【野生の暴君が現れた!】忍者令嬢はファンタジーVRMMOで無双する【慈悲はない】《殺戮のパイルバンカー》

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電脳暴君はまだまだ夢の中

作戦会議

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 あちこちから上がってくる進捗報告をウィンドウで確認しながら、私は仮説の会議スペースへ足を踏み入れた。すでに、作線に参加しているIAFの主要メンバーは集結している。

「皆早いね」

 ヨイニが頬を軽く掻きながら答えた。

「正直、結構びっくりしてる」

「それじゃあ、状況を整理しようか。イベントの防衛作戦の方はどんな感じ?」

 真剣な表情でシュクレが答える。

「拠点の増築と補修は、とんでもない速度で進んでいます。補修より増築する速度の方が早いぐらいで、AIの暴走さえなければ何世紀でも耐えられる勢いです」

 シュクレの言葉に、私は頷く。
 まぁ、AIの暴走とそれにともなう人類の危機なんて状況にならなければ、そもそもただのVRMMOゲームにこんなに人が来る事もなかったんだけど。

「幻夢境街の方も今の所は安定してる。実夢境界の方は?」

「問題ない」

 カタンが即答する。

「何せ向こうは魔銃が主流だからな武器さえあればレベル1でも火力は出せるし、守る街も少ない」

 剛輪禍が解放されてサーバーが連結される前まで、反対側のマップとは隔絶されていた。私たちが剣と魔法の文明を進めていたのと同じように、反対側では銃と魔法の文明が進んでいる。

 どちらも一長一短ではあるけれど、今の状況であれば確かに魔銃の方が防衛はしやすいだろう。

「じゃあ、後はこれからどれだけ剛輪禍の攻略にプレイヤーを回すかだよね。攻略方法の目処は立ってるの?」

「その件なんだけど……」

 ヨイニが難しい表情で会議室の壁にスクリーンショットを映し出す。そこには青白く輝く、バリアの様な物に守られた剛輪禍のランドマークが映し出された。

「何これずるい!!」

 私はバリアへ指を刺して憤慨する。どう考えても、どーー考えても運営側の防衛策だ。

「まぁでも、運営が対応したってことは、僕たちの考えが実際に有効だって事の証明でもあるよね」

 そんな私の様子にヨイニが苦笑い気味に答えた。

「でもよ、このバリアどうするだ? 仮に運営権限で耐久地無限とかになってたら俺たちじゃどうしようも無いぞ?」

 カタンが腕を組んで眉間にシワを寄せると、シュクレが小さく首を振ってそれを否定する。

「いいえ、前々から疑問だったんですが、IAF運営にはそこまでの権限は無い様です。このゲームが始祖AIの誕生したサーバーの上に無理やり造られた物で、最高権限を持っていません」

「つまりIAF運営が講じられる対策は全部、この世界の設定、法則を逸脱しないってこと?」

 私の質問にシュクレは大きく頷いて、言葉を続ける。

「このバリアは、他4都市を合わせた大規模な魔法陣によって成立しています。その為、各都市の最高権限を奪えば解除可能です」

「4都市っていうと、フォートシュロフ、オーディアス、エターナルシア、クロノシアか」

 シマーズさんの言葉にシュクレが頷く。

「そのうち、オーディアスは既にアニーさんが解放しています」

「え、そんな事したっけ?」

 私が首を傾げると、シュクレが続けた。

「この間オーディアスの地下ダンジョン攻略したじゃ無いですか? あの時に最高権限が委譲されているはずです」

「あーなるほどー」

「じゃあまずは、バリアを解除する為に残り3都市を攻略しないといけないわけだね」

 ヨイニの言葉に、シュクレが頷く。
 そこでカタンが手を挙げる。

「待て待て、あの規模のダンジョン攻略はぶっ続けてやっても半日以上かかるだろ。戦線はともかくとして、現実世界の方が3日も耐えられる保証は無いぞ」

「はい、なので私たちは3陣営に分かれます。私がエターナルシア、フォートシュロフはヨイニさん、そしてクロノシアはシマーズさんに」

「その間、私はどうすれば良い?」

「アニーさんはカタンさんと共に剛輪禍の攻略を進めてください。バリアはあくまでランドマークの前までなので」

 私の脳裏に、数日前に訪れた完全武装された剛輪禍の街並みが思い起こされる。あれを攻略するのはかなり骨が折れそうだ。

 でも全世界に向けてあれだけの啖呵を切ってしまった以上、泣き言なんて言ってられない。

「おっけー、任せてよ」

 私は余裕の笑みを浮かべてサムズアップで答えた。

「ただ、攻略メンバーをどうするかなんですが……」

 シュクレはやや俯きながら、視線を左右へと揺らす。その様子を見て、彼女の考えている事を大体察する。

 IAF最高難易度ダンジョン攻略は、もちろんソロでやってたら一生終わらない。相応に能力のあるメンバーを揃えなければならないけど、今、全戦力が防衛イベントへ傾けられていた。

 こういうのは私の役割だ。

「既存IAFメンバーは全員動員しよう」

「そ、そんなことしたら防衛線が崩壊するぞ?」

 私の発言に、シマーズさんが驚きすぎて裏返った声で反応する。周りの皆も、似た様な表情だ。

「良いんだよ、結局さ、防衛イベントは延命処置でしかないんだから。守りきれた所で現実世界が保たなかったら意味ないんだし」

「それは、そうだが……」

「余裕があるなら安全策も悪くはないんだけどさ、今は目的に対してオールインが最適解だよ」

 私の言葉に一瞬、会議室に静寂が訪れる。
 それを破ったのは、ヨイニだった。

「僕は賛成だよ、アニーの作戦はいつもびっくりするけど、いつも結果的には正解だったし」

 その言葉に、他の皆も頷いた。

「剛輪禍の攻略が完了する前に4都市が落ちるリスクはあるが……まぁ、結局の所、現実世界のタイムリミットがわからない訳だしな。確かに、それが最適解か。常人の発想とは思えないが」

 腕を組んでぶつぶついうカタン。

「私は、アニーさんを信じます」

 そう言って、小さく笑うシュクレ。

「周知の方は俺に任せてくれ」

 ニカッと笑ってサムズアップするシマーズさん。

「……皆、ありがとう。絶対、勝とうね」

 現実から逃げるように始めたこのゲーム、始めた時はまさかここで世界の命運を賭けた戦いをする事になるなんて思ってもいなかった。

「今のうちに世界を救った後のスピーチ内容も考えておいた方が良いんじゃないか?」

 皮肉屋のカタンが口角を片方だけ挙げる。

「せっかくアニーの親御さんとも仲良くなれたんだし、こんな所で終われないよ」

 ヨイニがそう言って、優しく私の頭を撫でた。

「そう言えばそっか、この事件が解決したら俺のチャンネルもすごい事になるな!」

 いつも空気を和ませてくれるシマーズさん。

「私は、アニーさんと出会うまで、ずっと生きづらさを感じていました。でも、今はゲームでも、現実でも、もっと先を知りたいと思っています」

 シュクレが力強く頷いた。

「じゃあ、皆でちょっと世界救っちゃおうか!」

 私はそう言って、腕を掲げた。
 皆もそれに合わせて腕を重ねる。

「おう!」

「はい!」
 
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