27 / 103
27. お茶会、その後
しおりを挟む
お茶会が無事に終わり、エーアリア様とフルール様のお家の使用人の方たちがササっとお片付けをしてくださって、皆さまが引き上げていった。
お茶会の参加者は皆さま、良いお茶会でしたと笑顔で帰って行かれたので良かったと思う。
「お兄様、何とか無事に終わって良かったけど、良かったのかしら?」
「うーん。お茶会的には無事で良かったけど、ピンク頭の事を考えるとなぁ~。なんかあれ、魔王を復活させるみたいな事、言っていたし」
「何か余計な事をしそうなのが怖いわ」
「殿下は転生者みたいだから、どうしよう。話してしまうか? いや、まだゲームは始まっていないし、どうしたものか。でも、殿下が攻略対象という事はあのピンク頭を殿下が好きになる事もあり得るのか」
「うわー、見たくないわ。ピンクの彼女にデレデレしているアルファント殿下なんて」
「ゲームが始まる前にピンク頭を丸焼きにしてしまうか」
「もう。お兄様ったら。せめて修道院とか」
「ヒロイン的にはバッドエンドだな。それでも、ゲームの内容は聞き出しておかないと。殿下の様子を見るに乙女ゲームの知識は持って無いみたいなんだよなぁ~」
「誰かゲームに詳しい人がいるといいのに」
私たちはドラ焼きと煎茶で一息ついていた。
アルファント殿下があまりに美味しそうにドラ焼きを食べるので食べたくなったのだ。
あの時、戸棚に置いてあったドラ焼きはお兄様が広間の最終チェックをする時に摘まんで食べようと置いたまま忘れていたモノだった。
アルファント殿下の侍従の方が言うには愛想笑いに疲れた殿下がちょっと人除けに厨房に入って、直ぐに「何かある」と言いながら戸棚を開けてドラ焼きを見つけたのだそうだ。
「殿下は時々、犬なみの嗅覚を発揮しますから」と言っていた。特に食べ物に関してはとても優れた感覚をお持ちだそうだ。
殿下と侍従はとても仲が良さそうに見える。「小さな頃からの仲なので遠慮が無くなってしまったのです。殿下もそれで良い、と言われるものですから」という侍従に殿下も苦笑いをしていた。
お茶会はとりあえず無事に終わったけど後が怖い、と思っていると、翌日ラクアート様から呼び出しがあった。
どうしてエーアリア様たちがお茶会に参加していたのかと責められたけど、初めてのお茶会で相談したらエーアリア様が仕切りますと言われたという話に「うーん、彼女がそう言ったら仕方ないか」と納得されたようだった。
「だが、せめてタウンハウスの女性全員が参加するなら、そうと教えてくれてもいいじゃないか、それも皆がお揃いのテーマで着飾っていて。フレーが仲間外れにされたと煩かったんだぞ」
あっ、ラクアート様でもお揃いのテーマってわかったんだ、とちょっと嬉しくなった。
ラクアート様への連絡はエーアリア様がしてくださると言われたので、とお話するとまた難しい顔で唸ってしまった。
「なぁ、ミス・エーアリアはフレーの事を嫌っていると思うか?」
「えっ! それはその、どうでしょう」
「リーナはフレーの事、何か言ったのか?」
「いえ、私はお茶会の相談にフルール様と伺っただけですわ。フレグランス様については何もお話しておりません。エーアリア様は以前からフレグランス様の事はご存じでいらしたようですわ」
「フレーは何時も私と一緒に居たがるから。ひょっとして噂になっているのか」
「ええ、皆さま、ラクアート様がフレグランス嬢を大切になされているのはご存じのようでした」
「そうか。フレーは何れ聖女になるけど今は知られてないから。いや、この間、聖女になると宣言してしまったから、どうしたものか」
ラクアート様、ほんとにピンクの彼女が聖女になると信じているらしい。その根拠はどこにあるのだか。この世界は乙女ゲームの世界であなたは攻略対象者ですって聞いているのかしら?
