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第1章
第2話 ただより高いものはない
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――その夜。
宝条家の方から呼び出しを受けた俺と母さんの2人はとある料亭に連れてこられた。
テーブルを挟んで目の前に座っているのは、宝条財閥――様々な分野で事業を展開している、この国指折りの大企業の会長、宝条ベアトリーチェさんとその娘のフランチェスカさんだ。
「――早速ですが天城凜音さん、あなたは探索者になる、という決意は変わっておりませんね?」
「はい」
挨拶もそこそこに、ベアトリーチェさんが単刀直入に聞いてくる。
「男性の特権を捨ててまで目指すものがあるのは大いに結構。ですが、あなたのステータスでは探索者として大成できないと思うのだけど……少しは成長しました?」
ベアトリーチェさんが、恐らく俺のステータスに関する資料を見ているのであろう。タブレットを操作しながら俺と画面を交互に見ている。
この辺の感覚――文明というか、技術のレベルは、前世とあまり変わらない。変わるのは、動力が魔力ってことくらいか。もちろんテレビも車もある。
「むしろ固有スキルの『絶倫』なんて明らかに種馬向きじゃないの。羨ましいわ、そのスキルがあればこの世は思いのままよ?」
「……その種馬扱いが嫌なんですよ」
この人、明け透けな物言いが怖くてね……苦手なんだよ。
保護という名の軟禁状態で強制ハーレムだなんて、その通りだとは思うけども。
「お、お母様! 確かに今は戦闘向きのステータスではないかも知れませんが……いずれ第2の覚醒に至るかも知れません! それに我々のサポートがあれば危険性の問題も収益的にも――」
「こら、フランチェスカ。あなたは黙っていなさい。凜音さんに肩入れし過ぎなんだから」
娘さんであるフランチェスカさん。長い金髪をゆるく巻いた、いかにもなお嬢様。とても美しいが……残念ながら胸はない。そう、胸はない。
彼女とは以前から一応顔見知りではあるが……何でここまで肩入れをしてくれるのかは正直わからないんだよね。
「いいえ黙りません! そもそも今日は我々と凜音様のスポンサー契約の最終確認だけだったはずですわ! それなのに今更彼のステータスのことを蒸し返して!」
「……はぁ~あ。。本当にダメねこの子。凜音さん、我が娘をこんなにした責任はちゃんと取ってくださる?」
「お母様! 恥ずかしいですわ!」
「恥ずかしいのは私よ。物事を進めるのに感情的になりすぎちゃダメだとあれほど言ってるのに……で、どうなの凜音さん」
……え? 今の流れで本気で言ってるの?
いやいや、これが上流階級ジョークってやつか。うまいことこちらもウィットに富んだ返しをしなければ。
「はっはっは、フランチェスカ様のような、薔薇のように気品溢れる美しい女性と私なんてとても――」
その時、フランチェスカの顔が枯れかけた花のように、目に見えて元気がなくなっていくのが見て取れた。
「――釣り合わないかも知れませんが、全力を尽くして頑張ります!」
面接の決意表明みたいな結びになってしまったが、それでも彼女の顔が、超強力栄養剤を一気に飲み干したかのように明るさを取り戻す。感情が忙しいな、この子。
「~~~! ~~~!」
嬉しそうに身悶えながら、フランチェスカさんがパチンと指を鳴らす。
するとメイドさんが数人、何かを抱えて入室してきた。そしてそれらをテーブルの上に乗せ、1人のメイドさんが口を開く。
「嬉しさで話すことができないお嬢様の代わりに私がご説明いたします。こちらはかねてより凜音様に贈呈するため用意していた剣と、自律型AI搭載探索支援用ドローンのペンギンちゃんモデルでございます」
「何て?」
剣はわかるが……ドローン? 何でペンギン?
一見ただのペンギンのぬいぐるみ。2等身のデフォルメされた見た目で、ふわふわな手触り。完全にぬいぐるみ。
「詳しい説明は後ほど担当の者がいたしますわ! 今はこれを……我々宝条財閥があなたに送る最初の支援として受け取ってほしいのです! そう、この魔法剣『フランバスター』とサポートドローンの『ランチョン』ちゃんを!」
再起動したフランチェスカさんが改めて教えてくれるが……。
「ありがたいけど、その名前だと『フランをバスター』になっちゃうんじゃ……?」
「はい、バスターしてくださいませ♡」
何を言っているのだろうかこのお嬢様は。もしやこれも上流階級ジョーク……?
「『よろしくペン! 凜音様のために頑張るペン!』」
「お、喋った。結構可愛い声で喋るんだ。よろしくね」
「『はぁん♡』」
……ん? ペンギン型ドローンから怪しげな声が……。
「ちっ、余計なことを……コホン。この他にも凜音様が探索者として大成できるよう、様々なサポートを用意していますので、全力でわたくしを頼ってくださいな!」
「うん、ありがとう。頼りにしてるよ」
こうなったら早速後で試してみよう!
「……あの、契約書へのサインがまだなんですが……」
「あらあら♪ それじゃあ後は保護者である私が代わりに♪」
途中から完全に蚊帳の外だったベアトリーチェさんと、最初から存在を忘れていた母さんにより、その後契約云々の話がまとめられた。
宝条家の方から呼び出しを受けた俺と母さんの2人はとある料亭に連れてこられた。
テーブルを挟んで目の前に座っているのは、宝条財閥――様々な分野で事業を展開している、この国指折りの大企業の会長、宝条ベアトリーチェさんとその娘のフランチェスカさんだ。
「――早速ですが天城凜音さん、あなたは探索者になる、という決意は変わっておりませんね?」
「はい」
挨拶もそこそこに、ベアトリーチェさんが単刀直入に聞いてくる。
「男性の特権を捨ててまで目指すものがあるのは大いに結構。ですが、あなたのステータスでは探索者として大成できないと思うのだけど……少しは成長しました?」
ベアトリーチェさんが、恐らく俺のステータスに関する資料を見ているのであろう。タブレットを操作しながら俺と画面を交互に見ている。
この辺の感覚――文明というか、技術のレベルは、前世とあまり変わらない。変わるのは、動力が魔力ってことくらいか。もちろんテレビも車もある。
「むしろ固有スキルの『絶倫』なんて明らかに種馬向きじゃないの。羨ましいわ、そのスキルがあればこの世は思いのままよ?」
「……その種馬扱いが嫌なんですよ」
この人、明け透けな物言いが怖くてね……苦手なんだよ。
保護という名の軟禁状態で強制ハーレムだなんて、その通りだとは思うけども。
「お、お母様! 確かに今は戦闘向きのステータスではないかも知れませんが……いずれ第2の覚醒に至るかも知れません! それに我々のサポートがあれば危険性の問題も収益的にも――」
「こら、フランチェスカ。あなたは黙っていなさい。凜音さんに肩入れし過ぎなんだから」
娘さんであるフランチェスカさん。長い金髪をゆるく巻いた、いかにもなお嬢様。とても美しいが……残念ながら胸はない。そう、胸はない。
彼女とは以前から一応顔見知りではあるが……何でここまで肩入れをしてくれるのかは正直わからないんだよね。
「いいえ黙りません! そもそも今日は我々と凜音様のスポンサー契約の最終確認だけだったはずですわ! それなのに今更彼のステータスのことを蒸し返して!」
「……はぁ~あ。。本当にダメねこの子。凜音さん、我が娘をこんなにした責任はちゃんと取ってくださる?」
「お母様! 恥ずかしいですわ!」
「恥ずかしいのは私よ。物事を進めるのに感情的になりすぎちゃダメだとあれほど言ってるのに……で、どうなの凜音さん」
……え? 今の流れで本気で言ってるの?
いやいや、これが上流階級ジョークってやつか。うまいことこちらもウィットに富んだ返しをしなければ。
「はっはっは、フランチェスカ様のような、薔薇のように気品溢れる美しい女性と私なんてとても――」
その時、フランチェスカの顔が枯れかけた花のように、目に見えて元気がなくなっていくのが見て取れた。
「――釣り合わないかも知れませんが、全力を尽くして頑張ります!」
面接の決意表明みたいな結びになってしまったが、それでも彼女の顔が、超強力栄養剤を一気に飲み干したかのように明るさを取り戻す。感情が忙しいな、この子。
「~~~! ~~~!」
嬉しそうに身悶えながら、フランチェスカさんがパチンと指を鳴らす。
するとメイドさんが数人、何かを抱えて入室してきた。そしてそれらをテーブルの上に乗せ、1人のメイドさんが口を開く。
「嬉しさで話すことができないお嬢様の代わりに私がご説明いたします。こちらはかねてより凜音様に贈呈するため用意していた剣と、自律型AI搭載探索支援用ドローンのペンギンちゃんモデルでございます」
「何て?」
剣はわかるが……ドローン? 何でペンギン?
一見ただのペンギンのぬいぐるみ。2等身のデフォルメされた見た目で、ふわふわな手触り。完全にぬいぐるみ。
「詳しい説明は後ほど担当の者がいたしますわ! 今はこれを……我々宝条財閥があなたに送る最初の支援として受け取ってほしいのです! そう、この魔法剣『フランバスター』とサポートドローンの『ランチョン』ちゃんを!」
再起動したフランチェスカさんが改めて教えてくれるが……。
「ありがたいけど、その名前だと『フランをバスター』になっちゃうんじゃ……?」
「はい、バスターしてくださいませ♡」
何を言っているのだろうかこのお嬢様は。もしやこれも上流階級ジョーク……?
「『よろしくペン! 凜音様のために頑張るペン!』」
「お、喋った。結構可愛い声で喋るんだ。よろしくね」
「『はぁん♡』」
……ん? ペンギン型ドローンから怪しげな声が……。
「ちっ、余計なことを……コホン。この他にも凜音様が探索者として大成できるよう、様々なサポートを用意していますので、全力でわたくしを頼ってくださいな!」
「うん、ありがとう。頼りにしてるよ」
こうなったら早速後で試してみよう!
「……あの、契約書へのサインがまだなんですが……」
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