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第8章
第383話 番外編:悪役令息のクリスマス②※
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「僕外に出て冷えたからもう一回お風呂入るね」
「ああ、それがいい。すぐ用意してやるから待っていろ」
ご飯前に大浴場で温まった体が、バルコニーに出て冷めてしまった。今日は特別寒かったから指先がかじかんでいる。お湯に浸かると「あっつぅ」と声が出た。クライスが用意したのだからもちろん完璧にいつもの温度なのだけど、体が冷たいせいで熱く感じる。
(でもこれ、入ってるうちに程よい温度になってくるんだよね。この感覚がお風呂好きとしてはたまらない。あぁ、あったかいな。極楽~)
それにしてもリオンたちが見せてくれた光の海はきれいだった。パーティーするって決めたのは今日なのに、こんな短時間であれだけのものを用意するなんてすご過ぎる。彼らの能力はやはり別格らしい。
あと、クーマが裁縫上手だったのにもびっくりしたな。見た目だけじゃなく、内にも外にもポケットがあって使いやすさも抜群で。何を入れようか想像するだけでニマニマしてしまう。
ユジンがくれた花束は良い香りがして素敵だから寝室に飾ろう。
問題はリリーとテアに貰ったプレゼントだけど……。
よく温まった体をバスタオルで拭き、貰ったプレゼントを箱から出してみる。
「んしょ」
リリーとテアにもらったリボンを広げてみると、長い上に幅が広い。見たことないくらい大きなリボンだ。これをなんと彼らの説明によれば、裸の体に巻き付けるのだという(ちゃんと箱の中に結び方の説明書が入っていた)。
『わかった? メガネ。綺麗に自分をリボンで飾って、王子の前で「僕をあげる♡」って言うんだよ』
『甘~い声でネ~』
二人に可愛くウインクされて、頷いてしまったものの。
(いやいやいや、そんなことできっこない……)
どうしようか、このリボン。僕には使いこなせなかったと言って返す? でもそんなことをしたら二人が悲しむかな? 一回ぐらい使うべきだろうか。でも……。真剣に悩んでいると頭がショートしそうになった。こんなに美しいリボンを前に悩まされるなんて!
そもそも自分の体にリボンを巻くって難しいよね。説明書の絵をみるとなんとも複雑な結び方に見える。こうかな? いや、こう? 肩にかけて…背中の肩甲骨のとこでクロスさせて……股に通して…うぅ…黒いリボンが絶妙にペニスを隠していて卑猥……お尻の間にリボンが食い込んで変な感じ……。あ、でも結び方はわかってきたような。
(う~ん、これで合ってるかな?)
全身鏡を見ながら試行錯誤している僕。裁縫とか細かい手作業は好きだから、こうして紐を工夫しながら結ぶ作業は結構楽しい。え~と、最後は胸のところで結んで、と。
「ふぅ~完成~」
ばっちり胸の前に大きなリボン結びがきて、いいアクセントになっている。たるみもねじれもないし、上手く出来てるんじゃないかしら。我ながら見事な出来映えにほくほくする。
しばらく鏡で眺めてから、はっと我に返った。
(僕ったら何やってるんだろ。こんな格好クライスに見られたりしたら恥ずかしくて死ねる)
急いで胸の結び目を解こうとしたら、何者かに腕を握られ阻止された。ギィイイイっと軋む首をそちらに向ければ……。
「んっぎゃああ! クライス……いつからそこに……」
さっきの考えはフラグだったらしい。僕の体を熱い眼差しで見つめる彼に両腕を掴まれ、もう逃げようがない。
「キルナ、その姿は?」
「えと……その……」
(どどどどうしよう。何て言えばいいの?)
どう言い訳したって裸にリボンなんて変態でしかない。限界値を超えた恥ずかしさにパニクった僕の頭が導き出した言葉は……。
「ぼ、ぼくをあげる♡」
二人の師匠に教わった通りの言葉だった。
「ああ、それがいい。すぐ用意してやるから待っていろ」
ご飯前に大浴場で温まった体が、バルコニーに出て冷めてしまった。今日は特別寒かったから指先がかじかんでいる。お湯に浸かると「あっつぅ」と声が出た。クライスが用意したのだからもちろん完璧にいつもの温度なのだけど、体が冷たいせいで熱く感じる。
(でもこれ、入ってるうちに程よい温度になってくるんだよね。この感覚がお風呂好きとしてはたまらない。あぁ、あったかいな。極楽~)
それにしてもリオンたちが見せてくれた光の海はきれいだった。パーティーするって決めたのは今日なのに、こんな短時間であれだけのものを用意するなんてすご過ぎる。彼らの能力はやはり別格らしい。
あと、クーマが裁縫上手だったのにもびっくりしたな。見た目だけじゃなく、内にも外にもポケットがあって使いやすさも抜群で。何を入れようか想像するだけでニマニマしてしまう。
ユジンがくれた花束は良い香りがして素敵だから寝室に飾ろう。
問題はリリーとテアに貰ったプレゼントだけど……。
よく温まった体をバスタオルで拭き、貰ったプレゼントを箱から出してみる。
「んしょ」
リリーとテアにもらったリボンを広げてみると、長い上に幅が広い。見たことないくらい大きなリボンだ。これをなんと彼らの説明によれば、裸の体に巻き付けるのだという(ちゃんと箱の中に結び方の説明書が入っていた)。
『わかった? メガネ。綺麗に自分をリボンで飾って、王子の前で「僕をあげる♡」って言うんだよ』
『甘~い声でネ~』
二人に可愛くウインクされて、頷いてしまったものの。
(いやいやいや、そんなことできっこない……)
どうしようか、このリボン。僕には使いこなせなかったと言って返す? でもそんなことをしたら二人が悲しむかな? 一回ぐらい使うべきだろうか。でも……。真剣に悩んでいると頭がショートしそうになった。こんなに美しいリボンを前に悩まされるなんて!
そもそも自分の体にリボンを巻くって難しいよね。説明書の絵をみるとなんとも複雑な結び方に見える。こうかな? いや、こう? 肩にかけて…背中の肩甲骨のとこでクロスさせて……股に通して…うぅ…黒いリボンが絶妙にペニスを隠していて卑猥……お尻の間にリボンが食い込んで変な感じ……。あ、でも結び方はわかってきたような。
(う~ん、これで合ってるかな?)
全身鏡を見ながら試行錯誤している僕。裁縫とか細かい手作業は好きだから、こうして紐を工夫しながら結ぶ作業は結構楽しい。え~と、最後は胸のところで結んで、と。
「ふぅ~完成~」
ばっちり胸の前に大きなリボン結びがきて、いいアクセントになっている。たるみもねじれもないし、上手く出来てるんじゃないかしら。我ながら見事な出来映えにほくほくする。
しばらく鏡で眺めてから、はっと我に返った。
(僕ったら何やってるんだろ。こんな格好クライスに見られたりしたら恥ずかしくて死ねる)
急いで胸の結び目を解こうとしたら、何者かに腕を握られ阻止された。ギィイイイっと軋む首をそちらに向ければ……。
「んっぎゃああ! クライス……いつからそこに……」
さっきの考えはフラグだったらしい。僕の体を熱い眼差しで見つめる彼に両腕を掴まれ、もう逃げようがない。
「キルナ、その姿は?」
「えと……その……」
(どどどどうしよう。何て言えばいいの?)
どう言い訳したって裸にリボンなんて変態でしかない。限界値を超えた恥ずかしさにパニクった僕の頭が導き出した言葉は……。
「ぼ、ぼくをあげる♡」
二人の師匠に教わった通りの言葉だった。
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