「ラクアート様、フレグランス様が聖女になるのは何時とかどういった経緯でなられるとか聞かれていますか?」
「うん。フレーが聖女になるのは14歳だと言っていた。15歳になる前に聖なるお告げによって試練を受けて聖女の杖が与えられるそうだ」
「そのお告げは大聖堂から神託として告げられますの?」
「いや、フレーに直接、降りてくるそうだ」
「そうですか……」
「本来は魔王が復活して、それを聖女が仲間と共に封ずるのだが、フレーの力で魔王の復活を阻止していると言っていた。だが、先日のミス・エーアリアの発言でフレーが怒ってしまって、魔王を抑える為の集中力が途切れそう、と言っているんだ。何とかしないと魔王が復活してしまう」
「集中力が、ですか……」
「リーナ、君が何とかフレーを慰めてくれないか。女どうしのほうが話しやすいと思うし。フレーはどうしても異性に好かれてしまうから、あまり友人がいないんだ」
そうですか、そうですか。恋愛脳って恐ろしいと思う。何でも良いほうに取れるんだね。
ピンクの彼女に会って、愚痴をきくのは凄くイヤ! だけど仕方ないのでご招待する事にした。なるべく情報を引き出しておきたいし。
どうして、私がこんな苦労をしなくてはいけないのでしょう。
ラクアート様なんていらないし、婚約破棄、できたらいいのに。
お茶会の参加者は皆さま、良いお茶会でしたと笑顔で帰って行かれたので良かったと思う。
「お兄様、何とか無事に終わって良かったけど、良かったのかしら?」
「うーん。お茶会的には無事で良かったけど、ピンク頭の事を考えるとなぁ~。なんかあれ、魔王を復活させるみたいな事、言っていたし」
「何か余計な事をしそうなのが怖いわ」
「殿下は転生者みたいだから、どうしよう。話してしまうか? いや、まだゲームは始まっていないし、どうしたものか。でも、殿下が攻略対象という事はあのピンク頭を殿下が好きになる事もあり得るのか」
「うわー、見たくないわ。ピンクの彼女にデレデレしているアルファント殿下なんて」
「ゲームが始まる前にピンク頭を丸焼きにしてしまうか」
「もう。お兄様ったら。せめて修道院とか」
「ヒロイン的にはバッドエンドだな。それでも、ゲームの内容は聞き出しておかないと。殿下の様子を見るに乙女ゲームの知識は持って無いみたいなんだよなぁ~」
「誰かゲームに詳しい人がいるといいのに」
私たちはドラ焼きと煎茶で一息ついていた。
アルファント殿下があまりに美味しそうにドラ焼きを食べるので食べたくなったのだ。
あの時、戸棚に置いてあったドラ焼きはお兄様が広間の最終チェックをする時に摘まんで食べようと置いたまま忘れていたモノだった。
アルファント殿下の侍従の方が言うには愛想笑いに疲れた殿下がちょっと人除けに厨房に入って、直ぐに「何かある」と言いながら戸棚を開けてドラ焼きを見つけたのだそうだ。
「殿下は時々、犬なみの嗅覚を発揮しますから」と言っていた。特に食べ物に関してはとても優れた感覚をお持ちだそうだ。
殿下と侍従はとても仲が良さそうに見える。「小さな頃からの仲なので遠慮が無くなってしまったのです。殿下もそれで良い、と言われるものですから」という侍従に殿下も苦笑いをしていた。
お茶会はとりあえず無事に終わったけど後が怖い、と思っていると、翌日ラクアート様から呼び出しがあった。
どうしてエーアリア様たちがお茶会に参加していたのかと責められたけど、初めてのお茶会で相談したらエーアリア様が仕切りますと言われたという話に「うーん、彼女がそう言ったら仕方ないか」と納得されたようだった。
「だが、せめてタウンハウスの女性全員が参加するなら、そうと教えてくれてもいいじゃないか、それも皆がお揃いのテーマで着飾っていて。フレーが仲間外れにされたと煩かったんだぞ」
あっ、ラクアート様でもお揃いのテーマってわかったんだ、とちょっと嬉しくなった。
ラクアート様への連絡はエーアリア様がしてくださると言われたので、とお話するとまた難しい顔で唸ってしまった。
「なぁ、ミス・エーアリアはフレーの事を嫌っていると思うか?」
「えっ! それはその、どうでしょう」
「リーナはフレーの事、何か言ったのか?」
「いえ、私はお茶会の相談にフルール様と伺っただけですわ。フレグランス様については何もお話しておりません。エーアリア様は以前からフレグランス様の事はご存じでいらしたようですわ」
「フレーは何時も私と一緒に居たがるから。ひょっとして噂になっているのか」
「ええ、皆さま、ラクアート様がフレグランス嬢を大切になされているのはご存じのようでした」
「そうか。フレーは何れ聖女になるけど今は知られてないから。いや、この間、聖女になると宣言してしまったから、どうしたものか」
ラクアート様、ほんとにピンクの彼女が聖女になると信じているらしい。その根拠はどこにあるのだか。この世界は乙女ゲームの世界であなたは攻略対象者ですって聞いているのかしら?
「ラクアート様、フレグランス様が聖女になるのは何時とかどういった経緯でなられるとか聞かれていますか?」
「うん。フレーが聖女になるのは14歳だと言っていた。15歳になる前に聖なるお告げによって試練を受けて聖女の杖が与えられるそうだ」
「そのお告げは大聖堂から神託として告げられますの?」
「いや、フレーに直接、降りてくるそうだ」
「そうですか……」
「本来は魔王が復活して、それを聖女が仲間と共に封ずるのだが、フレーの力で魔王の復活を阻止していると言っていた。だが、先日のミス・エーアリアの発言でフレーが怒ってしまって、魔王を抑える為の集中力が途切れそう、と言っているんだ。何とかしないと魔王が復活してしまう」
「集中力が、ですか……」
「リーナ、君が何とかフレーを慰めてくれないか。女どうしのほうが話しやすいと思うし。フレーはどうしても異性に好かれてしまうから、あまり友人がいないんだ」
そうですか、そうですか。恋愛脳って恐ろしいと思う。何でも良いほうに取れるんだね。
ピンクの彼女に会って、愚痴をきくのは凄くイヤ! だけど仕方ないのでご招待する事にした。なるべく情報を引き出しておきたいし。
どうして、私がこんな苦労をしなくてはいけないのでしょう。
ラクアート様なんていらないし、婚約破棄、できたらいいのに。
11
あなたにおすすめの小説
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています
召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます
かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~
【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】
奨励賞受賞
●聖女編●
いきなり召喚された上に、ババァ発言。
挙句、偽聖女だと。
確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。
だったら好きに生きさせてもらいます。
脱社畜!
ハッピースローライフ!
ご都合主義万歳!
ノリで生きて何が悪い!
●勇者編●
え?勇者?
うん?勇者?
そもそも召喚って何か知ってますか?
またやらかしたのかバカ王子ー!
●魔界編●
いきおくれって分かってるわー!
それよりも、クロを探しに魔界へ!
魔界という場所は……とてつもなかった
そしてクロはクロだった。
魔界でも見事になしてみせようスローライフ!
邪魔するなら排除します!
--------------
恋愛はスローペース
物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。
聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
その聖女は身分を捨てた
喜楽直人
ファンタジー
ある日突然、この世界各地に無数のダンジョンが出来たのは今から18年前のことだった。
その日から、この世界には魔物が溢れるようになり人々は武器を揃え戦うことを覚えた。しかし年を追うごとに魔獣の種類は増え続け武器を持っている程度では倒せなくなっていく。
そんな時、神からの掲示によりひとりの少女が探し出される。
魔獣を退ける結界を作り出せるその少女は、自国のみならず各国から請われ結界を貼り廻らせる旅にでる。
こうして少女の活躍により、世界に平和が取り戻された。
これは、平和を取り戻した後のお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる