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第1章
第3話 自律型AI(『自律しているとは言っておりませんわ』)
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――宝条家の方々と別れて数時間後。
ここは施設から近い――市街地からほんの少し離れたところにある国営公園の中。そして今いる場所から見えるのは、大きく口を開けた洞窟、いわゆるダンジョンだ。
無論、普段施設に軟禁――隔離されてる身としては、こんな夜中にこんな場所にいてはいけない。ダンジョンなんて危険なところなんて尚更だ。バレたら大目玉……仕方ないんだ、誰だって新しい道具を貰ったら試さずにはいられないもの。
「しかし結構人がいるな……夜中でも探索する人が多いのか?」
周囲に何人か人がいるが幸いこちらに気付いている人はいないし、そのまま入口までたどり着けるだろう。
できればこのまま誰にも気付かれずに入りたい。なぜなら……男の俺が夜更けに1人でいたら大変なことになる。変態なことに。
「しまった、段ボールを持ってくればよかったな……」
それさえあればいくらでも身を隠せたというのに。
今の主な持ち物は、フランから貰った『フランバスター』と自律型AIサポートドローンのランチョン。
こいつらの性能を実践で確かめるために、施設から抜け出してきたのだ!
「さて、まずはうまく潜入できるかだが……」
ここで俺のスニークスキル発動……なんて便利ものは残念ながらない。
ベアトリーチェさんが言っていたように、俺のステータスは戦闘向きではない。パッと見は。
「大丈夫、クセになってんだ。音殺して動くの……」
……。
……。
……。
「ふぅ~……」
どうやら誰にも気付かれずに潜入できた様子。
内部には誰もいない。
「さて、早速起動してみますか!」
言いながらペンギンの股の部分にあるスイッチを押す。なんでこんなとこに作ったんだよ。
「『……ふぁ? お、おはようございますですわ――ペン』」
「おはよう。語尾が渋滞してるけど大丈夫?」
言語モデルがフランチェスカさんなのか知らんけど……寄せるならペンギンか彼女かどっちかだけにした方がいいと思う。
「『こんな夜更けにいかがしましたか? まさかわたくしの声をお聞きしたく――』」
「ダンジョン来たからさ、サポート頼むよ」
AIの癖に、やけに余計な言葉が多いな。いやAIってこんなもんだっけ?
「『……は?』」
「だから、ダンジョンに来たから。ランチョンの性能を知りたいんだ」
「『お、おおおおお待ちくださいませ! まさかお1人でぇぇっ!?』」
「そうだよ。こんな夜中に付き合ってくれる友人もいないし、ましてや先生たちが許すわけ無いだろ?」
施設には俺含めて6人の男がいるが……まぁ、アレらとは気が合わない。
「『り、凜音様の近くのダンジョンと言えば……まさか国営ダンジョンでは!?』」
「ん? よくわからんけど、『平成記念公園』の中にあるダンジョンだよ」
「『Bランクぅぅ! そこは熟練探索者がしっかり準備して行く難易度の高いダンジョンですわぁぁぁ! しかも国が資源として管理している国営ダンジョンですぅぅぅ! 法に触れて――』」
「むむ、やかましいぞ。お忍びなんだから……黙って付いてこい」
「『ひゃい♡』」
全く、最近のAIときたら……語尾も忘れてるぞ!
