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第7章
第343話 番外編:ねことうさぎとりすとライオンとクマの物語①
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「キルナサマ~今日はこの新しくできた『新感覚もふもふワールド』ってやつに行こうよ!!」
「もふもふワールドって何? もしかして動物園? ならやめとく。僕、動物園ってちょっと」
この世界の動物園は動物が放し飼い状態だし、怖い動物がいっぱいいるから少し苦手。前はクライスがいたからよかったけど、二人の前で泣いたりしたら格好悪いし。
「動物園とは違うらしいよ。もふもふの動物がいっぱいで可愛いってレビューに書いてたから、動物園みたいに危険なのはいないんじゃないかな? せいぜいふれあい広場にいるような、大人しい小動物がいるぐらいじゃない? まだオープンしたところだから、詳しいことはわからないけど」
リリーは興味があるらしく、テアが持ってきたリーフレットを熱心に見ながら説明してくれた。
ふれあい広場か。うさぎとか、ののんとか、りすがいるってことだね。じゃあ大丈夫そう。
「それなら楽しそう! もふもふしたいし、僕も行く!」
そうして僕たちは、もふもふワールドに行くことになった。
そこがとんでもない場所だとも知らずに。
「もふもふワールドに来られた方はこちらの腕輪をつけてください。これが参加証明になりますから」
入り口でチケットを渡すとお兄さんがオレンジの腕輪を渡してくれた。嵌めてみると、手首の大きさぴったりに輪が縮み、いいかんじにフィットする。
「へぇ。こんなのつけるんだ。テーマパークのフリーパスみたい」
「ふりーぱす?」
首を傾げるテアは、みんなの注目の的。顔を覗き込まれると僕までドキドキしてしまう。
「ごめん、なんでもない。いこいこ。早くもふもふを見に行こう!」
「すごいね。お城だぁ」
「結構リアルだね」
「このお城の中はお土産やさんになってるんだって~テアたちが行くのはこのお城の地下だよ~」
もふもふワールドはお城の下にある地下迷宮というコンセプトなのだって。
「「手を放さないでね」」
「わかった」
右手をリリー左手をテアに預け、僕たちは一緒にその迷宮に足を踏み入れる。
ところが、一歩中に入った瞬間、体に衝撃が走った。
ビリビリビリ~~~~
腕輪から電流のようなものが流れ、気づいた時には。
「にゃあ」
「きゅうん」
「ぴょん?」
縮んで、もふもふした体になっていた。
手を見ると、白くてもふっとしている。首には黒い皮のチョーカーがいつも通り嵌まっている(このチョーカー体の大きさに合わせて大きさが変化するんだ。初めて知った)。お尻には丸い尻尾。頭には長~いお耳。
僕、もしかしてうさぎになってない?
何が起きたのだろう。急に体が小さくなってうさぎになっちゃうなんて。このねことりすは多分リリーとテア…なんだよね? 聞いてみよう。
「ぴょん…ぴょんぴょん(ねえ、どっちがリリーでどっちがテア?)」
「にゃあああ」
「きゅううう」
(ん? 可愛いけど、何言ってるかわかんないな)
仕方がないから地面に前足でキルナ、と書いた。すると、ねこは鋭い爪を使ってリリー。りすはテアと書いた。(へぇリスの前足の指って4本なんだぁ)
そんなどうでもいいことに感心していると、シャーと怒った(?)リリーが迷宮の入口の扉を押し始めた。どうやら引き返そうとしているらしい。僕も力を合わせてう~~~と押してみるけど、重い扉はピクリとも動かない。困ったな。
するとそこに、クライスとクーマくんが入ってきた。どうしてこの二人がここに? と疑問が湧いたけれど、まぁいいか。とにかくよかった! これで助かった! と喜んだのも束の間、彼らの腕にも同じ腕輪が……。
二人の姿がみるみるうちに変化し、なんと! ライオンとクマが現れた。
(ひゃあああああああ~~~~~逃げろ~~~~~)
本能が逃げろと告げている。リリーとテアも同じように感じたらしい。どんどん走って(ジャンプして)迷路を奥へ奥へと進んだ。二人とはぐれないように。それだけ気をつけて進んでいく。でもさすが動物の嗅覚は鋭いらしく、どれだけ逃げてもライオンとクマは的確に僕らの場所を察知し、追いかけてくる。
その距離はどんどん縮まっていき、そしてついに、目の前が壁!! しまった、行き止まりだ。
ブルブル震え壁際に追い詰められた僕たち。
目の前にはクライスライオンとクーマクマ。死んだ真似をしたらいい? でもあれってあんまり効果ないって聞いたことが。どうしたら……。
「ぴょ~~~~んぴょんぴょん!!!!(うははあああああもだめえええええ!!!!)」
気絶しそうになっていたら、ひょいっと首の後ろをくわえられ、体が宙に浮かんだ。クライスは僕をくわえたまま、スタスタと歩いて移動しはじめる。リリーとテアはクマの背中に乗せられ運ばれているのが横目で見えた。
首の後ろを噛まれているのになぜか痛くない。だけど、怖い。
怖すぎて何も考えられない。
“えさ”
僕は餌になるんだ……。
ーーこのままむしゃむしゃと食べられる運命なんだ。
「もふもふワールドって何? もしかして動物園? ならやめとく。僕、動物園ってちょっと」
この世界の動物園は動物が放し飼い状態だし、怖い動物がいっぱいいるから少し苦手。前はクライスがいたからよかったけど、二人の前で泣いたりしたら格好悪いし。
「動物園とは違うらしいよ。もふもふの動物がいっぱいで可愛いってレビューに書いてたから、動物園みたいに危険なのはいないんじゃないかな? せいぜいふれあい広場にいるような、大人しい小動物がいるぐらいじゃない? まだオープンしたところだから、詳しいことはわからないけど」
リリーは興味があるらしく、テアが持ってきたリーフレットを熱心に見ながら説明してくれた。
ふれあい広場か。うさぎとか、ののんとか、りすがいるってことだね。じゃあ大丈夫そう。
「それなら楽しそう! もふもふしたいし、僕も行く!」
そうして僕たちは、もふもふワールドに行くことになった。
そこがとんでもない場所だとも知らずに。
「もふもふワールドに来られた方はこちらの腕輪をつけてください。これが参加証明になりますから」
入り口でチケットを渡すとお兄さんがオレンジの腕輪を渡してくれた。嵌めてみると、手首の大きさぴったりに輪が縮み、いいかんじにフィットする。
「へぇ。こんなのつけるんだ。テーマパークのフリーパスみたい」
「ふりーぱす?」
首を傾げるテアは、みんなの注目の的。顔を覗き込まれると僕までドキドキしてしまう。
「ごめん、なんでもない。いこいこ。早くもふもふを見に行こう!」
「すごいね。お城だぁ」
「結構リアルだね」
「このお城の中はお土産やさんになってるんだって~テアたちが行くのはこのお城の地下だよ~」
もふもふワールドはお城の下にある地下迷宮というコンセプトなのだって。
「「手を放さないでね」」
「わかった」
右手をリリー左手をテアに預け、僕たちは一緒にその迷宮に足を踏み入れる。
ところが、一歩中に入った瞬間、体に衝撃が走った。
ビリビリビリ~~~~
腕輪から電流のようなものが流れ、気づいた時には。
「にゃあ」
「きゅうん」
「ぴょん?」
縮んで、もふもふした体になっていた。
手を見ると、白くてもふっとしている。首には黒い皮のチョーカーがいつも通り嵌まっている(このチョーカー体の大きさに合わせて大きさが変化するんだ。初めて知った)。お尻には丸い尻尾。頭には長~いお耳。
僕、もしかしてうさぎになってない?
何が起きたのだろう。急に体が小さくなってうさぎになっちゃうなんて。このねことりすは多分リリーとテア…なんだよね? 聞いてみよう。
「ぴょん…ぴょんぴょん(ねえ、どっちがリリーでどっちがテア?)」
「にゃあああ」
「きゅううう」
(ん? 可愛いけど、何言ってるかわかんないな)
仕方がないから地面に前足でキルナ、と書いた。すると、ねこは鋭い爪を使ってリリー。りすはテアと書いた。(へぇリスの前足の指って4本なんだぁ)
そんなどうでもいいことに感心していると、シャーと怒った(?)リリーが迷宮の入口の扉を押し始めた。どうやら引き返そうとしているらしい。僕も力を合わせてう~~~と押してみるけど、重い扉はピクリとも動かない。困ったな。
するとそこに、クライスとクーマくんが入ってきた。どうしてこの二人がここに? と疑問が湧いたけれど、まぁいいか。とにかくよかった! これで助かった! と喜んだのも束の間、彼らの腕にも同じ腕輪が……。
二人の姿がみるみるうちに変化し、なんと! ライオンとクマが現れた。
(ひゃあああああああ~~~~~逃げろ~~~~~)
本能が逃げろと告げている。リリーとテアも同じように感じたらしい。どんどん走って(ジャンプして)迷路を奥へ奥へと進んだ。二人とはぐれないように。それだけ気をつけて進んでいく。でもさすが動物の嗅覚は鋭いらしく、どれだけ逃げてもライオンとクマは的確に僕らの場所を察知し、追いかけてくる。
その距離はどんどん縮まっていき、そしてついに、目の前が壁!! しまった、行き止まりだ。
ブルブル震え壁際に追い詰められた僕たち。
目の前にはクライスライオンとクーマクマ。死んだ真似をしたらいい? でもあれってあんまり効果ないって聞いたことが。どうしたら……。
「ぴょ~~~~んぴょんぴょん!!!!(うははあああああもだめえええええ!!!!)」
気絶しそうになっていたら、ひょいっと首の後ろをくわえられ、体が宙に浮かんだ。クライスは僕をくわえたまま、スタスタと歩いて移動しはじめる。リリーとテアはクマの背中に乗せられ運ばれているのが横目で見えた。
首の後ろを噛まれているのになぜか痛くない。だけど、怖い。
怖すぎて何も考えられない。
“えさ”
僕は餌になるんだ……。
ーーこのままむしゃむしゃと食べられる運命なんだ。
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