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第7章
第345話 番外編:ねことうさぎとりすとライオンとクマの物語③
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キルナが、リリーとテアと一緒に新しくできた『もふもふワールド』にいくという。
もふもふワールドについては詳細が伏せられており、どんな場所かはリーフレット見てもよくわからなかった。ただ、“かわいらしいもふもふ動物の感覚を、心ゆくまで味わえる場所”と書いてあるから、動物園のような場所だろうか。
リリーもテアもしっかりしているし、護衛もつけるが、それでも心配だ。
何よりキルナがもふもふ動物とたわむれるところが見たい。
「キルナ、俺もついていきたい」
「んぇ? でもクライス、今日は王宮の用事があるから帰らないとダメって言ってたでしょ?」
「まぁ、そうだが」
さすがに王宮の仕事をほったらかしにする訳にはいかない。父はもとより母の怒りに触れることは絶対に避けたい。
(くそっ、死ぬ気で終わらせよう)
俺は猛スピードで仕事を終わらせるや否や、動物の言葉がわかるという有能な相棒クーマを連れて、もふもふワールドへと向かった。
どうやらここは、城の地下にある迷宮をコンセプトにした巨大迷路になっているという。どう考えても土産を売るだけの場所としては広すぎる城の規模から、迷路の広さが窺える。
(キルナたちが安全に出てこられるか心配だな)
入口の門を潜ると、ビリッと手首に違和感を感じた。それとともに、体がライオンに変化していく。入り口で渡された腕輪はどうやら変化系の魔法がかかった魔道具で、この門をくぐると発動する仕組みになっていたらしい。クーマはクマの姿になっているが、慣れているのかかなり落ち着いている。
「ガオー(なんだか妙なことになったな)」
「クマックマッ」
いつもならクマになってもクーマは話ができるのだが、腕輪で変化している今は、動物の鳴き声しか出せないようだ。
(キルナたちも動物になっているのだろうか)
しばらく自分の変化した体に気を取られていたが、前をみると、こっちを見て固まる3匹の小動物がいた。俺はその中の一匹に目が釘付けになった。
ーーキルナがうさぎになっている。
なんて可愛いのだろう。小さくもふもふした体のキルナは円らな瞳をこちらに向け、鼻をピクピク動かしている。ああ!! 可愛い可愛い可愛い!!!!
「ガオー!!(キルナ!!)」
彼を見つけた喜びでいっばいになり、夢中で追いかけた。彼もぴょこぴょこジャンプしながら走っていくが、姿が見えなくても彼の甘い香りが俺を導いてくれるおかげで、すぐに居場所がわかる。
「ガオガオー(待て、せっかくだし一緒に行こう)」
程よく体を動かした先で彼は待っていた。
「ガオーグルルルウーガオオオ(ああ、行き止まりなんだな。正しい道はこっちだ。連れて行ってやる)」
彼の体を痛めないように気をつけながら咥えると、柔らかな体がプルプルと震えていた。
(迷って心細かったのか……もっと早く捕まえてやればよかった)
ずっと咥えていると痛いかもしれない。休憩を挟み、愛しい体を優しく(舌がざらざらしているから慎重に)舐めて、かわいがる。
舐めるたびにピクンピクンと反応する体がまた可愛い。ぐっしょりと濡れそぼった身体を見て、ああ、やりすぎたなと気づき、また運ぶ。そしてまた休憩し、舐めて、すりすりと顔をこすりつけ、また運ぶ。
そうしているうちにあっという間にゴールに着いてしまった。もっと可愛がりたかったのに、残念だ。
ところが、さんざん可愛がっていたつもりが、キルナにはそうは思えなかったようだ。ゴールの門をくぐり人間に戻った後、大泣きされてしまった。ライオンが追いかけてきたのが怖かったらしい。
本能のままに動いてしまったことを自戒しつつ、彼とともに寮へと戻った。
そして、今俺はキルナの機嫌を取るために、リリーとテアにもらった動物クッキーを並べハーブティーを淹れている。彼の口に合えばいいのだが。一口こくりと飲んで、彼は感心するように言った。
「ふぁあ、リラックスできる優しい香りでおいしっ!! クライス、ハーブティー淹れるの上手だね」
「ああ、いつかお前に淹れてやろうと思って練習したからな」
「そうなの? ありがと。クッキーもかわいいなぁ。どれ食べようか迷う。あ、僕このライオン食べちゃおっ。クライスも、はい、あ~んして」
口を開けると、うさぎのクッキーを入れてくれた。
「おいし?」
「ああ」
本当は、あ~んしてくれたことに感動して味なんてわからなかった。彼が何枚も食べているということは、きっとこれはよほど美味いクッキーなのだろう。
「みてみて~このねこのクッキー今日のリリーに似てる。こっちのりすはテアにそっくり」
「本当だな。見ろ、これはクーマに似てる」
「んぅ~そう? クーマはもっと怖かったよ。ねぇ、最後の一個もらっていい?」
「ああ、食え」
「ありがと」
サクサクと最後の一つを頬張るキルナを見ながら、ふと思い出す。
そういえば、リリーたちはこれを『発情クッキー』だと言っていた。だが土産屋に売っているクッキーに、そんな効果があるとは思えない。たぶんインパクトのある名前にして、売り上げを伸ばそうとしているのだろう。
しかし30分後。
俺はこの予想が誤っていたことを知る。
***
すみませんm(_ _)m クライスサイドのもふもふワールドを書きたくなってしまい※マークのイチャラブに辿り着きませんでした😭次こそはいちゃらぶになる予定です🌟
もふもふワールドについては詳細が伏せられており、どんな場所かはリーフレット見てもよくわからなかった。ただ、“かわいらしいもふもふ動物の感覚を、心ゆくまで味わえる場所”と書いてあるから、動物園のような場所だろうか。
リリーもテアもしっかりしているし、護衛もつけるが、それでも心配だ。
何よりキルナがもふもふ動物とたわむれるところが見たい。
「キルナ、俺もついていきたい」
「んぇ? でもクライス、今日は王宮の用事があるから帰らないとダメって言ってたでしょ?」
「まぁ、そうだが」
さすがに王宮の仕事をほったらかしにする訳にはいかない。父はもとより母の怒りに触れることは絶対に避けたい。
(くそっ、死ぬ気で終わらせよう)
俺は猛スピードで仕事を終わらせるや否や、動物の言葉がわかるという有能な相棒クーマを連れて、もふもふワールドへと向かった。
どうやらここは、城の地下にある迷宮をコンセプトにした巨大迷路になっているという。どう考えても土産を売るだけの場所としては広すぎる城の規模から、迷路の広さが窺える。
(キルナたちが安全に出てこられるか心配だな)
入口の門を潜ると、ビリッと手首に違和感を感じた。それとともに、体がライオンに変化していく。入り口で渡された腕輪はどうやら変化系の魔法がかかった魔道具で、この門をくぐると発動する仕組みになっていたらしい。クーマはクマの姿になっているが、慣れているのかかなり落ち着いている。
「ガオー(なんだか妙なことになったな)」
「クマックマッ」
いつもならクマになってもクーマは話ができるのだが、腕輪で変化している今は、動物の鳴き声しか出せないようだ。
(キルナたちも動物になっているのだろうか)
しばらく自分の変化した体に気を取られていたが、前をみると、こっちを見て固まる3匹の小動物がいた。俺はその中の一匹に目が釘付けになった。
ーーキルナがうさぎになっている。
なんて可愛いのだろう。小さくもふもふした体のキルナは円らな瞳をこちらに向け、鼻をピクピク動かしている。ああ!! 可愛い可愛い可愛い!!!!
「ガオー!!(キルナ!!)」
彼を見つけた喜びでいっばいになり、夢中で追いかけた。彼もぴょこぴょこジャンプしながら走っていくが、姿が見えなくても彼の甘い香りが俺を導いてくれるおかげで、すぐに居場所がわかる。
「ガオガオー(待て、せっかくだし一緒に行こう)」
程よく体を動かした先で彼は待っていた。
「ガオーグルルルウーガオオオ(ああ、行き止まりなんだな。正しい道はこっちだ。連れて行ってやる)」
彼の体を痛めないように気をつけながら咥えると、柔らかな体がプルプルと震えていた。
(迷って心細かったのか……もっと早く捕まえてやればよかった)
ずっと咥えていると痛いかもしれない。休憩を挟み、愛しい体を優しく(舌がざらざらしているから慎重に)舐めて、かわいがる。
舐めるたびにピクンピクンと反応する体がまた可愛い。ぐっしょりと濡れそぼった身体を見て、ああ、やりすぎたなと気づき、また運ぶ。そしてまた休憩し、舐めて、すりすりと顔をこすりつけ、また運ぶ。
そうしているうちにあっという間にゴールに着いてしまった。もっと可愛がりたかったのに、残念だ。
ところが、さんざん可愛がっていたつもりが、キルナにはそうは思えなかったようだ。ゴールの門をくぐり人間に戻った後、大泣きされてしまった。ライオンが追いかけてきたのが怖かったらしい。
本能のままに動いてしまったことを自戒しつつ、彼とともに寮へと戻った。
そして、今俺はキルナの機嫌を取るために、リリーとテアにもらった動物クッキーを並べハーブティーを淹れている。彼の口に合えばいいのだが。一口こくりと飲んで、彼は感心するように言った。
「ふぁあ、リラックスできる優しい香りでおいしっ!! クライス、ハーブティー淹れるの上手だね」
「ああ、いつかお前に淹れてやろうと思って練習したからな」
「そうなの? ありがと。クッキーもかわいいなぁ。どれ食べようか迷う。あ、僕このライオン食べちゃおっ。クライスも、はい、あ~んして」
口を開けると、うさぎのクッキーを入れてくれた。
「おいし?」
「ああ」
本当は、あ~んしてくれたことに感動して味なんてわからなかった。彼が何枚も食べているということは、きっとこれはよほど美味いクッキーなのだろう。
「みてみて~このねこのクッキー今日のリリーに似てる。こっちのりすはテアにそっくり」
「本当だな。見ろ、これはクーマに似てる」
「んぅ~そう? クーマはもっと怖かったよ。ねぇ、最後の一個もらっていい?」
「ああ、食え」
「ありがと」
サクサクと最後の一つを頬張るキルナを見ながら、ふと思い出す。
そういえば、リリーたちはこれを『発情クッキー』だと言っていた。だが土産屋に売っているクッキーに、そんな効果があるとは思えない。たぶんインパクトのある名前にして、売り上げを伸ばそうとしているのだろう。
しかし30分後。
俺はこの予想が誤っていたことを知る。
***
すみませんm(_ _)m クライスサイドのもふもふワールドを書きたくなってしまい※マークのイチャラブに辿り着きませんでした😭次こそはいちゃらぶになる予定です🌟
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