【野生の暴君が現れた!】忍者令嬢はファンタジーVRMMOで無双する【慈悲はない】《殺戮のパイルバンカー》

オモチモチモチモチモチオモチ

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電脳暴君はまだまだ夢の中

託される思い

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「アニーちゃん!」

 騒然とした戦場の真ん中で、私を呼ぶ声が空高くから聞こえる。視線を向けると、巨大なヘリコプターが近づいてきた。

「ニースズさん!」

 その声はメメントモリの技術担当、ニースズさんだった。彼女の乗るヘリコプターには、巨大な異形の鎧が吊るされている。その巨体は、戦場の爆音を飲み込むかのように圧倒的な存在感を放っていた。

「間に合ってよかった! 受け取って!」

 そういうと、ヘリコプターから鎧……ティラノフライトがパージされる。私は降下するそれへ向かって飛んだ。

「トンズラ!」

 本来は逃亡用のスキルを、上方向に。落下速度から逆算してコクピットの真上へ移動する。

 そのまま装甲の端を掴んで乗り込む。

「メインシステム……戦闘モード起動します」

 無機質な機械音が響き、ティラノフライトがゆっくりと目覚めるように動き出す。コクピットのモニターが次々と立ち上がり、システムチェックの音が耳に心地良いリズムを刻む。

ビスコフィールド・ジェネレータViscoField Generator起動!」

 ティラノフライトの翼が滑らかに展開され、周囲の空間が揺れる。空気中の粘性係数が爆発的に上昇し、落下速度が急激に低下した。まるで、空そのものを掴んで操るようだ。

 ブースターが点火し、ティラノフライトが地面へと静かに降り立つ。着地の衝撃はほとんどなくて、その優雅な動作に思わず口角が上がる。

「おっしゃー! いくぞー!」

 ブースターが再び吠える。空気を切り裂く音と共に、私は塔内部へ向かって一気に突撃した。

「うっわ中身完全に別物になってるじゃん……」

 前に来た時は豪奢な装飾がされた宗教施設っぽい雰囲気だったのに、今はもう別物に作り替えられていた。

 暗闇の中、広がるのは巨大な円筒状の空間。内壁には無数の発光ラインが網目状に走り、頭全体が生物の神経系のように脈動している。
 中心には垂直に伸びる一本の巨大な柱があって、無数の足場みたいなのが螺旋状に浮遊していた。

「侵入者確認…… 脅威度B、排除します」

 システムアラートと共に、周囲の足場が動き始めた。その一角がカシャリと音を立ててスライドし、中からの黒のスリムな機体……シシの先がまるでカマキリの鎌のように鋭利に光っている。

 続きて、壁面から迫り出してきた重厚な装甲の機体。両肩のキャノン方がゆっくりとこちらを向き、砲口が輝きを帯びた。

「キハッ!」

 ブースターを全開にして、機体を急上昇させる。敵の砲撃が床を砕き、暴風がティラノフライトを押し上げる。

「その程度で!」

 スリムな黒い機体が剣のような四肢を広げ、高速で迫ってきた。私は肩から大鉈オートホーンマチェーテを引き抜いて迎え打つ。

 轟音と共に火花が散り、刃がぶつかり合った。

「私とティラノフライトが!」

 軽量な敵の刃が、大鉈の重みを受けきれず、粉々に砕ける。その勢いのまま、ティラノフライトの一撃が敵機の胴体を切り裂き、スリムな機体は火花を散らしながら螺旋状の足場の間を落下していった。

「止められると!」

 すかさず放たれる砲撃型の巨砲。その弾丸をもう肩の方の肩から抜き出した大鉈で真っ2つに叩き切る。

 爆風が視界を奪い、次の瞬間、足場の端を踏み切りながら急接近。大鉈の刃を自動で研ぎ直すギミックがギャシャリと音を立てた。

「思うなよ!」

 巨大な刃が再び輝きを放ち、重厚な敵機を一刀のもとに断ち切った。






 ブースターのエンジン音が唸りを上げる中、私はティラノフライトを駆りながら、塔内部の戦闘を繰り広げていた。次々と襲いかかる敵機たち、いくら倒しても、途切れる気配はない。

「あぁもう! こいつら飽きた!」

 砕け散る機体の破片を振り払い、ブースターを全開にしてさらに上層へと駆け上がる。

 だけど、コクピット内の燃料ゲージをみて嫌な感覚が胸を締め付ける。

「時間がない……!」

 ティラノフライトは絶大な戦闘能力と引き換えに、燃費が終わり散らかしている。ここまでの消費量からして、このままでは女神像へたどり着く前に敵の数に押しつぶされてしまう。

 そんな時、崩壊した壁の向こうから光の柱が見えた。

「アニーさん!」

 シュクレの声だ。続いて、崩壊した壁の隙間から無数の光弾が放たれ、穴を拡張する。

 開けた視界の先には、空飛ぶムカデ。彼女ドラゴン、エアロ・アノマロカリスの姿があった。
 そして、その背中には蠍型の専用機、ティタノス・Sが乗っている。昆虫が嫌いなはずなのに、なぜか彼女の周りにはそれ系の武装やペットが集まってしまう。かわいそうに。

「シュクレ!」

 返事は追加の光弾だった。広がった穴の中に空飛ぶムカデが塔の内部へスルリと入り、周囲のロボットを光弾で粉砕していく。

 粉塵が舞い上がる中、さらに無数の魔法陣が浮かび上がり、敵の動きを封じる氷の鎖が塔内部を覆う。

「アニーさんは上へ急いでください! 原子炉の制御がもう1時間も持たないそうです!」

 動画で協力を募ってから、明らかに民間人じゃない人の協力もちらほら受けていた。多分、そこからの情報だろう。

「でも、1人じゃ……」

 私がそこまでいうと、シュクレは笑って頷く。

「大丈夫です! 大規模戦は私の得意とするところです!」

 瓦礫が崩れ落ちる音を背に、シュクレが駆るティタノスの周囲に魔法陣が展開する。その輝きに後押しされるように、私は上層を目指してティラノフライトを飛ばした。

 さらに上層へと辿り着いたとき、突如、大きな爆発音が響いた。振り返ると、瓦礫の山の中から巨大な投擲武器が放たれ、敵の群れを吹き飛ばしていく。

「アニーちゃん!」

 その声と共に、シマーズさんのドラゴン、シャガファルクに乗る巨大なロボットが姿を現した。片手には巨大な縦、もう片方にはランチャーを構え、敵を一掃しながらこちらに駆け寄ってくる。

 シャガファルクはIAF最速のドラゴンだ。多分、シュクレが開けた穴から入ってきて追いついたのだろう。

「シマーズさん!」

「なんとか間に合ったな! ここは俺に任せて先へ行け!」

 シマーズさんは余裕たっぷりに笑みを浮かべながら、視界の奥に控える敵ロボット群を指差す。

「俺のチャンネル、今すっごい盛り上がってるんだよ。アニーちゃんがラスボスぶっ倒して伝説作るところ、ちゃんと撮っとくからな!」

 そういうと、彼から小さな撮影子機が飛んできた。

「……あはは、任せて!」

 シマーズさんから援護射撃が放たれ、さらに進む道を切り開いていく。だけど、視界の先にはさらにロボットがワラワラと湧いてくる。

「ヨイニ……」

 思わず、縋るように言葉が漏れる。次の瞬間、狼の遠吠えのような音が塔全体に響いて、敵機の動きが一瞬だけ止まる。

*「アニー、お待たせ」*

*「高周波パルス。敵の行動を一時的に止められる」*

 ボイスチャットからヨイニの声が聞こえた。

*「完成、してたんだ……!」*

 機動力ほほぼ持たない、遠距離、妨害特化の専用武装。まだ完成してないと聞いていたけど、この攻撃は間違いない。

*「まだ、まともに動けないけどね! アニーは先に進んで! 道は僕たちが切り開く!」*

 シュクレ、シマーズさん……それに、ヨイニ。皆が私を信じてくれる。私なんか、ただ好きにゲームを楽しんでいただけなのに。
 今は、こんなにも沢山の人から頼られている。その期待には、応えなきゃね! 私は思いを新たに、ブースターを再び全開にして先を急ぐ。
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