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電脳暴君はまだまだ夢の中
凡人と天才
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遠くで爆発音が響き、地面がかすかに震える。視界の端で、レーザーが街並みを焦がしていた。
剛輪禍の中央に位置する巨大なモニュメント、その中に私たちの目的である女神像がある。それを守るように、モニュメントの前に立つ細長いビル。その頂点に取り付けられた目玉がまるで私たちを見下すように青く輝いている。
*「合図があるまで、絶対に動くなよ」*
*「わかってるよー」*
カタンの率いるアンチ・メメントモリ……言いにくいな、もうアンメモでいいっか。アンメモは剛輪禍を薄く広く取り囲んだ。
*「じゃあ、また後でな」*
カタンが合図を送ると、アンメモのクランメンバーが一斉に突撃を開始する。目玉から放たれる青白いレーザーが起動し、プレイヤーを次々と焼き払っていく。防衛陣地から飛んでくる機関銃みたいな攻撃が貫いていく。
*「ねぇ、本当に大丈夫? ちょっとぐらい手伝おっか?」*
*「秒で約束忘れてんじゃねぇ! 何が分かっただ!!」*
不安になってチャットを送ってみると、いつものキレ芸で返されてしまった。でも、戦力を分散したことでレーザーの狙いは分散しているけど、代わりにこの厚みでは防衛陣地が突破できない。
*「……まぁ、見てろよ。俺たちにはお前らみたいな発想や、能力はない、言ってしまえばただの凡人だ。だがな」*
レーザーが剛輪禍の街で瞬く。
また、プレイヤーが吹き飛ばされていく。
*「天才だって、1人じゃ大したことできねぇ! 俺たちは、片方じゃダメなんだ。両方が揃って、初めて本当の力を発揮するんだ! それをこの状況と、シュクレが教えてくれた! そしてヨイニが橋をかけてくれた!」*
カタンの荒い息と、レーザーの発射音が混じり合う。彼のボルテージが上がるのに呼応するように、少しずつ前線が押し上げられていく。
レーザーにも、機関銃にもリキャストタイムがある。全方位から波のように迫るプレイヤーたちが、少しずつ仲間の屍を超えていった。
それはまるで、満ち潮のように。
*「なぁ! 暴君! 俺たちの宿敵! 俺はムカついてんだ! 俺たちの戦いに水を刺した運営に! AIに! だからよ! 見せてやろうぜ! 俺らに喧嘩を売ったらどうなるかをよぉ!」*
前線の一角で、レーザーとも機関銃とも違う爆発音が響いた。爆心地に居たのは……大きな、大きな黒いドラゴンだった。
「べへモス……!」
それは、カタン……アンメモが保有する虎の子だ。IAFで確認されているドラゴンの中で唯一、空を飛べない。その引き換えに圧倒的な戦闘能力を持つ彼らの最大戦力だ。
でも、以前見たべへモスとは違う。赤黒い甲殻をしていたはずのその体は、今や金属質の光沢を放ち、機械的な異形の印象を受ける。
「そっか、強化外骨格!」
数ヶ月前のイベント――シティ・リビルド・チャレンジ。最高難易度をクリアしたクランにだけドロップした貴重な動力コア。
アンメモは、べへモスの装甲に組み込んだんだ!
「GIIIIIIIIAAAAALALAAAAAAAAAA!!!!」
べへモスの咆哮が剛輪禍を揺らす。
べへモスがその巨大な足を振り下ろすたびに地面が砕け、煙と瓦礫が舞い上がった。防衛陣地の一角を突き破り、機関銃の弾丸がべへモスへ集中するけど、びくともしない。
だけど、レーザーが装甲を焦がし、金属質の光沢が失われていくのがわかる。
*「メメントモリ! あとは頼んだぞ! それと暴君! お前は約束を守れよ!」*
カタンから合図が飛ぶ。同時に、べへモスが目玉のビルへと突撃して、押し倒した。
「……」
私が、動力コアをドラゴンに使わなかったのには理由があった。ドラゴンは所有者のゲーム内での行動を学習してその人格やパラメータが決定される。いわば、自分の半身なんだ。
それに、HPが0になった場合のペナルティも重い。3回目以降は完全ロストの危険性だってある。
カタンの言葉が、行動が、覚悟が。私の小さい胸に、溢れんばかりの熱い炎を灯すのが分かった。
*「メメントモリ諸君、アイツらは見事に役目を果たし切ったぞ」*
私はボイスチャットをメメントモリに切り替えて、自然と上がってしまう口角を抑えずに語りかけた。
*「悔しいが、見事だったな」*
*「アンメモにしてはやるじゃん!」*
私の言葉にいくつかのコメントが返ってくる。それには直接反応しないで、私は話を続けた。
*「もしこれで私たちが失敗したら、このイベントはどっちの勝ちかな?」*
*「ここまでお膳立てされて失敗したら、俺たちの負けだろうな」*
*「これで負けたらアイツらにありえないほど煽られるぞ!!」*
*「じゃあ、分かってるよね?」*
*「そうだな! アイツらにだけは負けられねぇ!」*
*「やるぞー!」*
剛輪禍の中央に位置する巨大なモニュメント、その中に私たちの目的である女神像がある。それを守るように、モニュメントの前に立つ細長いビル。その頂点に取り付けられた目玉がまるで私たちを見下すように青く輝いている。
*「合図があるまで、絶対に動くなよ」*
*「わかってるよー」*
カタンの率いるアンチ・メメントモリ……言いにくいな、もうアンメモでいいっか。アンメモは剛輪禍を薄く広く取り囲んだ。
*「じゃあ、また後でな」*
カタンが合図を送ると、アンメモのクランメンバーが一斉に突撃を開始する。目玉から放たれる青白いレーザーが起動し、プレイヤーを次々と焼き払っていく。防衛陣地から飛んでくる機関銃みたいな攻撃が貫いていく。
*「ねぇ、本当に大丈夫? ちょっとぐらい手伝おっか?」*
*「秒で約束忘れてんじゃねぇ! 何が分かっただ!!」*
不安になってチャットを送ってみると、いつものキレ芸で返されてしまった。でも、戦力を分散したことでレーザーの狙いは分散しているけど、代わりにこの厚みでは防衛陣地が突破できない。
*「……まぁ、見てろよ。俺たちにはお前らみたいな発想や、能力はない、言ってしまえばただの凡人だ。だがな」*
レーザーが剛輪禍の街で瞬く。
また、プレイヤーが吹き飛ばされていく。
*「天才だって、1人じゃ大したことできねぇ! 俺たちは、片方じゃダメなんだ。両方が揃って、初めて本当の力を発揮するんだ! それをこの状況と、シュクレが教えてくれた! そしてヨイニが橋をかけてくれた!」*
カタンの荒い息と、レーザーの発射音が混じり合う。彼のボルテージが上がるのに呼応するように、少しずつ前線が押し上げられていく。
レーザーにも、機関銃にもリキャストタイムがある。全方位から波のように迫るプレイヤーたちが、少しずつ仲間の屍を超えていった。
それはまるで、満ち潮のように。
*「なぁ! 暴君! 俺たちの宿敵! 俺はムカついてんだ! 俺たちの戦いに水を刺した運営に! AIに! だからよ! 見せてやろうぜ! 俺らに喧嘩を売ったらどうなるかをよぉ!」*
前線の一角で、レーザーとも機関銃とも違う爆発音が響いた。爆心地に居たのは……大きな、大きな黒いドラゴンだった。
「べへモス……!」
それは、カタン……アンメモが保有する虎の子だ。IAFで確認されているドラゴンの中で唯一、空を飛べない。その引き換えに圧倒的な戦闘能力を持つ彼らの最大戦力だ。
でも、以前見たべへモスとは違う。赤黒い甲殻をしていたはずのその体は、今や金属質の光沢を放ち、機械的な異形の印象を受ける。
「そっか、強化外骨格!」
数ヶ月前のイベント――シティ・リビルド・チャレンジ。最高難易度をクリアしたクランにだけドロップした貴重な動力コア。
アンメモは、べへモスの装甲に組み込んだんだ!
「GIIIIIIIIAAAAALALAAAAAAAAAA!!!!」
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べへモスがその巨大な足を振り下ろすたびに地面が砕け、煙と瓦礫が舞い上がった。防衛陣地の一角を突き破り、機関銃の弾丸がべへモスへ集中するけど、びくともしない。
だけど、レーザーが装甲を焦がし、金属質の光沢が失われていくのがわかる。
*「メメントモリ! あとは頼んだぞ! それと暴君! お前は約束を守れよ!」*
カタンから合図が飛ぶ。同時に、べへモスが目玉のビルへと突撃して、押し倒した。
「……」
私が、動力コアをドラゴンに使わなかったのには理由があった。ドラゴンは所有者のゲーム内での行動を学習してその人格やパラメータが決定される。いわば、自分の半身なんだ。
それに、HPが0になった場合のペナルティも重い。3回目以降は完全ロストの危険性だってある。
カタンの言葉が、行動が、覚悟が。私の小さい胸に、溢れんばかりの熱い炎を灯すのが分かった。
*「メメントモリ諸君、アイツらは見事に役目を果たし切ったぞ」*
私はボイスチャットをメメントモリに切り替えて、自然と上がってしまう口角を抑えずに語りかけた。
*「悔しいが、見事だったな」*
*「アンメモにしてはやるじゃん!」*
私の言葉にいくつかのコメントが返ってくる。それには直接反応しないで、私は話を続けた。
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