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四章

05

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 そしてすぐにドライヤーの音が耳元で聞こえ始めた。オウラは初めてアネシーに髪を乾かしてもらいなんだか落ち着く感じがした。

「終わりましたよ、オウラ」

「ありがとうございます、アネシー」

 この後はお互いにどう過ごしていいかわからずに二人は寝ることにした。

「アネシーはベッドを使ってください」

「オウラはどこで寝るのですか」

 オウラは階段に指を指した。

「俺はここで寝ますのでお気になさらず」

「階段で寝ると身体を痛めますよ。 私は気にしないので一緒にベッドで寝ましょう」

「いけません、俺が気になります」

「お互いの背を向き合うようにして寝ればいいではありませんか」

「わかりました、そうしましょう」

 オウラはアネシーの言葉に従いベッドに入りお互いに背を向けた。

「では、おやすみなさい」

「お、おやすみなさい、アネシー」

 オウラはドキドキした鼓動を抑えるために明日のことを考えながら眠りについた。

 だが、起きてみたらお互い向き合って寝ていた。

 アネシーの髪色は王国にはいない珍しい黒茶色。オウラは優しく髪を撫でた。

 普段はしっかり者で怒ると侍女たちは恐れていますが、寝顔はそれと逆に可愛らしい。

「この寝顔は俺の前だけにしてくださいね、アネシー」

 オウラがボソッと呟くとアネシーは「んっーー」と喉で声を鳴らして起きた。

「おはようございます、アネシー」

「おはようございます」 

 すると起きたばかりのアネシーはベッドの上で正座をしていきなりオウラに説教をし始めた。

「どうしてこちらを向いているのですか」

「それは俺も起きたらアネシーも向き合うように寝ていましたよ。 それよりもまだ眠いですか」

「いえ、大丈夫です。起きてます」

 しかしアネシーの声はいつも通りだが目は瞑ったままだ。

「休暇は今日までなので眠たかったらまだ寝てていいですよ」

「では、そうさせて、いただきーー」

 アネシーは眠気に吸い込まれたように前に倒れ込むアネシーをオウラは抱き止めた。

 オウラはアネシーが起きるまで隣で好きな人の顔を眺めていた。

 アネシーが起きたのはお昼が過ぎてからだった。 そんなアネシーは自分が寝過ぎたことによってオウラに迷惑をかけたと言う。

「申し訳ございません、寝過ぎてしまいました。 お詫びに今日の食器洗いは私がやります」

「大丈夫ですよ、気にしないでください」

「いえ、そういうわけには行きません」

 アネシーの目は侍女長としての目をしていてオウラはアネシーの言うことを聞くことにした。

「ではお願いします」

「はい」

「今から軽食を用意しますから待っててください」

 オウラはベッドから降りて寝室を出ていった。
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