「で、国営ダンジョンだってことを知ってるってことは、その他の情報もわかるのか?」
「『もちろん、蓄えられた膨大なデータベースにはダンジョンの情報も含まれていますわ――ぺん! ここは先程も言いましたがランクB、ミノタウルス種が巣食うダンジョンですの。魔法はほとんど使ってきませんが、肉弾戦特化していると言われておりとっても危険ですわ――ペン!』」
おお、なかなか便利じゃないか、ランチョン。
ランクBといえばSからEでランク付けされる難易度の上から3番目。試し打ちにはもってこいだ。
「『……正直、今の凜音様には荷が重い相手かとペン』」
「……」
そう、俺のステータスは戦闘向きじゃない。
しかしそれは古い情報だ。
「俺のステータス、どこまで知っている?」
「『……無属性を除き、各基本魔法のレベルが1。聖句は“頭を垂れろ”、固有スキルは常時発動型スキルの『絶倫』ということですわペン』」
聖句とは魔法を使う合言葉のようなもので、固有スキルと同時に生まれた時に与えられる、とされている。
固有スキル以外にも誰もが使うことのできる『基本魔法』というのもあり、各属性として表れる。『身体強化』なんかは基本魔法、『無属性魔法』の1つだ。
残念ながら俺の固有スキルは戦い向きのスキルではなかった。さらに、『基本魔法』の適性も1。16年かけてこれじゃあ、ベアトリーチェさんが言うようにとても大成できるものではない。
ここまでは。
「ふっふっふ、喜べ! この姿を見せるのはお前が初めてだ!」
「『ふへっ!? 凜音様の初めての相手ですの!? わたくしがっ!?』」
「キミ、マジで情緒不安定すぎない?」
まぁいい。
「“頭を垂れろ”“汝ら導く”『魔力武装!』」
ランチョンも知らない聖句を唱え、2つめの固有スキルを発動する。
その瞬間、黒い外套が現れ身を包む。鈍い銀色に輝くマスクが鼻から上を隠す。既に着ていた衣服すら黒に染まる。
体に漲る力は普段とは比べ物にならず、全能感さえ覚える。
「……みんなには、内緒だぞ?」
「『す、素敵でしゅわぁ~♡』」
ペンギンの目がハートになっている気がする……のを無視し、目を凝らしてよく見るとペンギンの頭から魔力が伸び、外へと向かっていっているのわかる。
この『魔力武装』時は、簡単に言えば身体能力や感覚が超強化されると言う訳だ。
「『まさか本当に第2覚醒をされているとはペン。むむ? あちらにモンスターの気配を察知しましたわ――ペン!』」
タイミング良く敵が現れたようだ……というかこれほど騒いでいれば当たり前か。
「ブモォ……! ブモォォォォ!!!」
「『ランクB、ハイミノタウルスですわ――ペン! 通常種よりも更に強化された肉体が驚異的、突進攻撃にはお気をつけを――ペン!』」
ふむ。
「『ちょ――凜音様!?』」
「ブモォォォ――ブモ?」
眼と眼が会った瞬間に突進してきた牛を、何の苦も無く片手で止める。ついでに『魔力武装』の能力チェックとも思ったが、役者不足だったようだ。
「しかし、鋼のような筋肉はなかなか強度がありそうだ! この『フランバスター』の試し切り相手に不足なし!」
衣服同様、武器にも『魔力武装』が適用され、黒く輝いている剣を構える。
「『凜音様の魔力がわた――剣に入って……これはもはやセッ◯ス! セッ◯スですわぁ~~~!』」
気の抜けるようなことは言わないで欲しい。
「たぁっ!」
「ブ――もぉっ……?」
ミノタウルスの正面、頭から縦に斬りつけると……何の抵抗もなく左右に別れた。
「うん、やっぱりそこらの剣とは魔力の通りが違う! これは素晴らしい! フランチェスカさんにお礼を言わなきゃだな!」
