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白衣の天使編
季節外れの海旅行 3
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「ひなっち右!!」
「は、はいっ! うぁっ」
フリーハンドで描かれた砂のコートギリギリのラインを狙って、元バレー部である夏帆のアタックが振り下ろされる。
アタックが打たれる直前の僅かな身体の動きを読んで、恭平が指示を出した方向へ言われるがまま雛子は動く。
「はい、ゲームセット~」
雛子が砂に足を取られそのまま砂浜にダイブしたところで、ビーチボールは審判をしていた鷹峯の足元に転がっていった。
「……ほんっと鈍臭い女」
「か、かたじけない……」
チームメイトのはずの舞から容赦ない言葉を浴びせられ、雛子は平謝りする他ない。
「ていうか、何でそんな動きにくい格好してるのよ? あんた水着持ってきてないわけ?」
「な、ないです。ごめんなさい……」
舞に突っ込まれるのも無理はない。全員が水着を着ている中、雛子はまるで子どもの水泳発表会を見に来た母親のようなUVカットファッションに身を包んでいた。
「分かった。まな板だからでしょ」
「ちょっ、なっ、なんてこと言うんですか皆の前でっ!」
しかしこのナイスバディの持ち主が揃う前では、確かに水着を着るのも勇気が必要かもしれない。
「っしゃあ! またこっちのチームの圧勝だぜー!」
反対側のコートでは、悠貴がガッツポーズで飛び上がっていた。
「そりゃそうでしょ。私と真理亜さんのタッグなら負けるわけがない。つまりお荷物はアンタだ入山」
「俺もサーブ決めただろうが!」
同じ元バレー部のよしみでいつの間にか真理亜と仲良くなった夏帆が、キッパリと悠貴を指差した。
「交代しましょうか、雨宮さん?」
完全にへばっている雛子を見兼ねて、鷹峯が交代を申し出る。それに嬉々として賛成したのはもちろん舞だ。
「じゃあ~次は恭平と鷹峯先生が私のチームね! いやぁん最高のメンバーだわぁ~」
頬を押えて悦に入ってる舞を後目に、恭平が未だ座り込んでいる雛子を引っ張り起こす。
「ほら、お前座って審判してろ」
「は、はい、ありがとうございます」
普段は白衣に隠されている均整のとれた身体に、薄らと汗が浮かんでいる。何だか見てはいけないものを見ている気がして、雛子は煩くなった心臓を誤魔化すように少しだけ目を伏せる。
「ボコボコにして差し上げますよ、清瀬さん」
「……私に何の恨みがあるかは存じませんが、どうぞご自由になさって?」
「ス、スタート! 試合スタートしましょうっ!」
鷹峯の軽口に、目元をひくつかせながらも笑顔で応じる真理亜。場に渦巻き始めた冷気に肝を冷やされ、雛子は試合開始の合図を送る。
「……絶対負けないわよ、夏帆ちゃん」
「任せてください、真理亜さん」
サーブを構える夏帆が真理亜に答える。
「行きます」
およそビーチボールとは思えない球速で、夏帆の放ったサーブは舞の足元へと落下した。
「きゃっ! ちょ、ちょっとあの女、今私のこと狙ったわよ!?」
「勝つために下手くそなやつ狙って何が悪いんだバーカ!!」
舞の抗議に、悠貴が応酬する。
「バカとは何よ! アンタだって何の役にも立ってないでしょーが!!」
「少なくともお前よりはボール拾えてるわ!!」
「鷹峯先生、さっきの威勢はどうされたのかしら?」
「いやぁビックリするほど予想通りの手の内だったのでつい気が抜けちゃいまして」
(何でこの人達罵り合わないと気が済まないんだろ……)
少しは恭平と夏帆を見習え。雛子は砂の上に正の字で得点を記録しながら、心の中でゴチる。
「まぁでもそうですね。確かに弱い人を狙うのは必勝法」
再び放たれた夏帆のサーブを、鷹峯は難なく受け止め高くトスを上げた。
「ですよね、桜井君?」
「おう、悪いな入山」
「んなっ……!?!?」
高い位置から力強く打ち込まれた恭平のアタックが、悠貴の顔面にクリーンヒットした。
「うわっ、悠貴大丈夫!?」
「アーハッハッハッ!!! 弱いやつは狙われるのよっ!!」
仕返しとばかりに、舞が悪役令嬢のごとく高笑いをしてみせる。悠貴は顔面を押さえながら悔しそうに起き上がった。
「……ちっくしょう。認めたくはないが、市ヶ谷の言う通り俺はお荷物だ。おいワガママ女! 俺達二人は抜けるぞ!」
「はぁっ!? ちょっと何勝手に決めてんのよっ……!」
不平を述べながらも、悠貴が抜けてしまったのを見て仕方なく舞も離脱する。
「は、はいっ! うぁっ」
フリーハンドで描かれた砂のコートギリギリのラインを狙って、元バレー部である夏帆のアタックが振り下ろされる。
アタックが打たれる直前の僅かな身体の動きを読んで、恭平が指示を出した方向へ言われるがまま雛子は動く。
「はい、ゲームセット~」
雛子が砂に足を取られそのまま砂浜にダイブしたところで、ビーチボールは審判をしていた鷹峯の足元に転がっていった。
「……ほんっと鈍臭い女」
「か、かたじけない……」
チームメイトのはずの舞から容赦ない言葉を浴びせられ、雛子は平謝りする他ない。
「ていうか、何でそんな動きにくい格好してるのよ? あんた水着持ってきてないわけ?」
「な、ないです。ごめんなさい……」
舞に突っ込まれるのも無理はない。全員が水着を着ている中、雛子はまるで子どもの水泳発表会を見に来た母親のようなUVカットファッションに身を包んでいた。
「分かった。まな板だからでしょ」
「ちょっ、なっ、なんてこと言うんですか皆の前でっ!」
しかしこのナイスバディの持ち主が揃う前では、確かに水着を着るのも勇気が必要かもしれない。
「っしゃあ! またこっちのチームの圧勝だぜー!」
反対側のコートでは、悠貴がガッツポーズで飛び上がっていた。
「そりゃそうでしょ。私と真理亜さんのタッグなら負けるわけがない。つまりお荷物はアンタだ入山」
「俺もサーブ決めただろうが!」
同じ元バレー部のよしみでいつの間にか真理亜と仲良くなった夏帆が、キッパリと悠貴を指差した。
「交代しましょうか、雨宮さん?」
完全にへばっている雛子を見兼ねて、鷹峯が交代を申し出る。それに嬉々として賛成したのはもちろん舞だ。
「じゃあ~次は恭平と鷹峯先生が私のチームね! いやぁん最高のメンバーだわぁ~」
頬を押えて悦に入ってる舞を後目に、恭平が未だ座り込んでいる雛子を引っ張り起こす。
「ほら、お前座って審判してろ」
「は、はい、ありがとうございます」
普段は白衣に隠されている均整のとれた身体に、薄らと汗が浮かんでいる。何だか見てはいけないものを見ている気がして、雛子は煩くなった心臓を誤魔化すように少しだけ目を伏せる。
「ボコボコにして差し上げますよ、清瀬さん」
「……私に何の恨みがあるかは存じませんが、どうぞご自由になさって?」
「ス、スタート! 試合スタートしましょうっ!」
鷹峯の軽口に、目元をひくつかせながらも笑顔で応じる真理亜。場に渦巻き始めた冷気に肝を冷やされ、雛子は試合開始の合図を送る。
「……絶対負けないわよ、夏帆ちゃん」
「任せてください、真理亜さん」
サーブを構える夏帆が真理亜に答える。
「行きます」
およそビーチボールとは思えない球速で、夏帆の放ったサーブは舞の足元へと落下した。
「きゃっ! ちょ、ちょっとあの女、今私のこと狙ったわよ!?」
「勝つために下手くそなやつ狙って何が悪いんだバーカ!!」
舞の抗議に、悠貴が応酬する。
「バカとは何よ! アンタだって何の役にも立ってないでしょーが!!」
「少なくともお前よりはボール拾えてるわ!!」
「鷹峯先生、さっきの威勢はどうされたのかしら?」
「いやぁビックリするほど予想通りの手の内だったのでつい気が抜けちゃいまして」
(何でこの人達罵り合わないと気が済まないんだろ……)
少しは恭平と夏帆を見習え。雛子は砂の上に正の字で得点を記録しながら、心の中でゴチる。
「まぁでもそうですね。確かに弱い人を狙うのは必勝法」
再び放たれた夏帆のサーブを、鷹峯は難なく受け止め高くトスを上げた。
「ですよね、桜井君?」
「おう、悪いな入山」
「んなっ……!?!?」
高い位置から力強く打ち込まれた恭平のアタックが、悠貴の顔面にクリーンヒットした。
「うわっ、悠貴大丈夫!?」
「アーハッハッハッ!!! 弱いやつは狙われるのよっ!!」
仕返しとばかりに、舞が悪役令嬢のごとく高笑いをしてみせる。悠貴は顔面を押さえながら悔しそうに起き上がった。
「……ちっくしょう。認めたくはないが、市ヶ谷の言う通り俺はお荷物だ。おいワガママ女! 俺達二人は抜けるぞ!」
「はぁっ!? ちょっと何勝手に決めてんのよっ……!」
不平を述べながらも、悠貴が抜けてしまったのを見て仕方なく舞も離脱する。
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