67 / 149
エターナルシア遺跡占領作戦
ダンジョンを攻略するタイプのJK
しおりを挟む
ダンジョン攻略を始めて1時間、中ボス的な蜘蛛のモンスターを倒した広間で腰を下ろす。
「ひぃーながいー!」
「ちょっと休憩しようか」
ヨイニの提案で休憩する事になった。なんて言うか、このダンジョンは性格の悪いアンブッシュのモンスターが多すぎる。
戦闘中にあちこち移動しながら戦う必要があるから脳内にマップも入れておかないと行けないし、すごく神経をすり減らす。
「……やっぱり、おかしいですよね」
シュクレちゃんが壁の装飾を見つめながらポツリと呟く。それにヨイニが聞き返した。
「おかしいとは?」
「このダンジョンもですけど、このゲーム全体の構成がちょっと不思議なんです」
「もう少し具体的に教えて欲しいっす!」
ムエルケちゃんが興味津々と言った様子で聞き返す。シュクレちゃんはそれに頷いて、話を続けた。
「えっと、この世界というか……私たちの活動している地域ってまず円形になっているんです」
シュクレちゃんの発言に全員が頭上にクエッションマークを浮かべる。その様子を見て彼女はヨイニの方へ視線を送った。
「ヨイニさん、フォートシュロフ、エターナルシア、それと幻夢境街の地図を出してもらえますか?」
「ああ、もちろん」
ヨイニはアイテムボックスから大きめの丸テーブルとそれぞれの地図を取り出してそこへ並べた。
「多分、意図的に縮尺が調整されているので分かりにくいですが、それぞれの町の位置関係に合わせて並べるとこうなります」
私も腰を上げてテーブルの方に集合する。ヨイニが踏み台を用意してくれてテーブルの上を見つめた。
「うーん?」
それぞれの道は繋がっている感じはあるけどそれだけで全容が円形であるかどうかは何とも言えない。
確かに、町の位置関係だけに注目すれば切り分けられたピザみたいな形に見える、気もする。
ヨイニが首を捻りながら代表して質問を投げかけた。
「この3つの街が大きな円形の一部だったとして、それの何がおかしいの?」
「イベントの進行に伴って、私たちは円の内側に進んでいるんです」
「それで……?」
「えっと、現代においてこの手のVRMMOは大半の部分はAIによって生成されていますよね」
昔の人はグラフィックを全部人力で作って何百億円と言う予算と十年近い制作期間を要していたらしい。
狂気かな。
「そうだね」
「ただリアリティのあるだけの世界を作ってもプレイヤーは楽しくありません。そのため、この手のゲームはある程度の矛盾を内包しているのですが、それでもAIで生成する都合上、大部分は整合性の取れた状態にする必要があります」
「あー、アンビルドってやつっすね! 突飛な世界観のゲームを作ろうとして偶になるって聞いた事あるっす!」
ムエルケちゃんの話に私がクエッションマークを浮かべていると、ヨイニが補足してくれた。
「最初に作られた情報を元に世界の時間を進めるだけならAIの必要な処理能力はさほど大きくないけど、それだとゲームを遊ぶ側が楽しい状況になるとは限らない。だからAIは随時、世界に調整を加えているんだ。矛盾の多い世界はAIの処理が追いつかなくなって、とてもじゃないけど遊べない状況になる」
ヨイニの話にシュクレちゃんが頷く。
「はい、その上で考えて……この手のVRMMOにおいて、モンスターというのは概ね街から離れる程、強くする様に設定するのが一般的です」
「そうなの?」
そもそもVRMMOの知識に乏しい私が首を傾げると、シュクレちゃんは小さく頷いた。
「最初から未開の地に放り出されるのが好きなプレイヤーは少数派なので、ゲームの開始地点はそれなりの規模の都市になります」
「あー、プレイヤーが街からスタートする以上、モンスターの分布は街から遠ざかるほど強くなるって事だね」
「その通りです。また、世界観の整合性を取る為にも町の近くのモンスターは驚異度が低くなるはずです」
そりゃ危険な場所より安全な場所に住みたいし、そもそも危険なところだと逆説的に街が作れないもんね。
この矛盾に対して特別な処置がなければ、仮に街を作っても危なすぎてNPCがすぐにいなくなるのは容易に想像できる。
「この話がさっきの町の配置が円形であることとどう繋がってくるの?」
「このゲームは新しい町の周囲の方がモンスターの驚異度は高いですよね?」
シュクレちゃんの言う通り、フォートシュロフより幻夢境街の方がモンスターは強いし報酬も良い。
「うん、そうだね」
「しかし、円というのは構造上、内側にいく方が町の密集率が高くなります」
ここまでの話でシュクレちゃんの話を理解した全員が地図から視線を外して正面を向く。確かに、その通りだ。
これは例えるなら、大都会の中央に行くほど野生のクマの出現率が増えて田舎に行くほど小さなネズミや小鳥しかいなくなるみたいな状態だ。私たちの様子を他所に、シュクレちゃんは話を続ける。
「運営側がこの構造的な欠陥をちゃんと認識していればしかるべき設定がされていると言う事でしょうけど……爆弾を抱えている状態ではありますね」
「ちな、それが分かると……?」
「え、特に何も無いです?」
ズコーン! 画期的な新発見に一同の緊張感が高まっていた中、一気に脱力して崩れ落ちる。
「ないんかーい!」
私が思わずツッコミを入れると、ヨイニが答えた。
「あはは……、まぁ運営側の意図がわかれば隠しボスとか、メインストーリーの攻略を考える上でのヒントになるよ、きっと」
「ひぅっ……お役に立てずごめんなさい!」
シュクレちゃんが恐縮した様子で頭を下げる。私はそれを手のひらをひらひらして制した。
「いーよいーよ、シュクレちゃんはそのままで。基礎研究ってそういうもんだし」
「ひぃーながいー!」
「ちょっと休憩しようか」
ヨイニの提案で休憩する事になった。なんて言うか、このダンジョンは性格の悪いアンブッシュのモンスターが多すぎる。
戦闘中にあちこち移動しながら戦う必要があるから脳内にマップも入れておかないと行けないし、すごく神経をすり減らす。
「……やっぱり、おかしいですよね」
シュクレちゃんが壁の装飾を見つめながらポツリと呟く。それにヨイニが聞き返した。
「おかしいとは?」
「このダンジョンもですけど、このゲーム全体の構成がちょっと不思議なんです」
「もう少し具体的に教えて欲しいっす!」
ムエルケちゃんが興味津々と言った様子で聞き返す。シュクレちゃんはそれに頷いて、話を続けた。
「えっと、この世界というか……私たちの活動している地域ってまず円形になっているんです」
シュクレちゃんの発言に全員が頭上にクエッションマークを浮かべる。その様子を見て彼女はヨイニの方へ視線を送った。
「ヨイニさん、フォートシュロフ、エターナルシア、それと幻夢境街の地図を出してもらえますか?」
「ああ、もちろん」
ヨイニはアイテムボックスから大きめの丸テーブルとそれぞれの地図を取り出してそこへ並べた。
「多分、意図的に縮尺が調整されているので分かりにくいですが、それぞれの町の位置関係に合わせて並べるとこうなります」
私も腰を上げてテーブルの方に集合する。ヨイニが踏み台を用意してくれてテーブルの上を見つめた。
「うーん?」
それぞれの道は繋がっている感じはあるけどそれだけで全容が円形であるかどうかは何とも言えない。
確かに、町の位置関係だけに注目すれば切り分けられたピザみたいな形に見える、気もする。
ヨイニが首を捻りながら代表して質問を投げかけた。
「この3つの街が大きな円形の一部だったとして、それの何がおかしいの?」
「イベントの進行に伴って、私たちは円の内側に進んでいるんです」
「それで……?」
「えっと、現代においてこの手のVRMMOは大半の部分はAIによって生成されていますよね」
昔の人はグラフィックを全部人力で作って何百億円と言う予算と十年近い制作期間を要していたらしい。
狂気かな。
「そうだね」
「ただリアリティのあるだけの世界を作ってもプレイヤーは楽しくありません。そのため、この手のゲームはある程度の矛盾を内包しているのですが、それでもAIで生成する都合上、大部分は整合性の取れた状態にする必要があります」
「あー、アンビルドってやつっすね! 突飛な世界観のゲームを作ろうとして偶になるって聞いた事あるっす!」
ムエルケちゃんの話に私がクエッションマークを浮かべていると、ヨイニが補足してくれた。
「最初に作られた情報を元に世界の時間を進めるだけならAIの必要な処理能力はさほど大きくないけど、それだとゲームを遊ぶ側が楽しい状況になるとは限らない。だからAIは随時、世界に調整を加えているんだ。矛盾の多い世界はAIの処理が追いつかなくなって、とてもじゃないけど遊べない状況になる」
ヨイニの話にシュクレちゃんが頷く。
「はい、その上で考えて……この手のVRMMOにおいて、モンスターというのは概ね街から離れる程、強くする様に設定するのが一般的です」
「そうなの?」
そもそもVRMMOの知識に乏しい私が首を傾げると、シュクレちゃんは小さく頷いた。
「最初から未開の地に放り出されるのが好きなプレイヤーは少数派なので、ゲームの開始地点はそれなりの規模の都市になります」
「あー、プレイヤーが街からスタートする以上、モンスターの分布は街から遠ざかるほど強くなるって事だね」
「その通りです。また、世界観の整合性を取る為にも町の近くのモンスターは驚異度が低くなるはずです」
そりゃ危険な場所より安全な場所に住みたいし、そもそも危険なところだと逆説的に街が作れないもんね。
この矛盾に対して特別な処置がなければ、仮に街を作っても危なすぎてNPCがすぐにいなくなるのは容易に想像できる。
「この話がさっきの町の配置が円形であることとどう繋がってくるの?」
「このゲームは新しい町の周囲の方がモンスターの驚異度は高いですよね?」
シュクレちゃんの言う通り、フォートシュロフより幻夢境街の方がモンスターは強いし報酬も良い。
「うん、そうだね」
「しかし、円というのは構造上、内側にいく方が町の密集率が高くなります」
ここまでの話でシュクレちゃんの話を理解した全員が地図から視線を外して正面を向く。確かに、その通りだ。
これは例えるなら、大都会の中央に行くほど野生のクマの出現率が増えて田舎に行くほど小さなネズミや小鳥しかいなくなるみたいな状態だ。私たちの様子を他所に、シュクレちゃんは話を続ける。
「運営側がこの構造的な欠陥をちゃんと認識していればしかるべき設定がされていると言う事でしょうけど……爆弾を抱えている状態ではありますね」
「ちな、それが分かると……?」
「え、特に何も無いです?」
ズコーン! 画期的な新発見に一同の緊張感が高まっていた中、一気に脱力して崩れ落ちる。
「ないんかーい!」
私が思わずツッコミを入れると、ヨイニが答えた。
「あはは……、まぁ運営側の意図がわかれば隠しボスとか、メインストーリーの攻略を考える上でのヒントになるよ、きっと」
「ひぅっ……お役に立てずごめんなさい!」
シュクレちゃんが恐縮した様子で頭を下げる。私はそれを手のひらをひらひらして制した。
「いーよいーよ、シュクレちゃんはそのままで。基礎研究ってそういうもんだし」
11
あなたにおすすめの小説
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。
癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。
branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位>
<カクヨム週間総合ランキング最高3位>
<小説家になろうVRゲーム日間・週間1位>
現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。
目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。
モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。
ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。
テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。
そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が――
「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!?
癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中!
本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ!
▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。
▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕!
カクヨムで先行配信してます!
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!
くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作)
異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる