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エターナルシア遺跡占領作戦
前門の蜘蛛、後門のネズミ
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「うーん」
今度はクダン、ムエルケ、ヨイニ、シュクレ、私の順番で下水道ダンジョンを進む。しばらく一本道が続いていた私たちの前に、正面と右の2つに分かれた分岐路が立ち塞がった。
「クダンちゃん、どっちが怖い?」
「どっちも怖いです……」
「もうちょい詳しく」
「ここまでの壁面構造と水音からして、ここは下水道の延長線上として建造されています」
噴水の真下にあった訳だしね。
「ふむふむ、それで?」
「純粋にそれだけなら下水道ダンジョンって事になるんですが、それにしては配管の構成に無駄が多すぎます。まるで下水機能自体はおまけで、もっと重要な構造物の為に作られている様な……」
下水機能がおまけだとするなら、本命はそれ以外って事だよね。何で下水道を移動しているだけで配管の構成が把握できるのか、もしかして人間ソナーなのかとか気になる事はあるけど一旦、忘れよう。
クダンちゃんは"分からない"じゃなくて"どっちも怖い"と言った。つまり両方にそれなりのリスクのある根拠があると見た。
「じゃあ、正面が怖い理由は?」
「方角的に市街地へ向かうルートなので、多分……すごく迷宮化しています」
「おっけ、下水道ダンジョンルートっぽいね。右は?」
「空気の味が違います」
「く、空気の味……?」
試しに舌を出してみる。
わかんない。
まぁ普通はわかる訳ないよね。
「どんな感じに違うの?」
「正面の方は下水と上から入ってくる外気の味ですが、右は全然違う場所の味です」
クダンちゃんの答えに、ヨイニがシュクレへ聞く。
「シュクレちゃん的にはどっちの方が目的の物がありそう?」
「えっと、市街地よりは……多分もっと地下に降りる感じの所です」
「それじゃあ右っすね!」
ムエルケの言葉に全員が頷いて右へ進む。しばらく進むと、大きな吹き抜けの縦穴になっている空間に出る。
「ひゃー! こりゃ迷宮っすね!」
ムエルケが身を乗り出して下を覗き込む。大きな吹き抜けの空間を1人がギリギリ通れるぐらいの太さの水道管があちこちへかかっている。下は深過ぎて見えないけど、落ちたらまず助からない距離だ。
「そう言えばここってオートマップ効いてないね」
ヨイニが半透明のウィンドウを確認する。
「うっわ、面倒だなぁ……」
純粋な行き止まりとかの分かれ道だけなら数十個あっても覚えてられるけど、立体的なダンジョンとなるとちょっと自信無い。
「人海戦術で埋めちゃうっすか?」
ムエルケが首を傾げて聞く。
数だけは多いのがメメントモリの理点だ。
「んー、例えばダンジョンの最奥にレアアイテムとかスキルが先着順で一個だけあったとして、メメントモリのメンバーがそれを我慢できる?」
「絶対に無理っすね!」
私の質問にムエルケちゃんが笑顔で返す。
うん、私も同意見だよ。
「僕達のクランは言えば取らないでいてくれるだろうけど、それを後から回収するのはちょっとやりたく無いなぁ」
流石はフォートシュロフ神聖騎士団。プレイヤーの坩堝なメメントモリとは統率力が違う。
「私達が目指しているのはメインルートみたいな感じっすよね? ならとりあえず一番奥を目指せばいいんじゃ無いっすか?」
「確かに、その可能性はあるけど……」
ムエルケちゃんの言葉に何とも言えない言葉を返す。
「実は別の横道から最奥まで行けましたーってパターンもあるもんね」
「えっと、多分なんですけど……」
シュクレちゃんがオズオズと手を上げる。
「どうしたの?」
「これまでに調べた文献を信じるなら、この大穴の最奥が一番怪しいです」
今回の調査はシュクレちゃんの発案で動いている。まあ違ったら他を探せばいいかな。
「じゃあ、とりあえず一番下を目指してみるっすか?」
私とムエルケちゃんの会話にヨイニが頷く。
「現状、他に選択肢は無いし行くだけ行ってみようか」
「ひゃぁあ! 来ます!!」
今まで、会話へ全く参加せずにひたすら周囲を警戒していたクダンちゃんが悲鳴を上げる。
「どっち!?」
「どっちもです!」
「隊列を戻せ!」
ヨイニが号令をかける。
即座に全員が元の位置へ戻った。
「キシッシャ!!」
吹き抜けの方から独特な叫び声が聞こえる。ちらりと振り返ると、大型な蜘蛛のモンスターが外壁を登って押し寄せて来ていた。
「シャドウバインド!」
クダンが苦無を投げる。
「ゴッドフィスト!」
ムエルケちゃんがスキル宣言と同時に拳を突き出す。彼女の手から白い半透明な巨腕が出現して巨大蜘蛛を吹き飛ばした。
信仰系の攻撃スキルだ。
この反応速度、かなりAGIに振ってるね。
「アニーさん、まえ!」
「ヂュー!」
さっきのゾンビラッドよりさらに大きい。
ジャイアント・ゾンビラットが突撃してくる。
「キヒヒヒッ!」
迎え撃つ様に走り出す。
「「セット・リボルビングパイル!」」
ジャイアント・ゾンビラットが突っ込んでくる速度と私のダッシュの威力、相対速度を利用して両腕を打ち込む。
インパクトの瞬間に合わせてスキルを発動する。
「フルファイアー!」
「ギュゥアアァァアアアア!!」
バゴン!
衝撃波を発生させながらジャイアント・ゾンビラットがダメージエフェクトを迸らせながら吹き飛ばされる。
気分爽快!
「ふぅ……そっちも終わったみたいだね」
振り返ると、吹き抜けの方向から来ていた巨蜘蛛は居なくなっていた。
今度はクダン、ムエルケ、ヨイニ、シュクレ、私の順番で下水道ダンジョンを進む。しばらく一本道が続いていた私たちの前に、正面と右の2つに分かれた分岐路が立ち塞がった。
「クダンちゃん、どっちが怖い?」
「どっちも怖いです……」
「もうちょい詳しく」
「ここまでの壁面構造と水音からして、ここは下水道の延長線上として建造されています」
噴水の真下にあった訳だしね。
「ふむふむ、それで?」
「純粋にそれだけなら下水道ダンジョンって事になるんですが、それにしては配管の構成に無駄が多すぎます。まるで下水機能自体はおまけで、もっと重要な構造物の為に作られている様な……」
下水機能がおまけだとするなら、本命はそれ以外って事だよね。何で下水道を移動しているだけで配管の構成が把握できるのか、もしかして人間ソナーなのかとか気になる事はあるけど一旦、忘れよう。
クダンちゃんは"分からない"じゃなくて"どっちも怖い"と言った。つまり両方にそれなりのリスクのある根拠があると見た。
「じゃあ、正面が怖い理由は?」
「方角的に市街地へ向かうルートなので、多分……すごく迷宮化しています」
「おっけ、下水道ダンジョンルートっぽいね。右は?」
「空気の味が違います」
「く、空気の味……?」
試しに舌を出してみる。
わかんない。
まぁ普通はわかる訳ないよね。
「どんな感じに違うの?」
「正面の方は下水と上から入ってくる外気の味ですが、右は全然違う場所の味です」
クダンちゃんの答えに、ヨイニがシュクレへ聞く。
「シュクレちゃん的にはどっちの方が目的の物がありそう?」
「えっと、市街地よりは……多分もっと地下に降りる感じの所です」
「それじゃあ右っすね!」
ムエルケの言葉に全員が頷いて右へ進む。しばらく進むと、大きな吹き抜けの縦穴になっている空間に出る。
「ひゃー! こりゃ迷宮っすね!」
ムエルケが身を乗り出して下を覗き込む。大きな吹き抜けの空間を1人がギリギリ通れるぐらいの太さの水道管があちこちへかかっている。下は深過ぎて見えないけど、落ちたらまず助からない距離だ。
「そう言えばここってオートマップ効いてないね」
ヨイニが半透明のウィンドウを確認する。
「うっわ、面倒だなぁ……」
純粋な行き止まりとかの分かれ道だけなら数十個あっても覚えてられるけど、立体的なダンジョンとなるとちょっと自信無い。
「人海戦術で埋めちゃうっすか?」
ムエルケが首を傾げて聞く。
数だけは多いのがメメントモリの理点だ。
「んー、例えばダンジョンの最奥にレアアイテムとかスキルが先着順で一個だけあったとして、メメントモリのメンバーがそれを我慢できる?」
「絶対に無理っすね!」
私の質問にムエルケちゃんが笑顔で返す。
うん、私も同意見だよ。
「僕達のクランは言えば取らないでいてくれるだろうけど、それを後から回収するのはちょっとやりたく無いなぁ」
流石はフォートシュロフ神聖騎士団。プレイヤーの坩堝なメメントモリとは統率力が違う。
「私達が目指しているのはメインルートみたいな感じっすよね? ならとりあえず一番奥を目指せばいいんじゃ無いっすか?」
「確かに、その可能性はあるけど……」
ムエルケちゃんの言葉に何とも言えない言葉を返す。
「実は別の横道から最奥まで行けましたーってパターンもあるもんね」
「えっと、多分なんですけど……」
シュクレちゃんがオズオズと手を上げる。
「どうしたの?」
「これまでに調べた文献を信じるなら、この大穴の最奥が一番怪しいです」
今回の調査はシュクレちゃんの発案で動いている。まあ違ったら他を探せばいいかな。
「じゃあ、とりあえず一番下を目指してみるっすか?」
私とムエルケちゃんの会話にヨイニが頷く。
「現状、他に選択肢は無いし行くだけ行ってみようか」
「ひゃぁあ! 来ます!!」
今まで、会話へ全く参加せずにひたすら周囲を警戒していたクダンちゃんが悲鳴を上げる。
「どっち!?」
「どっちもです!」
「隊列を戻せ!」
ヨイニが号令をかける。
即座に全員が元の位置へ戻った。
「キシッシャ!!」
吹き抜けの方から独特な叫び声が聞こえる。ちらりと振り返ると、大型な蜘蛛のモンスターが外壁を登って押し寄せて来ていた。
「シャドウバインド!」
クダンが苦無を投げる。
「ゴッドフィスト!」
ムエルケちゃんがスキル宣言と同時に拳を突き出す。彼女の手から白い半透明な巨腕が出現して巨大蜘蛛を吹き飛ばした。
信仰系の攻撃スキルだ。
この反応速度、かなりAGIに振ってるね。
「アニーさん、まえ!」
「ヂュー!」
さっきのゾンビラッドよりさらに大きい。
ジャイアント・ゾンビラットが突撃してくる。
「キヒヒヒッ!」
迎え撃つ様に走り出す。
「「セット・リボルビングパイル!」」
ジャイアント・ゾンビラットが突っ込んでくる速度と私のダッシュの威力、相対速度を利用して両腕を打ち込む。
インパクトの瞬間に合わせてスキルを発動する。
「フルファイアー!」
「ギュゥアアァァアアアア!!」
バゴン!
衝撃波を発生させながらジャイアント・ゾンビラットがダメージエフェクトを迸らせながら吹き飛ばされる。
気分爽快!
「ふぅ……そっちも終わったみたいだね」
振り返ると、吹き抜けの方向から来ていた巨蜘蛛は居なくなっていた。
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