「『あっ♡ あへぇ~……♡ イキました……イキましたわぁ~……♡』」
……確かにミノタウルスは逝ったけども。さっきからランチョンの様子がおかしいぞ。
「ランチョン? 大丈夫?」
「――はっ!? コホン。凜音様、試し切りはもう十分ではないでしょうかペン。ここは国営ダンジョンですので侵入してるのがバレたら問題ですわ――ペン」
急に冷静になりやがって。さすがAI。
「そうだな。俺も施設を抜け出してるのがバレると怒られるし……今日は戻るか」
しかし、施設に戻った俺を待ち受けていたのは――施設長よりも恐ろしい存在だった。
ここは施設から近い――市街地からほんの少し離れたところにある国営公園の中。そして今いる場所から見えるのは、大きく口を開けた洞窟、いわゆるダンジョンだ。
無論、普段施設に軟禁――隔離されてる身としては、こんな夜中にこんな場所にいてはいけない。ダンジョンなんて危険なところなんて尚更だ。バレたら大目玉……仕方ないんだ、誰だって新しい道具を貰ったら試さずにはいられないもの。
「しかし結構人がいるな……夜中でも探索する人が多いのか?」
周囲に何人か人がいるが幸いこちらに気付いている人はいないし、そのまま入口までたどり着けるだろう。
できればこのまま誰にも気付かれずに入りたい。なぜなら……男の俺が夜更けに1人でいたら大変なことになる。変態なことに。
「しまった、段ボールを持ってくればよかったな……」
それさえあればいくらでも身を隠せたというのに。
今の主な持ち物は、フランから貰った『フランバスター』と自律型AIサポートドローンのランチョン。
こいつらの性能を実践で確かめるために、施設から抜け出してきたのだ!
「さて、まずはうまく潜入できるかだが……」
ここで俺のスニークスキル発動……なんて便利ものは残念ながらない。
ベアトリーチェさんが言っていたように、俺のステータスは戦闘向きではない。パッと見は。
「大丈夫、クセになってんだ。音殺して動くの……」
……。
……。
……。
「ふぅ~……」
どうやら誰にも気付かれずに潜入できた様子。
内部には誰もいない。
「さて、早速起動してみますか!」
言いながらペンギンの股の部分にあるスイッチを押す。なんでこんなとこに作ったんだよ。
「『……ふぁ? お、おはようございますですわ――ペン』」
「おはよう。語尾が渋滞してるけど大丈夫?」
言語モデルがフランチェスカさんなのか知らんけど……寄せるならペンギンか彼女かどっちかだけにした方がいいと思う。
「『こんな夜更けにいかがしましたか? まさかわたくしの声をお聞きしたく――』」
「ダンジョン来たからさ、サポート頼むよ」
AIの癖に、やけに余計な言葉が多いな。いやAIってこんなもんだっけ?
「『……は?』」
「だから、ダンジョンに来たから。ランチョンの性能を知りたいんだ」
「『お、おおおおお待ちくださいませ! まさかお1人でぇぇっ!?』」
「そうだよ。こんな夜中に付き合ってくれる友人もいないし、ましてや先生たちが許すわけ無いだろ?」
施設には俺含めて6人の男がいるが……まぁ、アレらとは気が合わない。
「『り、凜音様の近くのダンジョンと言えば……まさか国営ダンジョンでは!?』」
「ん? よくわからんけど、『平成記念公園』の中にあるダンジョンだよ」
「『Bランクぅぅ! そこは熟練探索者がしっかり準備して行く難易度の高いダンジョンですわぁぁぁ! しかも国が資源として管理している国営ダンジョンですぅぅぅ! 法に触れて――』」
「むむ、やかましいぞ。お忍びなんだから……黙って付いてこい」
「『ひゃい♡』」
全く、最近のAIときたら……語尾も忘れてるぞ!
「で、国営ダンジョンだってことを知ってるってことは、その他の情報もわかるのか?」
「『もちろん、蓄えられた膨大なデータベースにはダンジョンの情報も含まれていますわ――ぺん! ここは先程も言いましたがランクB、ミノタウルス種が巣食うダンジョンですの。魔法はほとんど使ってきませんが、肉弾戦特化していると言われておりとっても危険ですわ――ペン!』」
おお、なかなか便利じゃないか、ランチョン。
ランクBといえばSからEでランク付けされる難易度の上から3番目。試し打ちにはもってこいだ。
「『……正直、今の凜音様には荷が重い相手かとペン』」
「……」
そう、俺のステータスは戦闘向きじゃない。
しかしそれは古い情報だ。
「俺のステータス、どこまで知っている?」
「『……無属性を除き、各基本魔法のレベルが1。聖句は“頭を垂れろ”、固有スキルは常時発動型スキルの『絶倫』ということですわペン』」
聖句とは魔法を使う合言葉のようなもので、固有スキルと同時に生まれた時に与えられる、とされている。
固有スキル以外にも誰もが使うことのできる『基本魔法』というのもあり、各属性として表れる。『身体強化』なんかは基本魔法、『無属性魔法』の1つだ。
残念ながら俺の固有スキルは戦い向きのスキルではなかった。さらに、『基本魔法』の適性も1。16年かけてこれじゃあ、ベアトリーチェさんが言うようにとても大成できるものではない。
ここまでは。
「ふっふっふ、喜べ! この姿を見せるのはお前が初めてだ!」
「『ふへっ!? 凜音様の初めての相手ですの!? わたくしがっ!?』」
「キミ、マジで情緒不安定すぎない?」
まぁいい。
「“頭を垂れろ”“汝ら導く”『魔力武装!』」
ランチョンも知らない聖句を唱え、2つめの固有スキルを発動する。
その瞬間、黒い外套が現れ身を包む。鈍い銀色に輝くマスクが鼻から上を隠す。既に着ていた衣服すら黒に染まる。
体に漲る力は普段とは比べ物にならず、全能感さえ覚える。
「……みんなには、内緒だぞ?」
「『す、素敵でしゅわぁ~♡』」
ペンギンの目がハートになっている気がする……のを無視し、目を凝らしてよく見るとペンギンの頭から魔力が伸び、外へと向かっていっているのわかる。
この『魔力武装』時は、簡単に言えば身体能力や感覚が超強化されると言う訳だ。
「『まさか本当に第2覚醒をされているとはペン。むむ? あちらにモンスターの気配を察知しましたわ――ペン!』」
タイミング良く敵が現れたようだ……というかこれほど騒いでいれば当たり前か。
「ブモォ……! ブモォォォォ!!!」
「『ランクB、ハイミノタウルスですわ――ペン! 通常種よりも更に強化された肉体が驚異的、突進攻撃にはお気をつけを――ペン!』」
ふむ。
「『ちょ――凜音様!?』」
「ブモォォォ――ブモ?」
眼と眼が会った瞬間に突進してきた牛を、何の苦も無く片手で止める。ついでに『魔力武装』の能力チェックとも思ったが、役者不足だったようだ。
「しかし、鋼のような筋肉はなかなか強度がありそうだ! この『フランバスター』の試し切り相手に不足なし!」
衣服同様、武器にも『魔力武装』が適用され、黒く輝いている剣を構える。
「『凜音様の魔力がわた――剣に入って……これはもはやセッ◯ス! セッ◯スですわぁ~~~!』」
気の抜けるようなことは言わないで欲しい。
「たぁっ!」
「ブ――もぉっ……?」
ミノタウルスの正面、頭から縦に斬りつけると……何の抵抗もなく左右に別れた。
「うん、やっぱりそこらの剣とは魔力の通りが違う! これは素晴らしい! フランチェスカさんにお礼を言わなきゃだな!」
「『あっ♡ あへぇ~……♡ イキました……イキましたわぁ~……♡』」
……確かにミノタウルスは逝ったけども。さっきからランチョンの様子がおかしいぞ。
「ランチョン? 大丈夫?」
「――はっ!? コホン。凜音様、試し切りはもう十分ではないでしょうかペン。ここは国営ダンジョンですので侵入してるのがバレたら問題ですわ――ペン」
急に冷静になりやがって。さすがAI。
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しかし、施設に戻った俺を待ち受けていたのは――施設長よりも恐ろしい存在だった。
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