21 / 103
21. ラクアート様が可笑しい
しおりを挟む
ラクアート様は一応、私の婚約者なのでタウンハウスの管理棟に併設されている応接間とかテラスを利用して面会ができる。
男性用のタウンハウスに女性は立ち入る事はできないが、女性用のタウンハウスには前もって許可を得る事で1階の広間でお茶会を開く事ができる。
そのお茶会には男性陣を招く事ができるけど、その時は2階以上には部外者は入れないように管理者権限で設定がされるし、護衛の人が玄関前と庭先と室内にそれぞれ待機する事になっている。
親元から離れるせいか、男女関係はかなり厳重に管理されていると思う。見張られているともいうけど。
高位貴族以外は男女別だがかなり大きな寮があり、それぞれ爵位に応じた個室と側付きの部屋が用意され、平民でも狭くはあるが水回りが付いた個室があるし食堂もある。タウンハウスには前もって注文した食事が魔道具で送ってくるが侍女と使用人は管理棟にいつでも食事ができる食堂があるのでそちらですませるようだ。
とりあえず、ラクアート様に「お会いしたいのでお時間取ってください」と貴族らしい言い回しのお手紙を書いた。と、直ぐに返事がきて翌日の放課後、管理棟のテラスでお会いする事になった。
できればずっと、顔を合わせたくないと思っていたが仕方がない。
朝、フルール様が中庭で所在なさげに景色を眺めていた。私が出てくるのを待っていたらしい。学年ごとに少しずつ始業時間がずらしてあるので通学路で他の学年の方と会う事はあまりない。
「おはようございます。フルール様」
「おはようございます。リーナさま。昨日はごめんなさい。私、男の方も派手な方もとても苦手にしておりますの。昨日は大丈夫でした?」
「ええ、たいした事はございませんでしたわ。昨日はわざわざ美味しいお菓子をありがとうございました。美味しくいただきました。昨日はラクアート様からお付き合いされている方をご紹介いただきましたの」
「えっ? お付き合い……。あの、ラクアート様ってリーナ様の婚約者ではなかったですか?」
「ラクアート様は私との婚約の前からお好きな方がいらっしゃったそうですの。あのピンクの髪の方らしいですわ。ピンクの髪の方が正妻で私は側妃になるらしいですよ」
「えっ!? そんな! 婚約は家と家との契約ですわ」
「よくわからないのですがピンクの方がそう言われていたので。それならそれで構いませんが、あのピンクの方の家名も加護も存じ上げませんので本日、ラクアート様にお尋ねするつもりですの」
「そ、そうですか」
「ピンクの方の意向も確認しておかなくてはと思っています」
「そうですか。そうですね。何か私に、いえ、私には何もできないですね。ごめんなさい」
それきり、フルール様は考え込んでしまったようだ。フルール様の口癖は「ごめんなさい」のような気がする。
教室でもフルール様は一日ボンヤリとしていた。
話しかけても反応が鈍いので、彼女が転生者かどうかはよくわからなかった。どのみち、フルール様は第一王子の婚約者ではないので、今のところ悪役令嬢ではないと思う。
むしろ、ラクアート様の婚約者になっている私のほうが悪役令嬢になる可能性が高いかもしれない。
悪役令嬢……悪役って響きはカッコイイかもしれない。でも、乙女ゲームの中の悪役令嬢は嫌がらせをしたり悪口をいったり、人を雇ってヒロインを襲わせたりするらしいから、それは私に向いてない。
お兄様がもし、悪役令嬢なら断罪シーンがあるから、その時は返り討ちにして殲滅すればいいと言っていたけど、それはちょっと、と思う。
精々、氷雨で皆を凍えさせてその間に逃げるくらいかな。
さて、放課後の管理棟のテラスにて、私たちは延々とラクアート様のお惚気を聞かされていた。彼に言わせると彼女、フレグランス・タチワルーイは可愛くて天真爛漫で純真でラクアート様の真実の愛をささげるべく現れた天使であるそうだ。
まだ、13歳なのに下品であざとい感じがすると思うけど、恋のフィルターがかかっているせいか目が、いや、脳がおかしくなっているとしか思えない。
実は3年前、10歳の時まで彼女は平民だったそうだ。だけど、勝手に加護の儀に乱入して水晶を触ったら凄い魔力量で加護も魔法関係の『みず魔』だった為、そこの領主タチワルーイ男爵の養女に迎えられた。
タチワルーイ男爵の領地は飛び地ではあるが、ウオーター公爵家の傘下に当たる為、魔法学園に入学する為の教育を兼ねた行儀見習いとして公爵家に預けられたという。
そこで彼らは運命の出会いをしたそうだ。
そして、彼女の加護はなんと『みず魔』この加護は水魔法の下位互換に当たるけど、進化すれば『みずの魔法』、さらには『水の魔法』にまで進化した人も過去にはいるそうだ。
えっ? その加護で公爵夫人になるって言っているの? 客観的にみて無理じゃない? とお話を聞いて思ったら、
「これは秘密の話なんだがフルーはいずれ聖女に成るんだ。そうしたら加護が『聖なる水魔法』になるから公爵夫人になるのに何も問題はない。だから、君はフルーを助けてやってくれ。フルーはあまり勉強が得意ではないみたいだから。あの子は君と仲良くしたいと言っているから是非、お茶に招いてほしい」
と言いう事でとりあえず、ピンクの彼女をお茶に招く事になった。
本音はあまり仲良くなりたくないけどね。
ラクアート様ってほんとに可笑しいと思う。
男性用のタウンハウスに女性は立ち入る事はできないが、女性用のタウンハウスには前もって許可を得る事で1階の広間でお茶会を開く事ができる。
そのお茶会には男性陣を招く事ができるけど、その時は2階以上には部外者は入れないように管理者権限で設定がされるし、護衛の人が玄関前と庭先と室内にそれぞれ待機する事になっている。
親元から離れるせいか、男女関係はかなり厳重に管理されていると思う。見張られているともいうけど。
高位貴族以外は男女別だがかなり大きな寮があり、それぞれ爵位に応じた個室と側付きの部屋が用意され、平民でも狭くはあるが水回りが付いた個室があるし食堂もある。タウンハウスには前もって注文した食事が魔道具で送ってくるが侍女と使用人は管理棟にいつでも食事ができる食堂があるのでそちらですませるようだ。
とりあえず、ラクアート様に「お会いしたいのでお時間取ってください」と貴族らしい言い回しのお手紙を書いた。と、直ぐに返事がきて翌日の放課後、管理棟のテラスでお会いする事になった。
できればずっと、顔を合わせたくないと思っていたが仕方がない。
朝、フルール様が中庭で所在なさげに景色を眺めていた。私が出てくるのを待っていたらしい。学年ごとに少しずつ始業時間がずらしてあるので通学路で他の学年の方と会う事はあまりない。
「おはようございます。フルール様」
「おはようございます。リーナさま。昨日はごめんなさい。私、男の方も派手な方もとても苦手にしておりますの。昨日は大丈夫でした?」
「ええ、たいした事はございませんでしたわ。昨日はわざわざ美味しいお菓子をありがとうございました。美味しくいただきました。昨日はラクアート様からお付き合いされている方をご紹介いただきましたの」
「えっ? お付き合い……。あの、ラクアート様ってリーナ様の婚約者ではなかったですか?」
「ラクアート様は私との婚約の前からお好きな方がいらっしゃったそうですの。あのピンクの髪の方らしいですわ。ピンクの髪の方が正妻で私は側妃になるらしいですよ」
「えっ!? そんな! 婚約は家と家との契約ですわ」
「よくわからないのですがピンクの方がそう言われていたので。それならそれで構いませんが、あのピンクの方の家名も加護も存じ上げませんので本日、ラクアート様にお尋ねするつもりですの」
「そ、そうですか」
「ピンクの方の意向も確認しておかなくてはと思っています」
「そうですか。そうですね。何か私に、いえ、私には何もできないですね。ごめんなさい」
それきり、フルール様は考え込んでしまったようだ。フルール様の口癖は「ごめんなさい」のような気がする。
教室でもフルール様は一日ボンヤリとしていた。
話しかけても反応が鈍いので、彼女が転生者かどうかはよくわからなかった。どのみち、フルール様は第一王子の婚約者ではないので、今のところ悪役令嬢ではないと思う。
むしろ、ラクアート様の婚約者になっている私のほうが悪役令嬢になる可能性が高いかもしれない。
悪役令嬢……悪役って響きはカッコイイかもしれない。でも、乙女ゲームの中の悪役令嬢は嫌がらせをしたり悪口をいったり、人を雇ってヒロインを襲わせたりするらしいから、それは私に向いてない。
お兄様がもし、悪役令嬢なら断罪シーンがあるから、その時は返り討ちにして殲滅すればいいと言っていたけど、それはちょっと、と思う。
精々、氷雨で皆を凍えさせてその間に逃げるくらいかな。
さて、放課後の管理棟のテラスにて、私たちは延々とラクアート様のお惚気を聞かされていた。彼に言わせると彼女、フレグランス・タチワルーイは可愛くて天真爛漫で純真でラクアート様の真実の愛をささげるべく現れた天使であるそうだ。
まだ、13歳なのに下品であざとい感じがすると思うけど、恋のフィルターがかかっているせいか目が、いや、脳がおかしくなっているとしか思えない。
実は3年前、10歳の時まで彼女は平民だったそうだ。だけど、勝手に加護の儀に乱入して水晶を触ったら凄い魔力量で加護も魔法関係の『みず魔』だった為、そこの領主タチワルーイ男爵の養女に迎えられた。
タチワルーイ男爵の領地は飛び地ではあるが、ウオーター公爵家の傘下に当たる為、魔法学園に入学する為の教育を兼ねた行儀見習いとして公爵家に預けられたという。
そこで彼らは運命の出会いをしたそうだ。
そして、彼女の加護はなんと『みず魔』この加護は水魔法の下位互換に当たるけど、進化すれば『みずの魔法』、さらには『水の魔法』にまで進化した人も過去にはいるそうだ。
えっ? その加護で公爵夫人になるって言っているの? 客観的にみて無理じゃない? とお話を聞いて思ったら、
「これは秘密の話なんだがフルーはいずれ聖女に成るんだ。そうしたら加護が『聖なる水魔法』になるから公爵夫人になるのに何も問題はない。だから、君はフルーを助けてやってくれ。フルーはあまり勉強が得意ではないみたいだから。あの子は君と仲良くしたいと言っているから是非、お茶に招いてほしい」
と言いう事でとりあえず、ピンクの彼女をお茶に招く事になった。
本音はあまり仲良くなりたくないけどね。
ラクアート様ってほんとに可笑しいと思う。
12
あなたにおすすめの小説
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます
かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~
【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】
奨励賞受賞
●聖女編●
いきなり召喚された上に、ババァ発言。
挙句、偽聖女だと。
確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。
だったら好きに生きさせてもらいます。
脱社畜!
ハッピースローライフ!
ご都合主義万歳!
ノリで生きて何が悪い!
●勇者編●
え?勇者?
うん?勇者?
そもそも召喚って何か知ってますか?
またやらかしたのかバカ王子ー!
●魔界編●
いきおくれって分かってるわー!
それよりも、クロを探しに魔界へ!
魔界という場所は……とてつもなかった
そしてクロはクロだった。
魔界でも見事になしてみせようスローライフ!
邪魔するなら排除します!
--------------
恋愛はスローペース
物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています
その聖女は身分を捨てた
喜楽直人
ファンタジー
ある日突然、この世界各地に無数のダンジョンが出来たのは今から18年前のことだった。
その日から、この世界には魔物が溢れるようになり人々は武器を揃え戦うことを覚えた。しかし年を追うごとに魔獣の種類は増え続け武器を持っている程度では倒せなくなっていく。
そんな時、神からの掲示によりひとりの少女が探し出される。
魔獣を退ける結界を作り出せるその少女は、自国のみならず各国から請われ結界を貼り廻らせる旅にでる。
こうして少女の活躍により、世界に平和が取り戻された。
これは、平和を取り戻した後のお話である。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる