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73. とうとう
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私達が声もなく、桜の花をただ見つめていると、お兄様が小さな声で呟いた。
「あの、この桜の木、このままだと枯れるって」
「ああ、そうだな」
「いえ、そうじゃなくて、『このままだと枯れてしまう世界で唯一の桜の木』って出てきたんです」
「アーク様、鑑定したんですか?」
「鑑定できるかな、ってしてみたら名称の後に『早く助けないと枯れてしまう。早く万能薬を与えましょう』って」
「リーナ!」
「「リーナ様!」」
皆が一斉に私を見た。
「ば、万能薬って」
「エレクサーです。ポーションのレベルが上がっていると思いますけど、もうエレクサーレベルのポーションが出せるのではありませんか!?」
「リーナ、誕生日にレベルが上がって、これは強力すぎるから出せないと言っていたのは、エレクサーではないの?」
「あ、あれはポーション、特大って出ていたけど万能薬とかエレクサーって名称ではなくて」
「アーク、他にわかる事は?」
「万能薬はここに注いでって場所が指定されています」
「どこだ?」
お兄様が指さしたのは胴咲き桜の咲いている少し上で窪みができているところだった。そこに近づいて見てみると、前は窪みだけだったのに、窪みの底に小さな穴が開いている。
「この穴にエレクサーを注げばいいんだな」
「足りなければ治癒も一緒にかけて、って」
「あ、あの」
「よし、リーナ、エレクサーを出してくれ」
どうしよう。これ、エレクサー、万能薬じゃないと思うんだけど、人間用のポーションが果たして植物に効くのかしら。もし、効果がなかったらどうしよう。木にできた穴に直接ポーションを注いで大丈夫なのかしら。
「リーナ様、こちらにお願いします」
いつの間にか神官が大きなバケツを持ってきていたので、そのバケツに手の平から特大ポーションを注いでいく。植物なので無味無臭でお願いします、植物用の万能薬にしてください、と願いながら。
「リーナ、頼む」
「リーナ様、これを」
神官から金の柄杓を渡された。えっ、私が注ぐの?
そっと、アルファント殿下が私の腰に手を当ててきて、
「大丈夫だから。一緒に治癒をかけるから、大丈夫」
その声に励まされて柄杓でそっと窪みの穴にポーションを注ぎ込んだ。
元気になってと想いをこめて。
隣でアルファント殿下が一生懸命、桜に治癒をかけている。
あっという間にポーションが穴に吸い込まれて消えていく。
何度も柄杓で注いでいると突然、桜の木全体が光に包まれて、穴が塞がった。
そして、茶色に変色していた桜の花が時を巻き戻すように淡いピンク色に変わっていき、うなだれていた桜の花がシャキンと立ち上がり始めた。
胴咲き桜の枯れていた花も綺麗な花に戻っていく。7つの胴咲き花がきれいに並んだ。
そして、そのうえに3つの胴咲き桜がニョキニョキと生えてきて、花が開いた。
胴咲き桜が10。
そして、桜の木を覆っていた光が薄れると、桜の花は見事に全部の花が咲いていた。全開、つまり10分咲きである。
桜の花の10分咲き、初めて見た。前世ではありえない満開の桜。その花びらがフルフルと風に揺れている。
とても美しい。
「良かった。桜が生き返った」
「リーナ様のおかげです」
「やっぱり、エレクサーだ」
「でも、全開になってしまった」
「つまり、魔王の封印が解けてしまったということですね」
「何もしなければ、まだしばらくは七分咲きでいてくれたかもしれないのに」
「茶ピンクは疫病神でしたね。本当に余計な事をしてくれる」
「魔王の封印は解けた、としたら魔王のダンジョンが発生するぞ」
「いくつか、目星をつけている場所がありますから、そこを直ぐに確認させましょう」
神官があわてて走って行った。
桜の木が復活したのは嬉しいけれど、10分咲き、になってしまった。まだ猶予があると思っていたのに。
茶ピンクさんの聖女の杖では魔王の封印はできない、と思う。私、私が聖女に成らないといけないの、かしら。怖い。
「大丈夫だ。リーナ。俺たちがいる。聖女の加護は三位一体。俺たちで分け合っている」
「あの、リーナ様」
ノヴァ神官が言いにくそうに声をかけてきた。
「もし、良ければですがこの桜の下で歌を歌ってもらえませんか」
「歌を?」
「ええ、試しにですが」
「でも、また枯れたら……」
「大丈夫。桜の木は元気いっぱいだってさ」
「だって、虹色の飴はもうすでに食べてしまったわ」
「一応、桜が全開になった時に聖女の加護は与えられる事になっていますから、念のためです。お願いします」
ノヴァ神官が必死な顔をして頼んでくるので、桜の木の下で桜の歌を歌った。
すると、桜の木が光り、虹色の宝玉が落ちてきた。
「虹色だ」
「なんて、美しい宝玉だ」
「桜の木が有り難うって言っている」
「アーク、それは鑑定で?」
「そうです。どうしよう、俺、桜の木と話ができる? のでしょうか。鑑定すると言葉が浮かんできます」
「ああ、俺にも感謝の気持ちが伝わってくる」
「治癒も気持ち良かったそうです。でも、もう加護は出せないから約束の時が来るまで待っている、と」
「約束の時?」
「始まりの約束はもうすぐだから、しばらく眠って待っている、再会が楽しみだって。あっ、眠ってしまった」
お兄様が言うには桜の木は休眠状態に入ったけれど、エレクサーのおかげでもう心配はいらないとの事。
だけど、桜の木がいう『始まりの約束』とはどんな約束で、再会が楽しみって、誰と再会?
謎が増えてしまったけど
綺麗な桜が復活したのは本当に良かった。
「あの、この桜の木、このままだと枯れるって」
「ああ、そうだな」
「いえ、そうじゃなくて、『このままだと枯れてしまう世界で唯一の桜の木』って出てきたんです」
「アーク様、鑑定したんですか?」
「鑑定できるかな、ってしてみたら名称の後に『早く助けないと枯れてしまう。早く万能薬を与えましょう』って」
「リーナ!」
「「リーナ様!」」
皆が一斉に私を見た。
「ば、万能薬って」
「エレクサーです。ポーションのレベルが上がっていると思いますけど、もうエレクサーレベルのポーションが出せるのではありませんか!?」
「リーナ、誕生日にレベルが上がって、これは強力すぎるから出せないと言っていたのは、エレクサーではないの?」
「あ、あれはポーション、特大って出ていたけど万能薬とかエレクサーって名称ではなくて」
「アーク、他にわかる事は?」
「万能薬はここに注いでって場所が指定されています」
「どこだ?」
お兄様が指さしたのは胴咲き桜の咲いている少し上で窪みができているところだった。そこに近づいて見てみると、前は窪みだけだったのに、窪みの底に小さな穴が開いている。
「この穴にエレクサーを注げばいいんだな」
「足りなければ治癒も一緒にかけて、って」
「あ、あの」
「よし、リーナ、エレクサーを出してくれ」
どうしよう。これ、エレクサー、万能薬じゃないと思うんだけど、人間用のポーションが果たして植物に効くのかしら。もし、効果がなかったらどうしよう。木にできた穴に直接ポーションを注いで大丈夫なのかしら。
「リーナ様、こちらにお願いします」
いつの間にか神官が大きなバケツを持ってきていたので、そのバケツに手の平から特大ポーションを注いでいく。植物なので無味無臭でお願いします、植物用の万能薬にしてください、と願いながら。
「リーナ、頼む」
「リーナ様、これを」
神官から金の柄杓を渡された。えっ、私が注ぐの?
そっと、アルファント殿下が私の腰に手を当ててきて、
「大丈夫だから。一緒に治癒をかけるから、大丈夫」
その声に励まされて柄杓でそっと窪みの穴にポーションを注ぎ込んだ。
元気になってと想いをこめて。
隣でアルファント殿下が一生懸命、桜に治癒をかけている。
あっという間にポーションが穴に吸い込まれて消えていく。
何度も柄杓で注いでいると突然、桜の木全体が光に包まれて、穴が塞がった。
そして、茶色に変色していた桜の花が時を巻き戻すように淡いピンク色に変わっていき、うなだれていた桜の花がシャキンと立ち上がり始めた。
胴咲き桜の枯れていた花も綺麗な花に戻っていく。7つの胴咲き花がきれいに並んだ。
そして、そのうえに3つの胴咲き桜がニョキニョキと生えてきて、花が開いた。
胴咲き桜が10。
そして、桜の木を覆っていた光が薄れると、桜の花は見事に全部の花が咲いていた。全開、つまり10分咲きである。
桜の花の10分咲き、初めて見た。前世ではありえない満開の桜。その花びらがフルフルと風に揺れている。
とても美しい。
「良かった。桜が生き返った」
「リーナ様のおかげです」
「やっぱり、エレクサーだ」
「でも、全開になってしまった」
「つまり、魔王の封印が解けてしまったということですね」
「何もしなければ、まだしばらくは七分咲きでいてくれたかもしれないのに」
「茶ピンクは疫病神でしたね。本当に余計な事をしてくれる」
「魔王の封印は解けた、としたら魔王のダンジョンが発生するぞ」
「いくつか、目星をつけている場所がありますから、そこを直ぐに確認させましょう」
神官があわてて走って行った。
桜の木が復活したのは嬉しいけれど、10分咲き、になってしまった。まだ猶予があると思っていたのに。
茶ピンクさんの聖女の杖では魔王の封印はできない、と思う。私、私が聖女に成らないといけないの、かしら。怖い。
「大丈夫だ。リーナ。俺たちがいる。聖女の加護は三位一体。俺たちで分け合っている」
「あの、リーナ様」
ノヴァ神官が言いにくそうに声をかけてきた。
「もし、良ければですがこの桜の下で歌を歌ってもらえませんか」
「歌を?」
「ええ、試しにですが」
「でも、また枯れたら……」
「大丈夫。桜の木は元気いっぱいだってさ」
「だって、虹色の飴はもうすでに食べてしまったわ」
「一応、桜が全開になった時に聖女の加護は与えられる事になっていますから、念のためです。お願いします」
ノヴァ神官が必死な顔をして頼んでくるので、桜の木の下で桜の歌を歌った。
すると、桜の木が光り、虹色の宝玉が落ちてきた。
「虹色だ」
「なんて、美しい宝玉だ」
「桜の木が有り難うって言っている」
「アーク、それは鑑定で?」
「そうです。どうしよう、俺、桜の木と話ができる? のでしょうか。鑑定すると言葉が浮かんできます」
「ああ、俺にも感謝の気持ちが伝わってくる」
「治癒も気持ち良かったそうです。でも、もう加護は出せないから約束の時が来るまで待っている、と」
「約束の時?」
「始まりの約束はもうすぐだから、しばらく眠って待っている、再会が楽しみだって。あっ、眠ってしまった」
お兄様が言うには桜の木は休眠状態に入ったけれど、エレクサーのおかげでもう心配はいらないとの事。
だけど、桜の木がいう『始まりの約束』とはどんな約束で、再会が楽しみって、誰と再会?
謎が増えてしまったけど
綺麗な桜が復活したのは本当に良かった。
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