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第3章
第43話 知識レベル10、技能レベル0
しおりを挟む雪さんに案内されたのは、路地裏にあるいかにもな感じの、様々な機械や魔道具が並んでいる店だった。前世でも見たことがあるような光景、これぞ秋葉原!
ジャンク品を扱うかの用に乱雑にカゴに入れられている魔道具の数々を手に取り眺める。
「何だこれ……そよ風が吹く大剣?」
「暑い時に便利そう。持つ手が疲れるだろうけど」
「……これは……熱を帯びる盾?」
「攻撃してきた敵にカウンターできそう。自分も熱そうだけど」
商品についている説明書きを読みながら、次々と魔道具を見てみる。
ダンジョン報酬はピンからキリなんだと実感。運が悪いのは俺だけじゃないんだな……。
「これおもしろいよ。自分の変顔が写る鏡だって」
「どれどれ……ほんとだ! タイツ被って引っ張ったような顔してる!」
「ふふ、凜音さん変な顔~」
キャッキャウフフしている俺ら、周囲から見たらカップルにしか見えないだろう。
いつの間にか雪さんの緊張も解けているみたいだし、いい感じだ。
「見て見て、発光するピアスだって。ミコに似合いそう」
「本当だ。効果はともかく見た目がいいね」
「買って行ってあげよっかなあ~でもなぁ~、効果がなぁ~……」
ここは俺が……と思ったけど、他の人とデート中に買うってどうなんだろ。無しだな。
「やっぱ買っていこ。今日のデートの話聞いて羨ましそうだったし」
「うんうん、喜ぶと思うよ! それに効果がなくてもミコさんはキラキラしてるから大丈夫!」
ピアスを片手に店の中に入ると――。
「あっ! こ、これは……! もしや旧時代モデルのパソコン?」
「ほうお嬢ちゃんお目が高いね……これは私がゲーミングPCを大昔のパソコンに似せて作成した渾身の一品だよ!」
店長らしき女性が嬉しそうに声をかけてくる。
大きな眼鏡に大きなお胸、ちょっとだけぽっちゃりしてる体型ともっさりした長髪は……どこか退廃的な雰囲気を醸しだしている。
話題に上がっているのは、前の世界でパソコンが出始めた頃にあったスケルトンでカラフルな箱のようなパソコンだ。某林檎。
「パソコンが透けてる意味がわからない……って、これは本物のブラウン管!? 今時そんなもの作れるの!? あ、こんなところに魔法陣が描かれて……そうか、これが出力変換を制限して……すごい、本当にすごい!」
「そうさ! 旧時代の資料を読み漁って試行錯誤の末にたどり着いた科学と魔法の合せ技だよ!」
あっはっは、意味わからん!
「ま、おかげでスペックは著しく制限されちゃってるから、性能としては5年前のエンドクラスってところだねぇ~。結局画面は見にくいし、この形にする意味は全くないしね」
「だけどそこがいい。よくわからないことや遊びに本気を出すと言うのが技能の無駄遣い感がハンパない。すごい」
「わかるかい? 全く売る気がないガラクタに膨大な手間暇をかけてだねぇ――」
楽しそうだね。ところで……。
「旧時代って?」
「――おや、お連れさんはパンピーかい? って男ぉ!? か、かわいい顔してるじゃあないか」
「うん、凜音くんはかわいい。旧時代と同じくらい魅力的」
遂に1つの時代と同列になれたようだ。しかも今俺が男だと気付いたらしい……もしかして街で騒がれないのも、みんな何かに夢中で俺に気づいてないとか……。
「旧時代ってのはね、今からおよそ1000年前の――簡単に言えば魔法が出現する前の世界さ。その代わりに科学に特化して発展していた時代さ~」
「へぇ……」
この世界にも魔法がない時代があったとは。1000年前に何かがあったのだろうか。
「旧時代は環境やコストを度外視した物がたくさんあるの。何ていうか……ワクワクするよね」
「わかる。ロマンだよね! 今では考えられないよねぇ~! ロマンといえばさぁ~――」
そして再び彼女らはよくわからない魔道具談義に花を咲かせるのだった。
◆◇◆◇◆◇
「毎度~! また来てねぇ~!」
お店のお姉さんとの話を終え、お会計を済ませた頃には時計は2時間も進んでいた。
途中で椅子を出してもらったりお茶菓子を出してもらったり……何の店だって感じだったけど。
「ご、ごめんなさい……せっかくのデートなのに……」
話に夢中だった雪さんがとても申し訳無さそうな顔で謝まってくる。
「いやいや、楽しそうで何よりだよ」
俺といえば、喋り続ける雪さんの口元に水分を時折運んでいたくらい。
とはいえなかなかおもしろい話も聞けたので別に退屈はしなかった。
「夢中になっちゃうといつもそうで……ドン引きされて友達いなくなっちゃうし……気持ち悪いよね」
「いやいや、雪さんの可愛い姿を見られて満足だよ」
「……」
今日のデート、最初は緊張していた雪さんもすっかりいつも通りな感じになったし。無表情だけど。
「……こっ!!!」
「こ?」
急な大声でびっくりしたー。
「……こ、こんな私でも……好きでいてくれる?」
その無表情な顔を赤く染め、だけどまっすぐ俺の目を見てくる。
「もちろん。そんな雪さんだからこそ、大好きだよ」
だから俺もまじめに、誠実に応える。
「……予定より早いけど、この前の続きをさせて欲しい。否、今回は私がリードしてみせる。あれから様々な知識を私の頭にインストールしておいたから、私に任せて。年上だからね」
「うん」
……。
……。
……。
「ら、めえぇぇ、これいじょっ、はぁっ! あたまおかしくなりゅぅぅ~!」
残念ながら、往々にして理想と現実は乖離しているものである。
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