白衣とブラックチョコレート

宇佐田琴美

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白衣の天使編

季節外れの海旅行 4

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 残ったのは恭平・鷹峯vs真理亜・夏帆の四人だ。

「お前も見てただろ雨宮。鷹峯先生と恭平さんの華麗なコンビネーション。真理亜さんと市ヶ谷がいくら元バレー部とはいえ、これは厳しい戦いだぜ」

「うん、言いたい事は分かるんだけど、何でたかがビーチバレーでそこまでガチンコなわけ?」

 真剣な顔で額の汗を拭う悠貴に、雛子もまた真剣な顔でツッコミを入れる。

 初めの頃は恭平の事をスカした野郎だなんだと言っていた悠貴だが、街で遭遇した一件以来すっかり彼に惚れていた。そして先月行われた男性看護師の飲み会でたまたま隣の席になり、そこで完全にトドメを刺されたらしい。

 今では親愛の意を込めて名前で呼ぶほどに心酔している。

「恭平ー! 鷹峯先生ー! 頑張ってぇー!!」

 舞はというと、既に男性チームのスポンサーとして応援に徹していた。

「今度はこっちがサーブだな」

 恭平がボールを手に後ろへ下がる。

「手加減無用よ、恭平」

「分かってる」

 珍しく好戦的な瞳の真理亜に、恭平は僅かに口角を上げて頷いて見せた。

(桜井さんと真理亜さん、出身大学も一緒って聞いてるけど本当に仲良いんだな……)

 なかなか落下することなく激しく宙を舞い続けるボールを眺めながら、雛子はそんなことを考えていた。

(今日も一緒にサーフィンしに来たみたいだし……普段休みの日も会ったりしてるのかな)

 両者の実力差はほぼなく五分五分と言ったところ。女性チームはバレー経験者だけあって圧倒的技巧派であり、スポーツ万能らしい男性チームの方は体格とパワー面でバレー経験のなさをカバーしていた。

「すっげー戦いだな。一点入んのにどんだけ時間かかんだよ」

「私お腹空いてきた~。ていうかもう二時過ぎてんじゃない」

 デュース戦に入ってからもなかなか勝負が決まらず、舞がスマホの画面を見ながらボヤく。

(ああ、どうりで……)

 時間を聞いて、雛子は納得した。

(ちょっと痛みが出てきたな……)

 先程から、身体の奥がじわじわと焼けるように痛み出していた。気温の高い中慣れないスポーツをした上、内服時間がいつもより遅い。徐々に鎮痛剤の効果が切れてきてしまっている。

 皆が試合に集中している間に、昼用の薬を飲もう。

 そう思い、雛子は立ち上がった。

「ッ……!」

 一瞬、身体中に電気が流れたような痛みが走る。声は堪えたものの、苦痛に思わず顔が歪んだ。悠貴と舞はと言うと、女性チームが最後の一点を取れるかどうかの最終局面に目を奪われていた。

(セーフ……何とかバレなかっ……)

 ふと前を向く。

「……っ!?」

 恭平と、そして鷹峯が少し驚いたような顔をしている。目が合った、気がした。
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