73 / 103
73. とうとう
しおりを挟む
私達が声もなく、桜の花をただ見つめていると、お兄様が小さな声で呟いた。
「あの、この桜の木、このままだと枯れるって」
「ああ、そうだな」
「いえ、そうじゃなくて、『このままだと枯れてしまう世界で唯一の桜の木』って出てきたんです」
「アーク様、鑑定したんですか?」
「鑑定できるかな、ってしてみたら名称の後に『早く助けないと枯れてしまう。早く万能薬を与えましょう』って」
「リーナ!」
「「リーナ様!」」
皆が一斉に私を見た。
「ば、万能薬って」
「エレクサーです。ポーションのレベルが上がっていると思いますけど、もうエレクサーレベルのポーションが出せるのではありませんか!?」
「リーナ、誕生日にレベルが上がって、これは強力すぎるから出せないと言っていたのは、エレクサーではないの?」
「あ、あれはポーション、特大って出ていたけど万能薬とかエレクサーって名称ではなくて」
「アーク、他にわかる事は?」
「万能薬はここに注いでって場所が指定されています」
「どこだ?」
お兄様が指さしたのは胴咲き桜の咲いている少し上で窪みができているところだった。そこに近づいて見てみると、前は窪みだけだったのに、窪みの底に小さな穴が開いている。
「この穴にエレクサーを注げばいいんだな」
「足りなければ治癒も一緒にかけて、って」
「あ、あの」
「よし、リーナ、エレクサーを出してくれ」
どうしよう。これ、エレクサー、万能薬じゃないと思うんだけど、人間用のポーションが果たして植物に効くのかしら。もし、効果がなかったらどうしよう。木にできた穴に直接ポーションを注いで大丈夫なのかしら。
「リーナ様、こちらにお願いします」
いつの間にか神官が大きなバケツを持ってきていたので、そのバケツに手の平から特大ポーションを注いでいく。植物なので無味無臭でお願いします、植物用の万能薬にしてください、と願いながら。
「リーナ、頼む」
「リーナ様、これを」
神官から金の柄杓を渡された。えっ、私が注ぐの?
そっと、アルファント殿下が私の腰に手を当ててきて、
「大丈夫だから。一緒に治癒をかけるから、大丈夫」
その声に励まされて柄杓でそっと窪みの穴にポーションを注ぎ込んだ。
元気になってと想いをこめて。
隣でアルファント殿下が一生懸命、桜に治癒をかけている。
あっという間にポーションが穴に吸い込まれて消えていく。
何度も柄杓で注いでいると突然、桜の木全体が光に包まれて、穴が塞がった。
そして、茶色に変色していた桜の花が時を巻き戻すように淡いピンク色に変わっていき、うなだれていた桜の花がシャキンと立ち上がり始めた。
胴咲き桜の枯れていた花も綺麗な花に戻っていく。7つの胴咲き花がきれいに並んだ。
そして、そのうえに3つの胴咲き桜がニョキニョキと生えてきて、花が開いた。
胴咲き桜が10。
そして、桜の木を覆っていた光が薄れると、桜の花は見事に全部の花が咲いていた。全開、つまり10分咲きである。
桜の花の10分咲き、初めて見た。前世ではありえない満開の桜。その花びらがフルフルと風に揺れている。
とても美しい。
「良かった。桜が生き返った」
「リーナ様のおかげです」
「やっぱり、エレクサーだ」
「でも、全開になってしまった」
「つまり、魔王の封印が解けてしまったということですね」
「何もしなければ、まだしばらくは七分咲きでいてくれたかもしれないのに」
「茶ピンクは疫病神でしたね。本当に余計な事をしてくれる」
「魔王の封印は解けた、としたら魔王のダンジョンが発生するぞ」
「いくつか、目星をつけている場所がありますから、そこを直ぐに確認させましょう」
神官があわてて走って行った。
