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85. 懐かしい
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階段の下、勇者の小部屋に着いて、
「ここは……何だか、懐かしいような……」
「うっ……」
「何だ! 何、泣いてんだ。グ、グリーン!?」
「うっ、うっ、……」
グリーンさんがボロボロと涙をこぼしながら嗚咽をあげて泣いている。
私たちはビックリして固まっていた。が、ノヴァ神官が跪いて頭を下げた。
「ようこそ、お帰りなさいませ。勇者様と小太郎様」
「「ええっ!?」」
グリーンさんはブラックさんの肩を掴むとそのまま抱き着いた。
「コタ、コタ、ごめん。会いたかった」
「はぁ! ああっ、エド? エドか! 俺は小太郎か。そうか、俺は小太郎だった」
そのまま泣きつく勇者のグリーンさんの背中をブラックさんはヨシヨシと撫でながら困ったような顔をした。その前で跪いて頭を下げたままのノヴァ神官と周りで立ち尽くす私達。
「あーっ、とりあえず、その神官は立ってくれ。で、そこのソファーにでも座らないか。他の皆も立ってないで座ってくれ。落ち着かない」
グズグズと泣き止まないグリーンさんにブラックさんはアイテムボックスから出したタオルを渡しながら、私達に座るように促してきた。
「そうですね。では皆さん。ソファーに座ってください」
「では、失礼して」
こんな時にはコーヒーが良いと思う。あの美味しい喫茶店のコーヒーは、私でもミルクと砂糖なしで飲めるコーヒーだったので、それを皆に配ってから一応お砂糖とミルクも出しておいた。
お兄様だけは最初からカフェオレだけど。
グリーンさんは何度も涙を拭きながらコーヒーを啜り、私の顔を見る。何故?
「ほら、何か出してあげたら? 泣いたらお腹が空いたんだよ。きっと」
とお兄様がいうので一口サイズのマドレーヌをお皿ごとドンとテーブルの真ん中に出したと同時に全員の手が伸びた。
さっき、お昼とデザートを食べたばかりだというのに。でも、確かに驚くとお腹が空く、かもしれない。
しかし、ノヴァ神官と国王陛下は一旦、伸ばした手をさりげなく引っ込めてから
「改めまして。勇者様、小太郎様。今代の守り人である神官のノヴァと申します。一目見た時からお二人のオーラが違う事はわかりましたが、この勇者様のお部屋に入りましてはっきりと確信いたしました。お目にかかれて光栄です」
「今代の国王であるアールミント・ド・レクシャエンヤ・パールです。お二人に会えて光栄の至りです」
と二人に対して立ち上がり、礼を取った。
「いや、いや。そんなに畏まられると困ります。お菓子も遠慮なく食べて下さい、と俺が言うのもおかしいか。以前は佐々木小太郎でしたが、今はただのブラックです。と、同時に以前は勇者でしたが、彼も今はただのグリーンです。ん、一応、グリーンは王家の先祖にあたる? いや、転生だから、血のつながりはないのか」
「転生だから先祖なのは気持ちだけだよ。でも、俺、この部屋に入ったとたんに勇者だったエドガー・サガンの記憶が出てきて、しかも、その、感情がコタと別れた時のままドバーッと溢れてきて、まるで昔に帰ったみたいなんだ」
「あーっ、俺もさっきまで前世の記憶だけだったけど、お前の涙を見て小太郎の記憶も思いだした。エドは昔から涙もろかった」
「コタ、すっかり、姿形が変わってしまって」
「おまえもだろう、エド」
「でも、また会えて嬉しいよ」
「俺も。と言っても俺たちずっと冒険者としてコンビ組んでいたけどな」
「おう、お前を見たとたんに、手離せない、と思ったんだ」
「俺も何だか、放って置けない、と思った」
そうして、いつも一緒だったけど、久々の再会を果たした二人はガッチリと握手をした。
さて、小太郎さんによると、パタパタと本のストーリーを思い浮かべるように、魔王になってからのこれまでの記憶も認識できたらしい。
そして、これまでは特に困った事もなく、魔王になった時も神殿で手厚く保護されていたし、種々多様な場所と立場で転生してきたけど、どこでも恵まれた人生だったという。
魔王になってからも異次元の穴からはい出る魔物は魔王に従うので、聖女たちに都合の良いように動かして早めに封印を促してきたそうだ。
ただ、前回は偶々、雪山で遭難している時に魔王になったので、魔王が封印されて意識が戻っても生還できなくて
「困ったな、と思いつつ雪山で寝てしまった記憶があるから多分凍死したんだと思う」
「コタ、可哀そうに」
「いや、感覚がなくて、ひたすら眠いとしか思わなかったから、そうでもない。それに、念願の日本に転生して日本食をタップリ食べたみたいだから。でもエドはどうしてたんだ?」
「俺はエドガーとして国王になって長生きして大往生。そして、今はここ」
「なんだ、つまり、エドガーとしての記憶と、えっ、前世の日本の記憶ってエドガーのものか?」
「そうみたい、だ」
「うーん。じゃぁ、エドはエドからグリーンに転生した可能性もあるのか」
「そうかも。でも、コタに、もう一度会えて嬉しい」
そう言って又、グリーンさんは涙をこぼした。
こんなに涙もろいから勇者の覚書は涙の跡が沢山、残っていたのね。
それにしても、今回の魔王の封印は魔王役が小太郎さんじゃなくなってしまったので、かなり、大変になってしまったのではないか、との事。
「ところで、どうして、次元の裂け目は封印なのですか?」
「それは……、完全に塞いでしまうと異次元との繋がりが切れてしまうかもしれないのと、」
ブラックさんはお兄様のほうを見て黙ってしまった。何だか、言いずらそうにしている。
えっ、お兄様が「星の王子様」っていうのが関係している?
何だろう。
お兄様、卵じゃないはずだけど、何と言われるのか不安です。
「ここは……何だか、懐かしいような……」
「うっ……」
「何だ! 何、泣いてんだ。グ、グリーン!?」
「うっ、うっ、……」
グリーンさんがボロボロと涙をこぼしながら嗚咽をあげて泣いている。
私たちはビックリして固まっていた。が、ノヴァ神官が跪いて頭を下げた。
「ようこそ、お帰りなさいませ。勇者様と小太郎様」
「「ええっ!?」」
グリーンさんはブラックさんの肩を掴むとそのまま抱き着いた。
「コタ、コタ、ごめん。会いたかった」
「はぁ! ああっ、エド? エドか! 俺は小太郎か。そうか、俺は小太郎だった」
そのまま泣きつく勇者のグリーンさんの背中をブラックさんはヨシヨシと撫でながら困ったような顔をした。その前で跪いて頭を下げたままのノヴァ神官と周りで立ち尽くす私達。
「あーっ、とりあえず、その神官は立ってくれ。で、そこのソファーにでも座らないか。他の皆も立ってないで座ってくれ。落ち着かない」
グズグズと泣き止まないグリーンさんにブラックさんはアイテムボックスから出したタオルを渡しながら、私達に座るように促してきた。
「そうですね。では皆さん。ソファーに座ってください」
「では、失礼して」
こんな時にはコーヒーが良いと思う。あの美味しい喫茶店のコーヒーは、私でもミルクと砂糖なしで飲めるコーヒーだったので、それを皆に配ってから一応お砂糖とミルクも出しておいた。
お兄様だけは最初からカフェオレだけど。
グリーンさんは何度も涙を拭きながらコーヒーを啜り、私の顔を見る。何故?
「ほら、何か出してあげたら? 泣いたらお腹が空いたんだよ。きっと」
とお兄様がいうので一口サイズのマドレーヌをお皿ごとドンとテーブルの真ん中に出したと同時に全員の手が伸びた。
さっき、お昼とデザートを食べたばかりだというのに。でも、確かに驚くとお腹が空く、かもしれない。
しかし、ノヴァ神官と国王陛下は一旦、伸ばした手をさりげなく引っ込めてから
「改めまして。勇者様、小太郎様。今代の守り人である神官のノヴァと申します。一目見た時からお二人のオーラが違う事はわかりましたが、この勇者様のお部屋に入りましてはっきりと確信いたしました。お目にかかれて光栄です」
「今代の国王であるアールミント・ド・レクシャエンヤ・パールです。お二人に会えて光栄の至りです」
と二人に対して立ち上がり、礼を取った。
「いや、いや。そんなに畏まられると困ります。お菓子も遠慮なく食べて下さい、と俺が言うのもおかしいか。以前は佐々木小太郎でしたが、今はただのブラックです。と、同時に以前は勇者でしたが、彼も今はただのグリーンです。ん、一応、グリーンは王家の先祖にあたる? いや、転生だから、血のつながりはないのか」
「転生だから先祖なのは気持ちだけだよ。でも、俺、この部屋に入ったとたんに勇者だったエドガー・サガンの記憶が出てきて、しかも、その、感情がコタと別れた時のままドバーッと溢れてきて、まるで昔に帰ったみたいなんだ」
「あーっ、俺もさっきまで前世の記憶だけだったけど、お前の涙を見て小太郎の記憶も思いだした。エドは昔から涙もろかった」
「コタ、すっかり、姿形が変わってしまって」
「おまえもだろう、エド」
「でも、また会えて嬉しいよ」
「俺も。と言っても俺たちずっと冒険者としてコンビ組んでいたけどな」
「おう、お前を見たとたんに、手離せない、と思ったんだ」
「俺も何だか、放って置けない、と思った」
そうして、いつも一緒だったけど、久々の再会を果たした二人はガッチリと握手をした。
さて、小太郎さんによると、パタパタと本のストーリーを思い浮かべるように、魔王になってからのこれまでの記憶も認識できたらしい。
そして、これまでは特に困った事もなく、魔王になった時も神殿で手厚く保護されていたし、種々多様な場所と立場で転生してきたけど、どこでも恵まれた人生だったという。
魔王になってからも異次元の穴からはい出る魔物は魔王に従うので、聖女たちに都合の良いように動かして早めに封印を促してきたそうだ。
ただ、前回は偶々、雪山で遭難している時に魔王になったので、魔王が封印されて意識が戻っても生還できなくて
「困ったな、と思いつつ雪山で寝てしまった記憶があるから多分凍死したんだと思う」
「コタ、可哀そうに」
「いや、感覚がなくて、ひたすら眠いとしか思わなかったから、そうでもない。それに、念願の日本に転生して日本食をタップリ食べたみたいだから。でもエドはどうしてたんだ?」
「俺はエドガーとして国王になって長生きして大往生。そして、今はここ」
「なんだ、つまり、エドガーとしての記憶と、えっ、前世の日本の記憶ってエドガーのものか?」
「そうみたい、だ」
「うーん。じゃぁ、エドはエドからグリーンに転生した可能性もあるのか」
「そうかも。でも、コタに、もう一度会えて嬉しい」
そう言って又、グリーンさんは涙をこぼした。
こんなに涙もろいから勇者の覚書は涙の跡が沢山、残っていたのね。
それにしても、今回の魔王の封印は魔王役が小太郎さんじゃなくなってしまったので、かなり、大変になってしまったのではないか、との事。
「ところで、どうして、次元の裂け目は封印なのですか?」
「それは……、完全に塞いでしまうと異次元との繋がりが切れてしまうかもしれないのと、」
ブラックさんはお兄様のほうを見て黙ってしまった。何だか、言いずらそうにしている。
えっ、お兄様が「星の王子様」っていうのが関係している?
何だろう。
お兄様、卵じゃないはずだけど、何と言われるのか不安です。
応援ありがとうございます!
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