白衣とブラックチョコレート

宇佐田琴美

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白衣の天使編

季節外れの海旅行 6

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「なかなか気苦労が絶えませんねぇ。雨宮さんのプリセプターというのは」
 
 真理亜と舞が着替えに行っている間、鷹峯がそう言ってくつくつと笑う。一方恭平は、何が面白いのか分からないといった真顔のまま頷いて見せた。

「まぁな。だがあいつは俺に何も言ってこない。だから俺も何も聞かない」

 恭平は人より表情に乏しい。しかし鷹峯は、今彼の中に焦りや不安が燻っている事を感じ取っていた。

「何を知ってんの。たかみーは」

「その変なあだ名やめてくださいって言いましたよね? ロックバンドじゃないんですから」
 
 名字が長い、という理由だけで適当なあだ名を付けられ、それが恭平の中で定着してしまっている事に鷹峯は抗議する。

「そんな事、今はどうでも良いだろ」

 面白くなさそうに抗議され、鷹峯はますます笑みを深くした。

「ひどくご執心なんですねぇ。貴方にしては珍しい」

 どうしちゃったんです? 鷹峯はそう宣う。しかし当の本人は、怒るでもなく至極真面目な顔で頷いてみせる。

「ああ、前も言ったろ、あいつが大事なんだって。プリセプターとして俺には責任があんだよ」

 自分の感情に無自覚なのか、はたまた本当にただの師弟感情のつもりなのか。鷹峯にそれを測る事は出来ない。

「やれやれ、まぁ大事なのは大変よく分かりました」

「だったら」

「けど。他人の個人情報をばら撒くのはご法度でしょう。アウティングは美学に反します」

「……」

 恭平がどのような感情からこれ程の使命感を持っているのかは分からない。

 しかし正直なところ、淡々と飄々を体現しているような彼がここまで他人に興味を示すこと自体、鷹峯からすれば意外であり、興味深かった。

「もうちょっと仲良くなったら、自分で聞いてみるのはいかがです?」

「……」

 恭平はまだ何か言いたげな表情であったが、それを口に出す事はなかった。



「恭平~! 鷹峯先生~! 待ったぁ~?」

 着替えを終えた女性陣二人が戻ってくる。

「更衣室、今なら空いてるわよ。恭平も着替えてきたら?」

 鷹峯先生も。と真理亜はついでのように付け加える。

「おう」

「そうさせて頂きましょうか」

 男性二人も更衣室で併設のシャワーを浴びてからラフな格好に着替えると、四人はスマホで開いた地図を頼りにコンドミニアムへと向かった。
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