辺境伯の5女ですが 加護が『液体』なので ばれる前に逃げます。

サラ

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64. 復活したラクアート様

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 新学期が始まり、私とお兄様は魔法学園の3年生になった。

 入学式ではアルファント殿下が学生会の会長として挨拶をされた。
 殿下は4年生で15歳だけど直ぐに16歳になる。普段から鍛えているせいで細マッチョだけど、見た目はスッキリとした美青年。
 まだ、少年らしさを残しているけれど、ふとした仕草に大人の色気を感じる。そう、殿下には不思議な色気があると思う。見ていると思わずクラッとくるような、その笑顔に引き込まれてしまいそうな。

 お兄様は惚れた欲目というけれど、そうなのかしら。
 目が合うと恥ずかしくて顔を逸らしてしまうけれど、そっと又、殿下のお顔をうかがうと、まだこちらを見ていてその笑顔が優しくて。
 もう、私の心は殿下を見ると波打ってしまう。
 平常心、平常心、そして、問題は先送り。
 まだ時間はあるから、落ち着いて殿下の顔が見られるようになってから後の事は考えよう。

 何かをしてないと、直ぐ殿下の顔が目の前に浮かんできて。
 もう、殿下、邪魔しないでください。

「いや、それは殿下のせいじゃないだろう」
「だって、お兄様。夢の中でも、普段でも殿下の顔が浮かんでくるのよ。殿下のお顔が麗しすぎるのがいけないんだわ。殿下といる時、私、可笑しくなってない? 会長補佐なのに、あの人変とか言われたら嫌だわ」
「大丈夫。時々ボーッとして顔が赤くなっているけど、ほっぺがピンクで可愛いよ。誰もリーナが殿下の事を考えているなんて思わないさ。それに殿下だってリーナを見てはニヤケているけど頑張って押さえているから」

「殿下が?」
「知らない人から微笑みの貴公子なんて二つ名で呼ばれているみたいだ。本当はリーナの事を考えてニヤケているだけなのに。美形は得だよね。あっ、リーナもお菓子の女神様とか慈愛の女神様とか呼ばれているよ」
「ええっ、それは恥ずかしいわ」
「ちなみに俺はパンの貴公子。そのまんまだよ。高位貴族に時々出回るパンがとても美味しいって。パンの天使って呼ばれることもある」
「お兄様、昔は天使みたいだったわ。凄く可愛くて」
「リーナだって、天使がそのまま大きくなったような感じじゃないか。俺はまだ殿下に比べると子供っぽいかな、とは思うけどさ」

 私達は入学式後、学生会で明日の打ち合わせをしてからタウンハウスに一旦、帰っていた。そして、オヤツを食べている。
 今日のオヤツはレモンケーキ。レモンのアイシングが甘酸っぱくて美味しい。
 飲み物は温かいトロピカルティー、前世で飲んだトロピカルティーを思い出しながらお茶を出すと同じ味、だけどお水が良いせいか加護のおかげなのか同じなのに美味しくなっている。これにフルーツをいれてフルーツインティーにしてもいいんだけど、それはまた、今度にしよう。

 お兄様は確かにアルファント殿下に比べるとカッコよさでは負けるけど、かなりの美少年だし、フワリとした巻き毛の金髪に深い緑の目は昔のように目の中に星は走らないけど、少女漫画の王子様で通ると思う。
 私、私はまぁ、それなりだと思うけど、殿下はとても可愛いと褒めてくれる。
 俺だけの女神になってほしい、とか時々ポロッと恥ずかしい言葉をこぼすので、ランディ様に呆れられている。恥ずかしいけど、でも、殿下の言葉はとても嬉しい。

 ともかく、入学式は無事に終わり、学生会に新たな学年代表の人たちが挨拶に来たがその中にラクアート様はいなかった。4学年の学年代表はラクアート様が謹慎している時に決まったから。

 でも、新学期からラクアート様は魔法学園に復帰して、その横には仲が良さそうにピンク色の髪をした女性がいた。まさかのピンクの髪、再びである。
 でも、ピンクさん事、フレグランス・タチワルーイ嬢ではなく、同じタチワルーイ男爵家の令嬢ではあるけれど、養女ではなく次女に当たる方で、これ迄は身体が弱い為、お祖母様の出身家である伯爵家の別邸で静養されていたそうだ。

 後天的ではあるが、魔法の加護が発現したので今年度から魔法学園に通う事になったと聞いている。お勉強や礼儀作法については伯爵家で学んできたので、魔法に関してだけ補習を受けながら1年間通う事になったとの事でラクアート様がついて面倒をみるらしい。
 お名前をキミカ・タチワルーイとおっしゃってピンクさんに比べると礼儀作法もキチンとしているし、髪の色もショッキング・ピンクではなく茶系統のピンクなのでピンクさんのように目に痛くはない。

 おまけにラクアート様と同じ『水の魔法の加護』を持っているらしくて、ラクアート様は「お揃いなんだ」と嬉しそうにアルファント殿下へ紹介しに来たとの事。
 殿下がラクアート様にフレグランス嬢はどうしたんだ、と聞くと「フレーの事は良い思い出としておきたい」と口を濁したそうだ。ピンクさんはいまだに見つかっていない。

「以前のピンクの位置にすっぽりと茶ピンクが嵌って、それにラクアートはなにも疑問を抱いてないように見える」とアルファント殿下は首をかしげていた。
 顔も身体も声もしゃべり方も違うのにどうしても、ピンクさんとキミカ・タチワルーイ嬢が重なって見える、というので、お兄様と姿を隠してこっそりカフェで談笑する二人を見に行ったのだけど、確かに違う人なのにピンクさんが重なってみえる。
 おまけに解呪したはずのピンク教の人が何人か二人の側にいるし。

「まさか、ピンク頭の奴、変身したのか」
「でも、キミカ・タチワルーイ様の礼儀作法はきちんと貴族のものだわ」
「じゃぁ、憑依している?」
「憑依していると言動はピンクさんと同じになるはず」
「まさか、一つの身体に二つの精神? あいつ、ゲームの知識でなんかしたんじゃないか」
「わからないわ」

 他の人もキミカ・タチワルーイ様を見ると、ピンクさんを連想するらしくて首をひねっている。
 でも、身元もしっかりしているし、加護も『水の魔法』なので今の所見守るしかない、という事になった。

 でも、何だか、彼女は不気味。
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