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電脳暴君はまだまだ夢の中
人類の本気
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「す、すげー」
フォートシュロフの仮設拠点で、私は前線の状況と現実世界のSNSを見比べて思わず感嘆の声を上げる。
世界の危機という状況がそうさせるのか、配信は瞬く間に拡散され、それを大御所インフルエンサーがさらに押し広げた。あの配信は指数関数的に世界中を駆け巡り、IAFプレイヤー以外も少しでも力になろうと集結した。
試しに再生した動画には、誰でも知っている大企業のロゴを背に、杖を持った老齢の男性が写っている。
*「政府が全力で本体サーバーを探しているのは間違ありません。しかし、私が皆様にお伝えしたいのは、時間的猶予が無いということです」*
老人の声には微かに震えが混じっていたけど、その目には確固たる信念が宿っていた。
*「シマーズさんの配信で説明された内容はあくまで憶測ですが、一定の合理性が認められます。私は、人類が生存する可能性を少しでも高めるべく、彼らと、彼らに協力する全ての人を支援します」*
その言葉に呼応する様に、量販店や小売店から最新VR機器の無料配布が開始された。配送トラックはまるで救急車の様に優先されながら町中にVR機器を配り、それを誰も咎めなかった。
「家の周りもすごいことになってるし……」
自宅の監視カメラには、帯銃した警察官と物々しい装備の警備員たちが写っていた。配信で顔を晒した私を守る為、警備会社から無償警護の打診が来たからお願いした。
警察はもう何か知らないうちに問答無用で来てた。
「アニーさん、私、手が空いちゃいました……」
シュクレが驚きのあまり呆然とした表情で私の方まで走ってきてそう報告してくれた。詠唱を組み合わせる事で必要な魔法をその場で作り出しちゃうリアルチートな彼女は、大規模戦の申し子だ。
防衛拠点を作るのにも、そこから敵を蹴散らすのにも、彼女の能力は必須……本来なら。
「本職すげー」
視線の先では、初期装備の男たちが神技のような連携で次々と拠点を増築している。彼らは普段IAFをプレイしていない建築関係と、職業は明かせないらしいけどやたらと拠点構築に詳しい人たちだ。
それでも普段なら資材とか溶接、凝固の時間どうすんねん問題があるからやっぱりシュクレが必要ってなるんだけど、これも解決。
「あの人、誰だったんでしょうね?」
「うん、野生の一般通過天才だと思っといて」
今日初めてIAFへログインしたであろうゴリゴリの初期装備プレイヤーが政府関係者(自称)を引き連れてシュクレと30分ぐらい話し込む。結果、彼女の詠唱をもとにした簡易対応表を作り上げた。
アバターがモロ本人の顔そのまんまだったからうっすら脳裏に今世紀最高と評される有名な物理学者の名前が浮かんだ気もするけど忘れよう。
「MP回復薬できましたー!」
外ではMP回復薬をワゴンに乗せて駆け回る、初期装備プレイヤーの声が飛び交っている。
「普通、こんなに大規模な人数を急に動かしても混乱するだけで大惨事になると思うんだけど……これが人類の本気ってやつなのかな」
初期装備マンズはMPが少ないから、詠唱の回数には制限がある。そこで、建築に詳しくない初期装備マンズがひたすらフランクフルトを焼きまくっていた。世界中の人が、私たちに協力してくれている。
1つの目標へ向かって、人類全体が澱みなく連携して戦場を支える光景に、思わず胸が熱くなった。
「でもこれ、これだけしてもらって失敗したら後が怖いですね」
「あはは」
心配そうな表情で呟くシュクレの頭を、私は笑って優しく撫でた。ちょっと不服そうに頬を膨らませている表情が可愛い。
「何が可笑しいんですか?」
「これが失敗したらさ、そもそも人類滅亡かもでしょ?」
私の質問に、シュクレは何を当然のことをと言った表情で頷いた。
「はい、だからこそこういう事態になっているわけで」
「だったらさ、死んだ後のことを計算に入れても意味ないじゃん」
「……フフっ」
私の言葉に、しばらくフリーズしたシュクレが小さく笑う。
「え、何か変なこと言った?」
「いえ、アニーさんはやっぱりアニーさんだなって」
「それどういういみー?」
「普通の人は、そこまで割り切って考えられないですよ。時と場合によってはそれを怖いと感じることもありますけど、今はすごく頼もしいです」
フォートシュロフの仮設拠点で、私は前線の状況と現実世界のSNSを見比べて思わず感嘆の声を上げる。
世界の危機という状況がそうさせるのか、配信は瞬く間に拡散され、それを大御所インフルエンサーがさらに押し広げた。あの配信は指数関数的に世界中を駆け巡り、IAFプレイヤー以外も少しでも力になろうと集結した。
試しに再生した動画には、誰でも知っている大企業のロゴを背に、杖を持った老齢の男性が写っている。
*「政府が全力で本体サーバーを探しているのは間違ありません。しかし、私が皆様にお伝えしたいのは、時間的猶予が無いということです」*
老人の声には微かに震えが混じっていたけど、その目には確固たる信念が宿っていた。
*「シマーズさんの配信で説明された内容はあくまで憶測ですが、一定の合理性が認められます。私は、人類が生存する可能性を少しでも高めるべく、彼らと、彼らに協力する全ての人を支援します」*
その言葉に呼応する様に、量販店や小売店から最新VR機器の無料配布が開始された。配送トラックはまるで救急車の様に優先されながら町中にVR機器を配り、それを誰も咎めなかった。
「家の周りもすごいことになってるし……」
自宅の監視カメラには、帯銃した警察官と物々しい装備の警備員たちが写っていた。配信で顔を晒した私を守る為、警備会社から無償警護の打診が来たからお願いした。
警察はもう何か知らないうちに問答無用で来てた。
「アニーさん、私、手が空いちゃいました……」
シュクレが驚きのあまり呆然とした表情で私の方まで走ってきてそう報告してくれた。詠唱を組み合わせる事で必要な魔法をその場で作り出しちゃうリアルチートな彼女は、大規模戦の申し子だ。
防衛拠点を作るのにも、そこから敵を蹴散らすのにも、彼女の能力は必須……本来なら。
「本職すげー」
視線の先では、初期装備の男たちが神技のような連携で次々と拠点を増築している。彼らは普段IAFをプレイしていない建築関係と、職業は明かせないらしいけどやたらと拠点構築に詳しい人たちだ。
それでも普段なら資材とか溶接、凝固の時間どうすんねん問題があるからやっぱりシュクレが必要ってなるんだけど、これも解決。
「あの人、誰だったんでしょうね?」
「うん、野生の一般通過天才だと思っといて」
今日初めてIAFへログインしたであろうゴリゴリの初期装備プレイヤーが政府関係者(自称)を引き連れてシュクレと30分ぐらい話し込む。結果、彼女の詠唱をもとにした簡易対応表を作り上げた。
アバターがモロ本人の顔そのまんまだったからうっすら脳裏に今世紀最高と評される有名な物理学者の名前が浮かんだ気もするけど忘れよう。
「MP回復薬できましたー!」
外ではMP回復薬をワゴンに乗せて駆け回る、初期装備プレイヤーの声が飛び交っている。
「普通、こんなに大規模な人数を急に動かしても混乱するだけで大惨事になると思うんだけど……これが人類の本気ってやつなのかな」
初期装備マンズはMPが少ないから、詠唱の回数には制限がある。そこで、建築に詳しくない初期装備マンズがひたすらフランクフルトを焼きまくっていた。世界中の人が、私たちに協力してくれている。
1つの目標へ向かって、人類全体が澱みなく連携して戦場を支える光景に、思わず胸が熱くなった。
「でもこれ、これだけしてもらって失敗したら後が怖いですね」
「あはは」
心配そうな表情で呟くシュクレの頭を、私は笑って優しく撫でた。ちょっと不服そうに頬を膨らませている表情が可愛い。
「何が可笑しいんですか?」
「これが失敗したらさ、そもそも人類滅亡かもでしょ?」
私の質問に、シュクレは何を当然のことをと言った表情で頷いた。
「はい、だからこそこういう事態になっているわけで」
「だったらさ、死んだ後のことを計算に入れても意味ないじゃん」
「……フフっ」
私の言葉に、しばらくフリーズしたシュクレが小さく笑う。
「え、何か変なこと言った?」
「いえ、アニーさんはやっぱりアニーさんだなって」
「それどういういみー?」
「普通の人は、そこまで割り切って考えられないですよ。時と場合によってはそれを怖いと感じることもありますけど、今はすごく頼もしいです」
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