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36. 対策会議
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「ねえ、お兄様。どうしましょう」
「うーん。無駄にボジティブだなあ、ピンク頭。魔王の事さえなければ放置で良いんだけど。いや、でも乙女ゲームと考えるとアルファント殿下が心配だ」
「でもね、乙女ゲームはまだ始まらないのよ」
「とりあえず、殿下に相談だな」
という事で、
学生会の会議室でアルファント殿下と侍従のランディ様、騎士見習いのトーリスト様にお兄様を加えて密談中。
トーリスト様は戦闘訓練に加わるうちに自然と仲間になった。
もう、あっさりと乙女ゲームの話を殿下がばらしてしまい、「そうだったんですか」とあっさり信じてしまった。最近、殿下の行動が怪しいなと思っていたそうだ。
でも、私の事を時々「聖女さま」と呼びかけてくるのは困る。
無意識についつい、呼んでしまうそうだ……。どういう事?
「ピンクが聖女! ありえん」
「信じられませんね」
「話を聞く限り、ピンクの方が聖女になったとは思えません。その、物語はピンクの方が聖女に成ってから始まるとお聞きしましたが、本来は来年の冬に聖女に成るのですよね」
「本人も前倒し過ぎて、ゲームがまだ始まらないのかも、って言っていました」
「ピンクは魔王を復活させる気はないのだよな」
「以前はエーアリア様の事があって、魔王を復活させてやる! なんて言っていましたけど魔王を封印するための仲間集めとか封印するための戦闘とかがしたくないみたいで、取り合えず、聖女に成るだけでいいかな、と」
「でも、魔王が復活しなければ聖女を認定というか、国とか神殿とかが聖女を認めないだろう?」
「レベルを上げて、聖女の杖がキラキラになったら神殿に駆け込むそうです」
「どうやって、レベルを上げるんだ」
「愛の力だそうです」
「はっ!?」
「へ!?」
「日々の生活の中で攻略対象の人たちと絆を深め、愛されることでレベルが上がるらしいですよ。だから、ラクアート様だけでなくて他の人達とも仲良くする恋の季節が魔法学園3年生だそうです。デレてくるアルファント殿下が見たいって言っていました」
「止めてくれ」
殿下は物凄くイヤな顔をした。
「ラクアートはどうするんだ?」
「ラクアート様はキープですよ。本命でもあるみたいで、リーナを側において都合よく使いながら楽をして、将来も楽しく暮らしたいと」
「ラクアートは、公爵家で呼びだして見てもらったのだが、魅了はされてないし、状態異常にもなってなかったそうだ」
「じゃぁ、素でピンク頭に惚れていると?!」
「そうらしい」
「刷り込みでもされたのかな? 四六時中一緒にいるから」
「鳥頭という奴ですね」
「そうかも」
「それにしても転移陣まで勝手に使うなんて。アイツ、信じられないバカだな」
「確かに」
お茶請けにシュークリームを山ほど持ってきたので、アルファント殿下とランディ様、トーリスト様はポイポイとシュークリームを口に放り込んでいる。
一口サイズのシュークリームにカスタードと生クリームとジャム各種を入れたものだけど、カスタードだけだったり、クリームにジャムが入っていたり、食べてみないと何が入っているのかわからない。
お兄様の希望でカレー入りのシュークリームもいくつか入れてみた。
あっ、トーリスト様が妙な顔をした。
「これ、変わった味ですが、美味しいです。辛いけど、これはこれで」
「なんか、カレーの匂いがする。シュークリームの中にカレーを入れたのか?」
「お兄様の希望です」
「俺も食べたい」
「うん。これもカレー入りですね。甘いモノを食べているとこれもありですね」
「俺も食べたい」
「残念。殿下、カレー入りは3つだけなんです」
ランディ様とトーリスト様とお兄様が当たりを引いたようだ。アルファント殿下はカレー入りが食べたいらしいけど、残念ながらもう無くなってしまった。
結局、ゲームはまだ始まっていないけど、念のためにピンクさんを避ける事になった。
攻略対象者とも接触をしないように学生会の入っている学生会館の入り口には警備員を置いてラクアート様とピンクさんが来たら学生会の執務室に警報が鳴るようにする。彼らが来たら即、会議室で会議をする事になっている。
それと、ラクアート様には用もないのに仕事の邪魔をしないようにと抗議文書を出しておくそうだ。
さて次の休日、私とお兄様はアルファント殿下に呼ばれて王宮に来ていた。
殿下は結局、魔王に関する資料を手に入れる為、陛下にすべて打ち明けたそうだ。
その際に自分が前世の記憶がある事や、私とお兄様とピンクさんも転生者であること、聖女の加護を3人で分け合った事と多分、聖女の杖と思われる光る木の枝の事も話しておいた。
そして、アルファント殿下が王妃様の呪いを解呪しステータスを表示して見せた事で、陛下は殿下の話は真実であると判断して魔王の封印と聖女について話してくれる事になった。
それは確かに話は聞きたいけど、何も直接私達が陛下とお会いしなくても良いと思う。お兄様と私は陛下にお会いするという事で前の日はよく眠れなかった。
どうしよう、緊張する。
「うーん。無駄にボジティブだなあ、ピンク頭。魔王の事さえなければ放置で良いんだけど。いや、でも乙女ゲームと考えるとアルファント殿下が心配だ」
「でもね、乙女ゲームはまだ始まらないのよ」
「とりあえず、殿下に相談だな」
という事で、
学生会の会議室でアルファント殿下と侍従のランディ様、騎士見習いのトーリスト様にお兄様を加えて密談中。
トーリスト様は戦闘訓練に加わるうちに自然と仲間になった。
もう、あっさりと乙女ゲームの話を殿下がばらしてしまい、「そうだったんですか」とあっさり信じてしまった。最近、殿下の行動が怪しいなと思っていたそうだ。
でも、私の事を時々「聖女さま」と呼びかけてくるのは困る。
無意識についつい、呼んでしまうそうだ……。どういう事?
