者との仲を深める為にヒロインに都合の良いイベントが起きるんじゃないか? それと、恋愛関係だけならいいけど、世界を救うとかRPGの要素が入ったゲームかもしれないし、それだったらこれから先も慎重に動かなくては」
「世界を救うって?!」
「聖女とか魔王とか出てくる乙女ゲームもあるから。もう、本当にゲームの中身が分からないというのは困るな。リーナ、俺たちの名前とか前世で聞いた覚えはない?」
「お兄様、星の王子様っていわれていたわね。確か、そんな題名のお話が」
「俺? いや、そうじゃなくて。でも、何で星の王子様なんだろう? その辺も聞き出したいな」
という事でイヤだけど、よくわからないのでピンクの彼女の事をラクアート様に聞きに行くことにした。大体、家名も名乗らずに名前だけ言ってわかるはずないのに、お茶会を開けなんてどうかしているとしか思えない。
それに、私たちはまだ12歳なのにゲームの世界だとしても始まりが早すぎる、とお兄様が悩んでいた。
普通はせめて15歳ぐらいからの設定でないと、恋愛が盛り上がらないとも言っていた。
確かに12歳ってまだ子供だと思う。この世界の成人は15歳だけど前世のゲームでも12歳からはない、と思う。
だって、まだまだ時間はあると思っていたのに、ゲームが開始されるとしたら情報もないし、どういうゲームかもわからない状態でゲームの強制力とかもあるかもしれないとお兄様がいうし、もう! すごく困ってしまう。
ピンクな彼女とフルール様が転生者なのか確認もしなければいけないし、
乙女ゲーム! なにそれ!?
私の平穏な毎日を返してよ、とため息が出てしまった。
しばらくすると、フルール様から「婚約者の方とお話がある様でしたのでお先に失礼させていただきました。ご挨拶もせずにごめんなさい」
というお手紙とお菓子が届いた。なんと、チョコレートでコーティングされたクッキーだった。この世界でチョコレートを見たのは初めてだったのでとても嬉しく美味しくいただきました。
それにしてもラクアート様の彼女、フレグランスと名乗られていたけどあり得ない髪色と振る舞いは到底貴族とは思えなかった。
そして、一応、私の婚約者であるラクアート様がそれを容認しているのが信じられない。以前、好きな人がいると言っていたのはあのピンクの子? あれが好きな人?
「リーナ。俺、ちょっと思い当たった事があるんだけど……」
「なあに、お兄様?」
「あのあり得ない髪の色、見ただろ? 礼儀知らずなのに妙にリーナの婚約者があの小娘を褒めていたし、リーナを呼び捨てにして初めて会ったはずなのに良く知っているような様子だった」
「ええ、そうね。不思議だわ」
「リーナ、乙女ゲームって知っている?」
「乙女ゲーム? そういえば娘から聞いた事があるような……」
「前に変なメモを拾ったじゃないか。そのメモに書かれていた名前って学生会のメンバーで、つまり、彼らが攻略対象者って考えればつじつまがあう」
「つじつま……」
「つまり、俺たち、単に転生したんじゃなくてゲームの世界に転生して、その登場人物になった……と考えれば」
「ゲームの世界なの? この世界」
「そう。そして、あのピンク頭はゲームをよく知っている。だから、リーナを呼び捨てにして親し気にしていたんだ。俺、乙女ゲームはした事ないけど小説は呼んだことがあって、だいたい、主人公が障害を乗り越えて攻略対象者と結ばれる話になっている。ゲームだと選択肢が色々出てくるけど誰を選ぶかによって話が少し変わってきたりする、と思う」
「……メモには私とお兄様の名前もあったわ。フルール様の名前も。それにしてもフルール様って薄情じゃない。トラブルは避けて通りそうな人とは思っていたけど、いつの間にかいなくなっているんですもの」
「確かに。でも、ひょっとして彼女も登場人物でトラブルを避けているのかもしれない。そうすると、彼女も転生者? そうすると、リーナと仲良くしたいというのはどういう事だろう? それと、本当に不本意だけど俺も攻略対象者かもしれない。うーん。わからないな。それで、乙女ゲームには悪役令嬢というのが出てきて、主人公の邪魔をしたり、排除しようとしてくるんだ」
「悪役令嬢……わたしが? でも、どうして親友とか側妃にするとか言ったのかしら」
「多分、悪役令嬢というよりはお助けキャラを兼ねているんじゃないか? 主人公の為に色々と手助けしたり、仲良くしてあげる仲間みたいな? 第一王子を攻略するとしたらフルール様が悪役令嬢になるんだろうけど、あの様子を見るとリーナの婚約者を攻略しているみたいだ」
「ラクアート様なら要らないから喜んであげるけど、彼女の加護は何かしら? 正妻になるって言っていたから水魔法なのかしら?」
「わからないな。あのピンク、頭悪そうだったし口も軽そうだからここに招いて情報を引き出すか。お茶会、開け! って言っていたし」
「学生会を招いて。と言っていたって事は学生会のメンバーと面識があるという事よね」
「リーナの婚約者がらみじゃないか? 今年の新入生の中にあのピンク頭は居なかったから、2学年か」
「私、あまり目立ちたくないし学生会と関わりあいたくないわ」
「だけど、これから先にゲームのイベントとか起きるとしたら情報は必要だ。この世界が乙女ゲームだとしたら攻略対象者との仲を深める為にヒロインに都合の良いイベントが起きるんじゃないか? それと、恋愛関係だけならいいけど、世界を救うとかRPGの要素が入ったゲームかもしれないし、それだったらこれから先も慎重に動かなくては」
「世界を救うって?!」
「聖女とか魔王とか出てくる乙女ゲームもあるから。もう、本当にゲームの中身が分からないというのは困るな。リーナ、俺たちの名前とか前世で聞いた覚えはない?」
「お兄様、星の王子様っていわれていたわね。確か、そんな題名のお話が」
「俺? いや、そうじゃなくて。でも、何で星の王子様なんだろう? その辺も聞き出したいな」
という事でイヤだけど、よくわからないのでピンクの彼女の事をラクアート様に聞きに行くことにした。大体、家名も名乗らずに名前だけ言ってわかるはずないのに、お茶会を開けなんてどうかしているとしか思えない。
それに、私たちはまだ12歳なのにゲームの世界だとしても始まりが早すぎる、とお兄様が悩んでいた。
普通はせめて15歳ぐらいからの設定でないと、恋愛が盛り上がらないとも言っていた。
確かに12歳ってまだ子供だと思う。この世界の成人は15歳だけど前世のゲームでも12歳からはない、と思う。
だって、まだまだ時間はあると思っていたのに、ゲームが開始されるとしたら情報もないし、どういうゲームかもわからない状態でゲームの強制力とかもあるかもしれないとお兄様がいうし、もう! すごく困ってしまう。
ピンクな彼女とフルール様が転生者なのか確認もしなければいけないし、
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私の平穏な毎日を返してよ、とため息が出てしまった。
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