あなたを瞳にうつす

色無 音恋

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 ピロン…

『明日、高浜公園の時計塔の下9時に集合ね!!歩都里は滅多にオシャレしないんだから、明日ぐらいオシャレしてよね!私だけオシャレしてると浮くのよ!分かった!?じゃ、よろしく♡』


____……
________  _



 小鳥の鳴き声が聞こえてくる。
 自然と目は覚める。
 のっそりとベットから抜け出すと、私はすぐさまワンピースに着替えた。

 待ち合わせに遅刻するなんて論外だ。
 というか、遅刻すると智がグチグチとうるさく言ってくるから遅れらんない?って感じかな。


 時間的にはまだ全然余裕がある。
 朝ごはんを食べて、メイクして…後は行きながら散歩でもするか。

 …メイク。
 またの名を『顔面塗装』とも言うけど…暑苦しくてあんまりしたくないんだよね…。
 今日は諦めるしかない。

 鏡を見つめ、映る自分を改めて確認する。
 髪型はOKで服装もバッチリ。
 顔は…あんまり自分の顔とか好きじゃないから可愛いとか不細工とか思わないけど…多分普通。

 オレンジのリップを口にひいて、アイシャドウも同系色でそろえる。


「よし。」


 あんまり自信はないけど、塗装は終わった。
 時計を見ればまだ集合の1時間前だ。
 ここから待ち合わせの公演までは歩いてだいたい15分程だろう。
 微妙な距離だ。


「いってきまーす。」


 なんて言っても…答えはかえってこないんだけど。
 みんな仕事だからもう家に居ない。
 私はまだ学生だからいつもと同じようにゆっくりと家を出る。
 急いでもしようがないから。


 家のあるところは意外にもオシャレ。
 歩道はレンガ模様で花壇もあったり、緑豊かな並木道はとても映える。
 アンティーク調の街灯も私の好きなポイントだ。


 すれ違う人々。
 響く靴の音。
 笑う子供たちに、会話に夢中なカップルたち。
 立ち話をするおばさま方。


 これがいつも見ている景色。
 なんだかんだ、私はここが好きだ。
 そんな事を思ったりする。


  小学校、中学校…そして高校。
  幼い頃からこの道を歩いてきた。


 あそこの角の喫茶店は、今ではコンビニへと変身。
 あっちにある信号の近く乃蒼建物なんてアパートがあったのに、今では近くの会社の駐車場になっている。


 数年で景色は変わってゆく。


 久しぶりに昔の事を思い出した。
 あれはいつの事だっただろう?


 智と一緒に遊ぶ約束をして、一緒に自分の家に帰っている途中の事、だったと思う。


 ランドセルをしょってたからしょってたからの頃か。


 2人で並んで、この道をずーっと歩いてた。
 その時は屋台が出ていたりと人が多かった気がする。


 智が女子高生の人にぶつかっちゃって、彼女が持っていたクレープを顔面で受け止め…大泣きした____という思い出。


 多分、びっくりして泣いちゃったんだとおもう。

 その後、女子高生が謝ってきてクレープを2個奢ってくれたんだよね。
 智はそれで大満足。
 悪いのは智なのに…。

 当時の女子高生には悪いことをしたな~なんて、智は言ってたなぁ。


 ____とまぁ、ここは思い出深いのだ。


 そして私の好きな道でもある。
 高校を卒業したら……まだ、早いよね?
 もうちょっと悩んでも、いいよね?


 唐突に自分の未来に不安を感じた。
 思い描く未来は_____いったいどんなものなのか。


 私は自分のことをよくわかっていない。
 自分自身のことを、理解していないような気がする。


「私は、何がしたいのだろう?」


 ふと、そんな事を呟いていた。
 この“人生”という道を進んでいて、私はどんな未来に行くのか…。


「いつかぶつかる悩み。」


 私はその悩みに向かっていかなくてはならない。



………そんな事より、待ち合わせの公園に行かないと。


 いつの間にか止まっていた足を、私は再び動かした。
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