桜の木が復活したのは嬉しいけれど、10分咲き、になってしまった。まだ猶予があると思っていたのに。
茶ピンクさんの聖女の杖では魔王の封印はできない、と思う。私、私が聖女に成らないといけないの、かしら。怖い。
「大丈夫だ。リーナ。俺たちがいる。聖女の加護は三位一体。俺たちで分け合っている」
「あの、リーナ様」
ノヴァ神官が言いにくそうに声をかけてきた。
「もし、良ければですがこの桜の下で歌を歌ってもらえませんか」
「歌を?」
「ええ、試しにですが」
「でも、また枯れたら……」
「大丈夫。桜の木は元気いっぱいだってさ」
「だって、虹色の飴はもうすでに食べてしまったわ」
「一応、桜が全開になった時に聖女の加護は与えられる事になっていますから、念のためです。お願いします」
ノヴァ神官が必死な顔をして頼んでくるので、桜の木の下で桜の歌を歌った。
すると、桜の木が光り、虹色の宝玉が落ちてきた。
「虹色だ」
「なんて、美しい宝玉だ」
「桜の木が有り難うって言っている」
「アーク、それは鑑定で?」
「そうです。どうしよう、俺、桜の木と話ができる? のでしょうか。鑑定すると言葉が浮かんできます」
「ああ、俺にも感謝の気持ちが伝わってくる」
「治癒も気持ち良かったそうです。でも、もう加護は出せないから約束の時が来るまで待っている、と」
「約束の時?」
「始まりの約束はもうすぐだから、しばらく眠って待っている、再会が楽しみだって。あっ、眠ってしまった」
お兄様が言うには桜の木は休眠状態に入ったけれど、エレクサーのおかげでもう心配はいらないとの事。
だけど、桜の木がいう『始まりの約束』とはどんな約束で、再会が楽しみって、誰と再会?
謎が増えてしまったけど
綺麗な桜が復活したのは本当に良かった。
「あの、この桜の木、このままだと枯れるって」
「ああ、そうだな」
「いえ、そうじゃなくて、『このままだと枯れてしまう世界で唯一の桜の木』って出てきたんです」
「アーク様、鑑定したんですか?」
「鑑定できるかな、ってしてみたら名称の後に『早く助けないと枯れてしまう。早く万能薬を与えましょう』って」
「リーナ!」
「「リーナ様!」」
皆が一斉に私を見た。
「ば、万能薬って」
「エレクサーです。ポーションのレベルが上がっていると思いますけど、もうエレクサーレベルのポーションが出せるのではありませんか!?」
「リーナ、誕生日にレベルが上がって、これは強力すぎるから出せないと言っていたのは、エレクサーではないの?」
「あ、あれはポーション、特大って出ていたけど万能薬とかエレクサーって名称ではなくて」
「アーク、他にわかる事は?」
「万能薬はここに注いでって場所が指定されています」
「どこだ?」
お兄様が指さしたのは胴咲き桜の咲いている少し上で窪みができているところだった。そこに近づいて見てみると、前は窪みだけだったのに、窪みの底に小さな穴が開いている。
「この穴にエレクサーを注げばいいんだな」
「足りなければ治癒も一緒にかけて、って」
「あ、あの」
「よし、リーナ、エレクサーを出してくれ」
どうしよう。これ、エレクサー、万能薬じゃないと思うんだけど、人間用のポーションが果たして植物に効くのかしら。もし、効果がなかったらどうしよう。木にできた穴に直接ポーションを注いで大丈夫なのかしら。
「リーナ様、こちらにお願いします」
いつの間にか神官が大きなバケツを持ってきていたので、そのバケツに手の平から特大ポーションを注いでいく。植物なので無味無臭でお願いします、植物用の万能薬にしてください、と願いながら。
「リーナ、頼む」
「リーナ様、これを」
神官から金の柄杓を渡された。えっ、私が注ぐの?
そっと、アルファント殿下が私の腰に手を当ててきて、
「大丈夫だから。一緒に治癒をかけるから、大丈夫」
その声に励まされて柄杓でそっと窪みの穴にポーションを注ぎ込んだ。
元気になってと想いをこめて。
隣でアルファント殿下が一生懸命、桜に治癒をかけている。
あっという間にポーションが穴に吸い込まれて消えていく。
何度も柄杓で注いでいると突然、桜の木全体が光に包まれて、穴が塞がった。
そして、茶色に変色していた桜の花が時を巻き戻すように淡いピンク色に変わっていき、うなだれていた桜の花がシャキンと立ち上がり始めた。
胴咲き桜の枯れていた花も綺麗な花に戻っていく。7つの胴咲き花がきれいに並んだ。
そして、そのうえに3つの胴咲き桜がニョキニョキと生えてきて、花が開いた。
胴咲き桜が10。
そして、桜の木を覆っていた光が薄れると、桜の花は見事に全部の花が咲いていた。全開、つまり10分咲きである。
桜の花の10分咲き、初めて見た。前世ではありえない満開の桜。その花びらがフルフルと風に揺れている。
とても美しい。
「良かった。桜が生き返った」
「リーナ様のおかげです」
「やっぱり、エレクサーだ」
「でも、全開になってしまった」
「つまり、魔王の封印が解けてしまったということですね」
「何もしなければ、まだしばらくは七分咲きでいてくれたかもしれないのに」
「茶ピンクは疫病神でしたね。本当に余計な事をしてくれる」
「魔王の封印は解けた、としたら魔王のダンジョンが発生するぞ」
「いくつか、目星をつけている場所がありますから、そこを直ぐに確認させましょう」
神官があわてて走って行った。
桜の木が復活したのは嬉しいけれど、10分咲き、になってしまった。まだ猶予があると思っていたのに。
茶ピンクさんの聖女の杖では魔王の封印はできない、と思う。私、私が聖女に成らないといけないの、かしら。怖い。
「大丈夫だ。リーナ。俺たちがいる。聖女の加護は三位一体。俺たちで分け合っている」
「あの、リーナ様」
ノヴァ神官が言いにくそうに声をかけてきた。
「もし、良ければですがこの桜の下で歌を歌ってもらえませんか」
「歌を?」
「ええ、試しにですが」
「でも、また枯れたら……」
「大丈夫。桜の木は元気いっぱいだってさ」
「だって、虹色の飴はもうすでに食べてしまったわ」
「一応、桜が全開になった時に聖女の加護は与えられる事になっていますから、念のためです。お願いします」
ノヴァ神官が必死な顔をして頼んでくるので、桜の木の下で桜の歌を歌った。
すると、桜の木が光り、虹色の宝玉が落ちてきた。
「虹色だ」
「なんて、美しい宝玉だ」
「桜の木が有り難うって言っている」
「アーク、それは鑑定で?」
「そうです。どうしよう、俺、桜の木と話ができる? のでしょうか。鑑定すると言葉が浮かんできます」
「ああ、俺にも感謝の気持ちが伝わってくる」
「治癒も気持ち良かったそうです。でも、もう加護は出せないから約束の時が来るまで待っている、と」
「約束の時?」
「始まりの約束はもうすぐだから、しばらく眠って待っている、再会が楽しみだって。あっ、眠ってしまった」
お兄様が言うには桜の木は休眠状態に入ったけれど、エレクサーのおかげでもう心配はいらないとの事。
だけど、桜の木がいう『始まりの約束』とはどんな約束で、再会が楽しみって、誰と再会?
謎が増えてしまったけど
綺麗な桜が復活したのは本当に良かった。
1
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。
2025/9/29
追記開始しました。毎日更新は難しいですが気長にお待ちください。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています
【完結】偽物聖女として追放される予定ですが、続編の知識を活かして仕返しします
ユユ
ファンタジー
聖女と認定され 王子妃になったのに
11年後、もう一人 聖女認定された。
王子は同じ聖女なら美人がいいと
元の聖女を偽物として追放した。
後に二人に天罰が降る。
これが この体に入る前の世界で読んだ
Web小説の本編。
だけど、読者からの激しいクレームに遭い
救済続編が書かれた。
その激しいクレームを入れた
読者の一人が私だった。
異世界の追放予定の聖女の中に
入り込んだ私は小説の知識を
活用して対策をした。
大人しく追放なんてさせない!
* 作り話です。
* 長くはしないつもりなのでサクサクいきます。
* 短編にしましたが、うっかり長くなったらごめんなさい。
* 掲載は3日に一度。
【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!
隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。
※三章からバトル多めです。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです
ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」
宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。
聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。
しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。
冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる