【野生の暴君が現れた!】忍者令嬢はファンタジーVRMMOで無双する【慈悲はない】《殺戮のパイルバンカー》

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電脳暴君はまだまだ夢の中

剛輪禍攻略

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 カオス。もし剛輪禍を一言で形容する言葉があるなら、これほど適した言葉もないだろう。
 明治時代を彷彿とさせる古風な街並みと、プレイヤーの建てた奇怪で風変わりな建築物が雑然と混在している。その中に、運営が配置したと思われる近代兵器が無造作に散りばめられ、街全体が統一感を失った異様な光景を作り出していた。

「うーん、困った困った」

 砲撃音が遠くから響き、空気には焦げた金属の匂いが漂う。その中で、街の中心に建てられた細長いビルからレーザーが容赦無く照射され、街並みの一部を抉り取っていた。

 剛輪禍の街並みを視界の端に捕らえながら、先遣隊から上がってきた報告を確認して首をひねる。

「どうだった?」

 赤髪をツーブロックにした青年風のプレイヤー、カタンが険しい表情で剛輪禍の先を睨みつける。

「防衛陣地そのものは1回だけなら結構いい確率でぶち抜けるけど、やっぱり問題はあのレーザーだよねー」

 そう言って、私もカタンが熱い視線を送る先へ目をむける。そこには、剛輪禍のモニュメントを守るように建てられた細長いビルが立っていた。

 ビルの先端には大きな目玉のような機械が取り付けられていて、そこからレーザーが照射される。

「あれ、なんとかしてくれない? あんなの、高所取ったMP無限のシュクレが一方的に魔法撃ちまくってるみたいなもんじゃん」

「いいぞ」

「え?」

 ちょっと冗談で言ってみたら、カタンは険しい表情をしながらも即答で頷いた。てっきりいつものキレ芸が返ってくると思っていたから、予想外の返事に思わず聞き返してしまった。

「お前なぁ……」

 私の反応にカタンは深くため息をついてこっちを睨んでくる。

「え、マジで行けるの?」

「まぁ、お前たちメメントモリが1回だけ防衛陣地まで辿り着ければ良いんだろ? それなら俺らアンチ・メメントモリがおとりになればなんとかなるだろ」

「あー、でも良いの?」

「もちろん癪ではある……が、それで俺たちが負ければ文字通り世界の終わる。それだけの話だ」

「おー、ありがとうー」

 レーザーの囮にするということは、散兵戦術で全方位からレーダーへ突っ込むってことだ。メメントモリとアンチ・メメントモリどっちでも、そんな事をしたら壊滅する。

 純粋にモニュメントにたどり着いた時、どっちの方が攻略に有利なるかで言えば私のクランだ。カタンはこの瞬間に、自分のクランを捨て駒にする決断をスルッとしてしまった。

「おう」

 カタンはそういうと、ウィンドウを操作してクランメンバーへ指示を出し始める。だけど、ふと何か思いついたようにニヤリと笑って視線を外して私へ向かい合った。

「そうだな……その代わり、2つだけ約束してもらおうか」

「うげ……」

 本来、メメントモリとアンチ・メメントモリはその名前からも分かる通り犬猿の仲だ。何を言われるかわからない。

「モニュメント前まで、お前は戦うな」

「え、なんでー?」

「お前のビルド、継戦能力ゴミだろ」

「うげ、バレてたんだ……」

「このゲームに万能なビルドなんて存在しないからな。お前だってそれは例外じゃない」

 カタンはそこまで言って、悩む様に額を抑えた。

「まぁ、その弱点を悪辣な作戦と圧倒的な瞬間火力で粉砕してくるのが厄介なんだが……」

「えへへーそれほどでも?」

「うっるせぇ褒めてねぇわ!」

 そう、私のビルドはとにかくロマンスキルのパイルバンカーをひたすら打ち込むのがコンセプトだ。
 パイルバンカーの消費MPがそこそこ高いのと、そもそも本体が格闘、魔法の二極ビルドだから、最大MPがそこまで高くない。

 色々、補填はしているけどこれで最大MPにリソースを先すぎるとそもそもビルドコンセプトが崩壊するから継戦能力に関しては不治の病だ。

「最難関はどう考えてもバリアの先のモニュメントだ。最終局面でMPが足りなくて戦えないなんて洒落にならないだろ」

「それは、そうだけど……それで突破できなかったら本末転倒じゃん」

「黙って俺たちを信じろ」

 それは、私にはとても難しいことだった。誰も信じないし、期待もしない。その代わり好き勝手にこのゲームをプレイしていた。
 だって信じて裏切られるは凄く怖いし、そもそも他人は動かせるものじゃないから。だけど今、どうしても誰かを頼らないといけない状況に追い込まれて、実際に協力して。

 誰かを頼るのって、こんなに頼もしい気持ちになるんだね。

「……分かった」

 だけど素直にいうのはちょっと恥ずかしくて、そっぽを向きながら渋々とい言った体で頷いた。
 カタンは私の返事に満足したのか、乱暴に私の頭をボンボンと叩いて言葉を続けた。

「よし、それじゃあ作戦開始だ。メメントモリの突撃タイミングもこっちから連絡するから、それまでは隠れてろよ」

「なーでーるーなー!」

 私はそれを手で払いのける。

「そう言えば、もう一個は?」

「……勝てよ」

「当たりまえ!」

 私たちはお互いの拳をぶつけ合った。
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