【野生の暴君が現れた!】忍者令嬢はファンタジーVRMMOで無双する【慈悲はない】《殺戮のパイルバンカー》

オモチモチモチモチモチオモチ

文字の大きさ
80 / 149
剛輪禍工業革命-1:機関車チェイス

空を飛ぶタイプのJK

しおりを挟む
 シュクレが声を上げる。

「第2波、来ます!」

 ズバガカカン!

 炸裂音と共に弾頭が私たちの機関車を襲う。何かしらスキルを使っているのか、見た目以上の破壊力を発揮している。体が前につんのめる様な感覚と共に、機関車が急激に減速していくのを感じる。

「まーずーいー!」

 私は頭を抱えて悩む。

 こっちの魔法使いも反撃を仕掛けているけど、命中率が芳しく無い。ダメージレースで完全に負けている。

「アニーさん!」

 そこで、シュクレが私へ声をかけた。

「どうしたの?」

「えっと……実は、ヨイニさんから困ったら開ける様にって言われてたんです」

 シュクレはアイテムボックスから謎の包みを3つ、取り出し、その内の1つの封を開いた。

孔明こうめいか」

 私のツッコミを他所に、シュクレが包みの中に書かれた羊皮紙へ視線を走らせる。そして少し考える様な仕草をとった。

「なんて書いてあったの?」

「アニーさんは今、レーシングゲームをしています」

「え? うん」

 そういうイベントだよね?

「あっえっと、そうじゃなくて……。うーん、じゃ、じゃあ脱出ゲームです。今ある物や情報を使って、あの列車より先に辿り着かないと、脱出できないというルールです」

「脱出ゲーム……」

 私の中で、脳のスイッチがカチリと切り替わる。思考が閃光の様に駆け巡り、視界がフラッシュカメラで撮影された様に明滅した。

「まずは、問題を分離して考えよう」

「あ、アニーさん?」

「私たちは大幅に減速してしまった。再加速が可能なのか、再加速を可能にするためのプロセスがどれぐらい時間のかかることなのかを検討する必要がある」

 私は視線を天井へ向ける。

「これ、電子回路だね」

 天井に埋め込まれた水晶を見上げながら、呟く。

「電子回路?」

 シュクレが首を傾げながら答える。

「ほら、今、私たちが日常的に使っている機械って有機コンピュータを使ってるじゃん?」

「は、はい」

 私の質問にシュクレが何を当然なことを、と言った様子で頷いた。

「その前って何を使っていたか知っている?」

「確か、量子コンピュータですよね? 博物館で見た気がします」

「そうそれ! その量子コンピュータの基礎理論というか、前身になったのが電子コンピュータ」

「ま、まさかアニーさん……その古代の技術を、理解できるんですか?」

 シュクレが恐る恐ると言った様子で尋ねてくる。私はそれに対して、首を左右に振った。

「いや流石に複雑すぎてそれは無理、だけど……これを電子回路と見立てれば、かなり原始的な構造をしているよ」

 私はボイラー室を指差す。

「あれを電流電源に見立てれば、こっちのグチャットしたのはたぶん昇圧回路」

 次に天井のクリスタルを指差す。

「多分、これが操縦席からの信号を受け取って動力を制御するICの役割をしている。それなら反対側から伸びている構造と宝石みたいなのはダーリントンペアで、全容は分からないけど多分PWMPulse Width Modulation制御だと見て良い。あっちの構造とか典型的なフライバック接続っぽいよね」

 私がパパッと完結に説明本人談すると、シュクレが宇宙の真理について考える猫の様な表情を浮かべた。

「ええっと……」

 頭を左右に部分と振って正気に戻ったシュクレが、ヨイニから託された包みの2つ目を開いて大きく頷く。

「つまり、何をすれば良いんでしょうか?」

「あのクリスタルっぽいのをぶっ壊して、こっちのチューブに直接MPを注ぎ込んで!」

「わっ、わかりました!」

 作業に取り掛かるシュクレを置いてその場を後にしようとすると、背後から彼女に呼び止められた。

「アニーさんはどうされるんですか?」

 私はそれに背中越しで答える。

「もちろん、あのクランをぶっ潰す!」






*「あのクランに仕返しがしたい近接軽装プレイヤーは屋上に上がれー! タンクは軽装を守ってー!」*

 クランチャットでメメントモリのメンバーへ呼びかける。各色々な返事が返ってきて、皆が動き出した。

*「アニーさん! やりますよ!」*

 クランチャットからシュクレが合図を飛ばす。

*「皆、振り落とされないでね!」*

 既に耐久値の減少によって置いていかれ気味だった機関車がグン、と加速する。進行方向へ向けていた背中に強烈な追い風が襲いかかった。私たちの機関車は銃撃を仕掛けてきたクランの機関車を一気に追い抜く。

*「者ども、かかれぇー!」*

 クランチャットで合図を送り、自分の乗っている機関車の端へと駆け出した。強風が背中を打ちつけてきたが、気にせず走り続けた。

「いけぇぇええ!」

 私の足元、機関車の振動と音が一体となり、それが私の心臓の鼓動とリンクするかの様だった。大きく息を吸い込み、力を足元へ集める。助走の勢いをそのままに、最後の一歩を踏み出し、全ての力を解放する。

「キャハハハ!!」

 私の腰に生えた翼を大きく開く。この翼で飛ぶことはできないけれど、空気抵抗によって空中での姿勢制御を可能としている。

 距離、風向き、重量。全てを計算しながら、私は空を舞う。あの蒸気機関車の屋上へと向かって。時間がゆっくりと進む様な錯覚にとらわれながら、私は空中でこの飛翔が成功したことを確信する。

「キヒッキヒヒヒ……!」
 
 これから起こる出来事への期待に胸が高鳴り、口角が痛いほど釣り上がった口からは笑い声が溢れた。

「うおりゃぁー!」

「ひゃっはー!」

 私の後を追う様にして、他のメンバーも奇声を発しながら各々が飛び出していく。目指す先は、後方の横車線に位置する敵対クランの蒸気機関車だ!

「な、何だ! モンスターが飛んできたぞ!!」

 バゴン! 着地の衝撃で車体が僅かに揺れ、金属で覆われた屋上部分が歪む。その姿を見て、ライフルを構えたプレイヤーが声を上げる。

「あ、あれはまさか……!」

 何が起きたか分からず狼狽えるプレイヤー達の中で1人が私に気がつき、震える指を私の方へ向ける。

「あ、あれはまさか……"フォートシュロフ13騎士"の1人"暴君"アニー・キャノン!」
 
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

処理中です...