もしも、工作が好きな普通の男の子が伝説のスキルを手に入れたら

小林一咲

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第三章 運命の勇者

第三十話 リーダー不在

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 講義が終わった後、僕とアズボンドは学園長に呼び出された。
 まるで講義とは言い難い内容だっただけに、何を言われても仕方がない。そうアズボンドは感じているようだが、僕からしてみればあの演説は胸を打つものだったと思う。

「すみません。つい、熱くなってしまって……」

 頭を下げるアズボンドに学園長は「いやいや」と焦るように首を振る。

「教材になるほどの人物が実際に語ったことで、あの少年少女たちが成長するきっかけになるでしょう」
「そう言っていただけると――」

 隙をうかがっていたかのように「ところで」と切り出す学園長。彼は懐から書類を出すと、それを見せつけるように僕たちの目の前に出した。
 そこにはデカデカと『近年の盗賊による本校学生への被害報告』と書かれている。

 アラエジプタは、ここ数年の景気悪化によって失業者が増え、その影響は民間人だけでなく騎士や兵士までに広がった。国力を考えれば他国から略奪することも可能だろうが、バモナウツ王国とサンドル帝国の戦争が終結したばかり。「世界平和条約」に則れば戦争を起こすわけにもいかず、元騎士や元兵士は盗賊へと成り下がる者が少なくないのだとか。

「お願いします。盗賊退治を手伝ってください!」

 心中は察するが、僕たちは傭兵でもなければ戦闘員ですらない。このことを説明し「申し出は受けられない」と断ったものの、学園長はどうにか手を貸してほしいと食い下がる。

「先程の講義ではっきりしました。あなたが噂の『神の使徒様』ですよね?!」

 目線は僕の方に……。
 一体どんな噂が広がっているのか、僕はそんな大層なものではないはずなんだけど。

「先の戦争で突如として天界から舞い降りた奇跡の御方。その方が使徒様でないのなら一体何だというのでしょう」

 知らんわ、そんなん。

「しかし、僕たちだけでは何もできません」
「もちろん街の憲兵や騎士団にも伝えてありますし、我々教員も参加いたします」

 アズボンドに目配せをしてみると「時間はあるのだし手伝ってみたら?」と苦笑した。

 参加する兵や騎士、あるいは教員の中に勇者のスキルを得た者がいるかもしれない。気負わずそう考えた方が楽だ。

「わかりました。お手伝いします」
「ありがとうございます!」

 結局、盗賊との全面戦争に参加することになった。
 悲しいかな、隣の彼は随分とやる気満々の様子。こんな厄介事に巻き込まれておきながら、どうしてそこまのメンタルを保っていられるのか。


「ただの錬金術師が。なんで中央に座ってやがる」

 翌日、すぐに盗賊討伐の作戦会議が開かれた。参加するのは憲兵団員一〇名、騎士団員五名。そして学園の教師一〇名と僕たち二名。総勢二十七名でこの危機を乗り越えなくてはならない。腕利きが集まるこの中では当然、僕たちの存在はだ。快く思わない連中も多いようで。

「おい。なんでこんな小童《こわっぱ》どもが参加してやがる」
「落ち着け。彼らは依頼主が直接頼み込んで連れてきた者たちだ。勝手な振る舞いは許さんぞ」

 作戦の指揮を取る騎士団長が詰め寄ってきたガラの悪い冒険者達を一喝すると、彼らはこちらを一瞥してから聞こえるように舌打ちをして席に着いた。
 まぁ、冒険者なんて皆こんなもんだ。いちいち気にしていたらやってられないしね。

「それでは作戦会議を始める」

 騎士団長が立ち上がり話し始める。
 内容は、会議とは名ばかりの既に決められた作戦を伝えるもの。冒険者や学園の教師はそっちのけで、主導権は騎士団にあった。

「まったく納得いかねぇ」

 説明の腰を折ったのは、これまた冒険者の男だった。

「なんだね、ルーカス」

 この会議の前、事前に名簿が配られた。作戦に参加する人員の名前や職業が記載されている。

 それを見る限り、彼の名はルーカス・ナイト。御歳七〇ながら現役の冒険者として力を払っている。実力も確かであり、他国の冒険者ギルドにもその名が知れ渡っているという。愛称《ニックネーム》は鉄人である。

「なんで俺たち冒険者は蚊帳の外なんだ? 作戦を聞く限り信用されてねぇのが丸分かりだぜ」
「不満か?」
「ああ、不満だな。いくら冒険者といえども、ここにいるのはギルドが選りすぐった精鋭達だ。入隊してから間もない騎士や兵士とは違い、身元もしっかりしている」

 彼はきっとこう言いたいのだろう。「信用できないのは、作戦を押し付けてくる騎士団の方ではないか」と。もしこの中に盗賊に肩入れしている者があれば、作戦自体が意味を無くす。

「俺たちは傭兵じゃねぇ。そこを理解してもらえなくちゃ、冒険者ギルドはこの件から降りるぜ」
「……良いだろう。この作戦は一度白紙に戻す。だが、時間がない。早急に作戦を立案させなくては」
「分かっている。参加グループの代表数名を集め、作戦を考えるとしよう」

 その後すぐに別室が用意され、それぞれの代表が集められた。もちろん僕たちも。
 そんなこんなで、お互い大人な対応で丸く収まった――かに思えたが、それぞれの意見が合わず、作戦が決まるまで半日以上を費やしていた。

「それじゃあ部隊は分散しちまう!」
「だから! ここで取り逃がせば殲滅は不可能になる!」

 指揮が独立し過ぎているせいで話がまとまらない。そんな時、アズボンドがある資料を僕に見せた。

「これは?」
「行方不明者のリストだよ。同じ盗賊の仕業だとしたら、無理に押し入って連れ去られた人を危険に晒す可能性もある」

 人質ってやつか。

「大まかなアジトは発見済みなんだが」
「あと、奴らの規模が分かればな……」

 いずれにせよ早く作戦を決めなければ、それ以前の問題だ。

「じゃ、僕たちが偵察に行きます」
「「「は?」」」

 居ても立っても居られなかなった僕は、確認されているだけのアジトへと向かうことにした。







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