【野生の暴君が現れた!】忍者令嬢はファンタジーVRMMOで無双する【慈悲はない】《殺戮のパイルバンカー》

オモチモチモチモチモチオモチ

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エターナルシア遺跡占領作戦

論破されるタイプのJK

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 戦闘開始から十数分後、周囲にはPK撲滅連合のプレイヤーがダメージエフェクトを迸らせながら死体の山を作っている。

「あっ!」

 拘束系のスキルと持ち前の危機察知能力ききさっちのうりょくでパーティを支えていたクダンちゃんがついに押し切られる。
 元々、彼女はダンジョン攻略に特化した探索特化ビルドだ。ここまでよく耐えてくれた。

「クダン!」

「私が拾う! 影踏かげふみっ!」

 クダンちゃんを倒したプレイヤーの陰へスキルで飛ぶ。

「うわっ!」

「遅い! パイルバンカー!」

 緊急事態きんきゅうじたいなのでここは一撃で処理する。相手が反応して何かをするより先にパンチへパイルバンカーを乗せて打ち込む。
 パイルが彼の鎧を貫通し内臓を直撃する。

「んーやばいなー」

 人数差を考えればめちゃくちゃ良い勝負をしてはいるけど、流石にこの数の差は大きすぎる。

「よぉ暴君ぼうくん!」

 遠くの方から、聞き覚えのある声が勝ち誇った声音で届く。PK撲滅連合のクランマスター、カタンだ。
 彼の声が響き渡ると、プレイヤーたちは動きを止めた。私は彼の方向に声を投げ掛ける。

「こーらーカーターンーー!!! どういうつもりだー! 」

 ギリギリ会話ができるかできないかぐらいの距離、配管の上に見覚えのある大柄の男が見える。

「まぁ、このままPKしてやっても良いんだが……前回のイベントでお前に言い負かされたのがくやしくてな。お前を論破した上でPKする、そこまでやらないと仕返しにならないだろ?」

「性格が悪いぞー!」

「ちなみに今、この戦いは配信させてもらっている。I&F最低最悪のPKプレイヤー"暴君"アニーキャノンが論破されて負ける場面が世界中継される訳だ」

 そう言う彼の隣には、SNS配信用の子機が浮かんでいた。困った事にあれは破壊不能オブジェクトだ。

「PK連合が率先してPKやって良いのかー!」

「PKを狩るのは良いんだ!」

 私の文句にカタンは即答する。
 彼我ひがの戦力さ歴然《れきぜん》、なんとかして論破ろんぱで組織を瓦解がかいさせられないかな。

「ふーん。つまり、少数派を大人数で囲んで袋叩きにするのがPK撲滅連合の方針ってこと?」

「そうだな」

「それってなんか感じ悪く無い?」

「そうだな」

「え?」

 私の質問に、カタンはなんでも無い様に頷く。思わず驚いて変な声を出した私に構わず彼は続けた。

「俺たちのやっている事が感じ悪いのと、お前達の普段の行動が他のプレイヤーの迷惑になっていることは全く別の問題だろ」

「うっ……」

 そこを突かれると痛い。
 PK行為自体がそもそも迷惑なのかどうかと言う点でいえば、一般プレイヤーにとって迷惑な行為なのは事実だ。

「げ、ゲーム上可能なんだから一般プレイヤーに禁止される筋合いないじゃん! PKがどうしても嫌ならそう言うゲームやれば良くない?」

「あはは」

 私の言葉にカタンが楽しそうに笑い声を上げる。

「ゲーム上可能だからやって良いってレベルの会話をするなら、PKを非難するのも、PKをPKするのもゲーム上可能な行為な訳だから一般プレイヤーの1人であるお前に文句を言われる筋合いも無いだろ。それが嫌ならPKを非難したり、PKをPKする行為が無いゲームをやれば良いんじゃ無いか?」

「うげげげ!」

 やめて!
 こっちは矛盾を自覚しつつ屁理屈へりくつの勢いで押し切ろうしてるのに正論で殴ってこないで! 反論できないから!

「そもそも、お前の理屈で言えばこの世界は何をやるのもパワーバランス次第なだけで根本的には自由だって事だろ? なら多数派っていうパワーで少数派を制圧してPKを実質的に成立させない為に活動するのだって別に悪いことじゃ無いだろ。それを倫理的な問題として非難するのは単に少数派にとって不都合ってだけで俺らは困らないし、それは大多数のプレイヤーにとっても同じことだ」

「そ、そそそそそそんな、自分たちの都合に合わせて少数派を力でねじ伏せる様な行為が正義だっていうのかー!」

「正義なんてその人の立場や環境、生い立ちで変わる物だ。もしこの国において誰の目からも正義と言える物があるとしたらそれは民主主義、大胆に言えば多数決だろ。そして大多数の人間にとってPK行為は迷惑だ」

 まずい……この男、イベントの時は無自覚に矛盾を内包していたけど、今は完全に開き直っている。

「む、難しい単語を使って煙に巻こうとするなー!」

「じゃあ話をまとめるぞ?」

 私の苦し紛れの反論にカタンはニヤリと笑う。

「このゲームに平和な世界を築こうとするのも、お前達の様に混沌を求めるのも同じレベルのエゴのぶつけ合いでしかない」

「や、やめろー! 卑怯ひきょうだぞー!」

 私の言葉に構わず、カタンは話を続ける。

「で、冷静に考えて世の中にはPKを我慢しても生きていける人の方が多いんだわ。お互いの主張に妥協点が見つからないなら、後は力なんだろ? そして今、多数派である俺たちの方が力を持っている。即ち、別にもう俺達は正義である必要もないんだが……なんと偶然にも正義ですらある」

「ぐぎぎ……!」

「お前の言うとおり、この世界ゲームは本質的には何をやっても良い。お前達みたいな人間が他人に迷惑をかけるのも自由だし、俺達みたいな多数派はそれを圧倒的な数で邪魔な少数派を弾圧するのだって自由だ」

「……ち、違います!!」

 私たちに守られる様に小さくなっていたシュクレちゃんが震えた声を上げる。カタンは彼女の方を一瞥いちべつした。

「どう違うっていうんだ?」

「確かに、わっ私達はどこかいびつで、不完全で、沢山の人に迷惑をかける事もあります。で、でも! 世界に革新を産んできたのも、そんな少数派の人たちです。普通の人が簡単にできる事ができない代わりに、普通の人にはできない事ができる事だってあります」

「そんなのは誰だって得意不得意はある。周りに迷惑をかけずに得意分野で力を発揮できる人間だっているんだから、その理屈は通らないだろ」

「えっえっと……けん、健常者だって誰かに少しずつ迷惑をかけていて、得意分野で誰かに貢献する事で社会を形成しているとするなら。わっ私達も、誰かにかける迷惑より、より大きな力を発揮できるなら! 私達の間に、多数派とか少数派とかそういった垣根かきねは存在しないはずです!」

「……」

 シュクレちゃんの言葉に、カタンはアイテムボックスからポーションの様な物を取り出して一口で飲み干す。

「なら、証明してみろよ」
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