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4年目 新しい日々の始まり
第97話 今年も中華料理屋にて
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高校時代のチームメートとの忘年会はいつもの中華料理屋である。
安くて美味しくてボリュームがあるので、お金が無い高校生の野球部員に取っては、非常にありがたい存在だった。
店内には、山崎、平井、そして一応僕のサインも飾られている。
「いつも聞かれるのよね。
山崎選手、平井選手は分かるけど、高橋隆介選手って誰ですかって。
その度に説明するの面倒くさいからサッサと活躍するか、引退してくれないかしら」と女店主。
斬新な激励の言葉だ。
「よお、再就職先決まったか?」
宴会場の個室に入るなり、今年も山崎の先制パンチを浴びた。
昨年は「トライアウトどうだった?」だったので、こいつの中では勝手に僕のストーリーが進んでいるのだろう。
「ああユーチューバーになろうと思っている」と適当に答えた。
「そうか。俺も出てやろうか?
友情出演で。チャンネル登録者数、激増するぜ」
「いや、友情出演は友人に限っているので、結構だ」
「俺は友人じゃないのか?、親友よ」
「お前は単なる痴人だ」
(作者注:誤字ではありません)
「冷たいな。高校3年間バッテリーを組んだのに」
記憶が錯綜していないか?
ただの一度もそんな事実は無い。
「しかしお前らの会話はどつき漫才のコンビみたいだよな」と葛西。
彼は来年大学を卒業し、社会人野球の西部電力で野球を続ける予定だ。
「隆と山崎は仲悪そうに見えるけど、実際は……本当に悪いんだよな」と新田。
「そんな事無いよな、隆。
俺ら良いコンビだよな。
高校2年の時、二人で他校と喧嘩して勝ったこともあったしな」
「ああ、例の因縁つけられたやつか」と柳谷
「そうだ、俺ら二人で試合後にバス停にいたら、いきなり喧嘩売られたんだよ」
お前は記憶喪失か?
原因はお前だろう。
バス停で対戦相手が後ろにいるのに、「いやー、今日の相手はザコ過ぎて時間の無駄だったな。
これなら学校で自主練していた方がナンボかマシだったぜ」と お前が言ったからだろうが。
普通、対戦相手の地元で大きな声でそんな事言うか?
その日は対戦相手の高校へ遠征して練習試合を行い、僕と山崎はトイレに行っている間に、チームからはぐれてしまい、しかも道に迷ってしまったのだ。
そしてようやく駅に向かうバス停を見つけ、バスを待っている間に、山崎クンの余計な一言が発せられたというわけだ。
僕は「おい、やめとけよ。確かにそうだったけど、対戦相手に聞かれたら、どうするんだ」と山崎を諫めた。
そこで後ろから肩を叩かれ、振り返ったら、いきなり殴られたというわけだ。
振り返ると相手は7人おり、多勢に無勢だったが、火の粉を払うために応戦したというわけだ。
そして後から学校にばれ、僕と山崎はこっぴどく怒られ、一ヶ月練習への参加を禁止されたのだ。 (一応、正当防衛ということで、処分が軽く済んだ)
「よお、何の話だ」とゴリラがビール瓶を抱えてやってきた。
(人間界でのコードネームは平井という)
「おう、俺と隆の武勇伝を話していたところだ」
「ああ、それな。
俺も参加したかったな」
人間の喧嘩にゴリラが加わると、多分もっと怪我人が出ていたので、こいつがいなかったのは不幸中の幸いだった。(多分、一ヶ月の練習禁止では済まなかっただろう)
「今日は結衣ちゃんは来ないのか?」
「ああ、今日は夜勤だ」
彼女は看護師として働いている。
「そうか、ついに別れたか。
隆、元気だせよ。
女性は世の中にはいっぱいいる」
「お前、頭と性格だけでなく、耳も悪いのか?
や、き、んだと言っているだろう」
「わかった。
そういうことにしておこう。
まあ飲め」と平井が僕のグラスにビールを注いだ。
「でもさ、そろそろ結婚とかしないのか?
もう付きあって長いだろう」と葛西。
「うーん、来年は退寮しなければならないからな。
そのタイミングもあるかな。
そのためにはもっと稼がなきゃな」
「そう言えば、年俸一千万円越えたんだって?
良かったな」と山崎。
山崎に言われると、全て嫌みに聞こえるのは、僕のひがみだろうか?
山崎は入団時点で一千万円を越えていた。
「山崎は結婚とかしないのか?
金だけはもっているから、全くモテないこともないだろう」
「金だけとは何だ。
これでもファン感謝デーの結婚したい選手ランキングで、23位に入ったんだぜ」
うーん、それは結構微妙な順位ではないだろうか。
というように今年も高校の仲間との忘年会は、和気藹々のうちに終わった。
早いものでプロ入り4年目の今年もまもなく終わり。
フロリダへの自主トレから始まり、オープン戦でケガをしたこともあったが、プロ初ホームランも放ったし、良い1年だったのではないだろうか。
来年は飛躍の年にしたい。
安くて美味しくてボリュームがあるので、お金が無い高校生の野球部員に取っては、非常にありがたい存在だった。
店内には、山崎、平井、そして一応僕のサインも飾られている。
「いつも聞かれるのよね。
山崎選手、平井選手は分かるけど、高橋隆介選手って誰ですかって。
その度に説明するの面倒くさいからサッサと活躍するか、引退してくれないかしら」と女店主。
斬新な激励の言葉だ。
「よお、再就職先決まったか?」
宴会場の個室に入るなり、今年も山崎の先制パンチを浴びた。
昨年は「トライアウトどうだった?」だったので、こいつの中では勝手に僕のストーリーが進んでいるのだろう。
「ああユーチューバーになろうと思っている」と適当に答えた。
「そうか。俺も出てやろうか?
友情出演で。チャンネル登録者数、激増するぜ」
「いや、友情出演は友人に限っているので、結構だ」
「俺は友人じゃないのか?、親友よ」
「お前は単なる痴人だ」
(作者注:誤字ではありません)
「冷たいな。高校3年間バッテリーを組んだのに」
記憶が錯綜していないか?
ただの一度もそんな事実は無い。
「しかしお前らの会話はどつき漫才のコンビみたいだよな」と葛西。
彼は来年大学を卒業し、社会人野球の西部電力で野球を続ける予定だ。
「隆と山崎は仲悪そうに見えるけど、実際は……本当に悪いんだよな」と新田。
「そんな事無いよな、隆。
俺ら良いコンビだよな。
高校2年の時、二人で他校と喧嘩して勝ったこともあったしな」
「ああ、例の因縁つけられたやつか」と柳谷
「そうだ、俺ら二人で試合後にバス停にいたら、いきなり喧嘩売られたんだよ」
お前は記憶喪失か?
原因はお前だろう。
バス停で対戦相手が後ろにいるのに、「いやー、今日の相手はザコ過ぎて時間の無駄だったな。
これなら学校で自主練していた方がナンボかマシだったぜ」と お前が言ったからだろうが。
普通、対戦相手の地元で大きな声でそんな事言うか?
その日は対戦相手の高校へ遠征して練習試合を行い、僕と山崎はトイレに行っている間に、チームからはぐれてしまい、しかも道に迷ってしまったのだ。
そしてようやく駅に向かうバス停を見つけ、バスを待っている間に、山崎クンの余計な一言が発せられたというわけだ。
僕は「おい、やめとけよ。確かにそうだったけど、対戦相手に聞かれたら、どうするんだ」と山崎を諫めた。
そこで後ろから肩を叩かれ、振り返ったら、いきなり殴られたというわけだ。
振り返ると相手は7人おり、多勢に無勢だったが、火の粉を払うために応戦したというわけだ。
そして後から学校にばれ、僕と山崎はこっぴどく怒られ、一ヶ月練習への参加を禁止されたのだ。 (一応、正当防衛ということで、処分が軽く済んだ)
「よお、何の話だ」とゴリラがビール瓶を抱えてやってきた。
(人間界でのコードネームは平井という)
「おう、俺と隆の武勇伝を話していたところだ」
「ああ、それな。
俺も参加したかったな」
人間の喧嘩にゴリラが加わると、多分もっと怪我人が出ていたので、こいつがいなかったのは不幸中の幸いだった。(多分、一ヶ月の練習禁止では済まなかっただろう)
「今日は結衣ちゃんは来ないのか?」
「ああ、今日は夜勤だ」
彼女は看護師として働いている。
「そうか、ついに別れたか。
隆、元気だせよ。
女性は世の中にはいっぱいいる」
「お前、頭と性格だけでなく、耳も悪いのか?
や、き、んだと言っているだろう」
「わかった。
そういうことにしておこう。
まあ飲め」と平井が僕のグラスにビールを注いだ。
「でもさ、そろそろ結婚とかしないのか?
もう付きあって長いだろう」と葛西。
「うーん、来年は退寮しなければならないからな。
そのタイミングもあるかな。
そのためにはもっと稼がなきゃな」
「そう言えば、年俸一千万円越えたんだって?
良かったな」と山崎。
山崎に言われると、全て嫌みに聞こえるのは、僕のひがみだろうか?
山崎は入団時点で一千万円を越えていた。
「山崎は結婚とかしないのか?
金だけはもっているから、全くモテないこともないだろう」
「金だけとは何だ。
これでもファン感謝デーの結婚したい選手ランキングで、23位に入ったんだぜ」
うーん、それは結構微妙な順位ではないだろうか。
というように今年も高校の仲間との忘年会は、和気藹々のうちに終わった。
早いものでプロ入り4年目の今年もまもなく終わり。
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来年は飛躍の年にしたい。
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