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第3章
第30話 『計画通り』と思っている者が数人いた場合
しおりを挟む引っ越しの準備をしなければいけないのだが、住んでいた期間も短いので物も少ない。
そんな訳で期間中は主にまひるちゃんにオラオラして過ごした。
そして週末。現在俺は、大きなビルの前にいる。
繁華街から少し離れた郊外。周囲には民家もほとんどなく、自然豊かな山の麓。
そんな所にポツンと、しかし厳然と聳え立つ立派なビル。
「これが……まさか我が家?」
「そうですわ! 地上10階、地下2階、1フロアおよそ3500平米の少々可愛らしいビルでございますが……」
これで? 立派過ぎて住むのが怖いんですけど……。
「地下は災害備蓄品や普段使わない物の保管場所、それと駐車場になります。住民用の出入り口もこちらです。地上4階までは客間や仕事部屋、それ以降は我々の居住区となります。8階は食堂やお風呂場といった共有スペース、10階が凜音様の部屋です」
自分の住む家で区とかつくなんて思わなかった。真世さんによる説明も半分以上頭に入らなかったし。
「それじゃあ、早速凜ちゃんのお部屋に行ってみよ~♪」
……うわ、駐車場広っ!
……うわ、エレベーターでかっ! はやっ!
……うわ――え?
「10階って……まじでこれ全部俺の……?」
「? はい! 少々手狭かとは思いますが……」
「3500平米中半分がバルコニー……というのは流石にやりすぎでしたでしょうか」
「いやいやいや……」
こんなん……部屋で野球が出来そうなんですけど!?
学校の体育館が余裕で入りそうなくらいなんだが!?
「俺は……この半分の半分の半分の半分の半分くらいで十分です……」
広すぎて落ち着かない。きっと俺は部屋の隅っこでこじんまりと過ごすことになるだろう。
「あらま! でしたら、わたくしも一緒に住まわせていただいてもよろしいですわね!」
「私も♪」
「それとこれとは話が違う」
しかし俺の話を無視して区割りだとかパーテーションだとかの会話が始まっていた。
これは間違いなく事前にこうなることを予測していた動き……!
「ふふ、お嬢様ったら楽しそうですね。それでは我々はバルコニーを見に行きましょう」
「いや俺の部屋……」
しかし真世さんに無理矢理手を引かれてバルコニーに連れられる俺。間違いなく事前に計画された通りの動き……!
絶対確信犯じゃないか!
「へぇ! いい眺めだね!」
足元近くは緑の木々に囲まれ心が洗われる様。遠くに繁華街の様子が見えるので、夜は灯りが綺麗だろうと想像できる。小さな悩みなんて吹き飛んでしまった。
「はい。設備としては露天風呂やプールとして活用できる浴槽、少人数のパーティをすることも想定したスペースとなっております」
「いいねぇ~、こういうのは憧れてたかも!」
「はい。この風景を眺めながら温かいお風呂につかりながら私の中を堪能する。素敵ですね」
「露出の気はないけど、それはそれでいい――じゃなくて!」
どうしてあなた方は素直に感動させてくれないのか。
「……おや、何やら室内の話し合いの収集がつかなくなっているみたいですね。戻りましょうか」
「……」
どうしたのだろうか。何か計画と異なる、想定外の動きがあったのだろうか。
室内に戻ると――。
「ですから! どう見てもあたしのことが大好きな凜音様のことを考えて隣はあたしにするべきです!」
「ですから、そのように考える根拠を述べなさいと言っていますの。あなたが凜音様のことが大好きだから隣になりたいだけでしょう?」
どうやら部屋割りで揉めている様子。
フランは俺の顔をチラッと見た後にまひるちゃんを煽るような言葉を言っているので、完全にわざだろう。
これは……普段ツンツンしてるナマイキメイドの本音が聞けるチャンス!?
「……そ、そうですけど……別に……いいじゃないですかぁ~……」
俯いてボソボソ喋ってるまひるちゃん。こちらを背にしているので表情が見えないのが残念だ。
「ふぅん。あなた、確かかわいいものがお好きでしたわよね? ランチョンのデザインもあなたでしたし。やはり凜音様もかわいらしいところがいいんですの?」
「い、いえ……かわいい中にも男らしい一面がたまーに見えるのがたまらなく愛お――!?」
気配を察知されたか、振り向いたまひるちゃんと目が合う。
顔が赤くなり、目には涙が溢れ、体はプルプル震えだし、そして右手を振り上げるまひるちゃん。
「いと……いと大っ嫌いでございまするぅぅーーー!!!」
「痛いっ!?」
我が頬からパチーンという音鳴りけり。いとおかし。いと痛し。
その後の話し合いの結果、隣は真世さんということになった。
彼女いわく『お嬢様たちとの事後、速やかにお掃除できるように。他意はございません』とのことだが……。
「ふふ……計画は、成功……ですね」
フランたちは知らない。真世さんが1番エロエロだということを……!
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