「ピンクが聖女! ありえん」
「信じられませんね」
「話を聞く限り、ピンクの方が聖女になったとは思えません。その、物語はピンクの方が聖女に成ってから始まるとお聞きしましたが、本来は来年の冬に聖女に成るのですよね」
「本人も前倒し過ぎて、ゲームがまだ始まらないのかも、って言っていました」
「ピンクは魔王を復活させる気はないのだよな」
「以前はエーアリア様の事があって、魔王を復活させてやる! なんて言っていましたけど魔王を封印するための仲間集めとか封印するための戦闘とかがしたくないみたいで、取り合えず、聖女に成るだけでいいかな、と」
「でも、魔王が復活しなければ聖女を認定というか、国とか神殿とかが聖女を認めないだろう?」
「レベルを上げて、聖女の杖がキラキラになったら神殿に駆け込むそうです」
「どうやって、レベルを上げるんだ」
「愛の力だそうです」
「はっ!?」
「へ!?」
「日々の生活の中で攻略対象の人たちと絆を深め、愛されることでレベルが上がるらしいですよ。だから、ラクアート様だけでなくて他の人達とも仲良くする恋の季節が魔法学園3年生だそうです。デレてくるアルファント殿下が見たいって言っていました」
「止めてくれ」
殿下は物凄くイヤな顔をした。
「ラクアートはどうするんだ?」
「ラクアート様はキープですよ。本命でもあるみたいで、リーナを側において都合よく使いながら楽をして、将来も楽しく暮らしたいと」
「ラクアートは、公爵家で呼びだして見てもらったのだが、魅了はされてないし、状態異常にもなってなかったそうだ」
「じゃぁ、素でピンク頭に惚れていると?!」
「そうらしい」
「刷り込みでもされたのかな? 四六時中一緒にいるから」
「鳥頭という奴ですね」
「そうかも」
「それにしても転移陣まで勝手に使うなんて。アイツ、信じられないバカだな」
「確かに」
お茶請けにシュークリームを山ほど持ってきたので、アルファント殿下とランディ様、トーリスト様はポイポイとシュークリームを口に放り込んでいる。
一口サイズのシュークリームにカスタードと生クリームとジャム各種を入れたものだけど、カスタードだけだったり、クリームにジャムが入っていたり、食べてみないと何が入っているのかわからない。
お兄様の希望でカレー入りのシュークリームもいくつか入れてみた。
あっ、トーリスト様が妙な顔をした。
「これ、変わった味ですが、美味しいです。辛いけど、これはこれで」
「なんか、カレーの匂いがする。シュークリームの中にカレーを入れたのか?」
「お兄様の希望です」
「俺も食べたい」
「うん。これもカレー入りですね。甘いモノを食べているとこれもありですね」
「俺も食べたい」
「残念。殿下、カレー入りは3つだけなんです」
ランディ様とトーリスト様とお兄様が当たりを引いたようだ。アルファント殿下はカレー入りが食べたいらしいけど、残念ながらもう無くなってしまった。
結局、ゲームはまだ始まっていないけど、念のためにピンクさんを避ける事になった。
攻略対象者とも接触をしないように学生会の入っている学生会館の入り口には警備員を置いてラクアート様とピンクさんが来たら学生会の執務室に警報が鳴るようにする。彼らが来たら即、会議室で会議をする事になっている。
それと、ラクアート様には用もないのに仕事の邪魔をしないようにと抗議文書を出しておくそうだ。
さて次の休日、私とお兄様はアルファント殿下に呼ばれて王宮に来ていた。
殿下は結局、魔王に関する資料を手に入れる為、陛下にすべて打ち明けたそうだ。
その際に自分が前世の記憶がある事や、私とお兄様とピンクさんも転生者であること、聖女の加護を3人で分け合った事と多分、聖女の杖と思われる光る木の枝の事も話しておいた。
そして、アルファント殿下が王妃様の呪いを解呪しステータスを表示して見せた事で、陛下は殿下の話は真実であると判断して魔王の封印と聖女について話してくれる事になった。
それは確かに話は聞きたいけど、何も直接私達が陛下とお会いしなくても良いと思う。お兄様と私は陛下にお会いするという事で前の日はよく眠れなかった。
どうしよう、緊張する。
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