82 / 84
第5章
第82話 喰らおうとするものは喰われる覚悟がある者
しおりを挟む赤火さんを置いていこうとした時、頭上から唸り声が聞こえてきた。
「グルルルル……」
「間に合わなかったか……!」
「ぴよぉ~……」
いや本気で置いていく訳ないって。そんなことより……。
「こんにちは、誇り高きドラゴン様。僕の名前は凜音、会えて嬉しいです!」
「グルルルル……?」
「わぁ、そんなこと言って頂けるなんて光栄です! いやー、ドラゴン様に会えるだなんて、僕はラッキーだなぁ!」
「ぴ?」
マフリルが不思議そうな顔をしているが、気にしたら負けだ。
「いやぁ、立派な牙に涎まで垂らして……お食事の邪魔をしちゃったみたいですかね? どうぞ、我々のことなど気になさらず……」
ギガノトさんの後に現れたのは、更に巨大でしかも翼が生えてる……つまりドラゴンだった。
白い体に全身魔力密度の濃い鱗に覆われ、口なんか俺を丸呑みにしても余るほどの大きさ。
しかしこのドラゴン、ファンタジーと違って全く意思疎通できないじゃないか。糞トカゲ野郎め。
「ギャアアアアアォォォオオオオーーーン!!!」
「ちっ! “頭を垂れろ”“汝ら導く”“世界の終わり”『魔力武装』!」
「ぴーーーっ!!!」
内心がにじみ出てしまったのか、糞トカゲ――ドラゴン様が怒りの咆哮を上げる。さすがにふざけてられないので臨戦態勢に。
「――凜音! この声は……ド、ドドドドラゴン!?」
「赤火さん、ちょうどよかった! アレ捕まえて!」
「――!? ~~~! ………………わ、わかった……」
わかってくれた!? ワンチャンペットにできる可能性あり!?
「い、行くぞ糞ドラゴンがっ! オレの力にビビってチビるんじゃねぇぞ? くっせぇだろうからなぁ!!!」
「グガァァァァーッ!!!」
すげぇ、すげぇや赤火さん! ドラゴン相手に1歩も怯んでない!
「“赤き翼”“天高く舞え”『紅蓮灼火』!」
「グォ!?」
昇格試験の時には結局見られなかった赤火さんの第2聖句! 炎の翼が更に大きく燃え広がってドラゴンを包み込む! こっちまでめっちゃ熱い!
「オレの炎はレベル10相当! 最強クラスだ! いくらドラゴンだろうと無事な訳ねぇっ!」
「――バォォォオオオ!」
「んなぁっ!?」
しかしドラゴンが大きな口を開けると、赤火さんの炎はどんどん吸い込まれていってしまう。
「マジ……? ってやべぇっ!」
「ガァァァアアアア!!!」
「――ちっ!」
吸った後は当然吐き出す……赤火さんの『紅蓮灼火』を更に圧縮したような濃密な魔力の炎がドラゴンの口から吐き出される! 石火さんを抱えて横っ飛び。間一髪ブレスは回避するが……。
「ヤバっ!」
「な、何だこりゃあ……」
ブレスの通った跡は……何も残っていなかった。かろうじて周辺の木々が燻っているのだけが残っている。
「全部吹き飛んだんだ……!」
「お、おいおい! こりゃ山火事待ったなしだぞ!」
それももちろんヤバいけど、今は目の前のドラゴンだ。
「先手必勝! うらぁ!」
「グルッ!?」
手に荷物を抱えながらドラゴンの顎を思いっきり蹴り上げるが……重い! まるで鉛を蹴ってるような感覚!
「ガァァァッ!
「あぶっ!」
大してダメージを負っていない様子のドラゴンが、そのまま噛みついてくる!
口の側面を蹴り、何とか回避に成功するが即座にドラゴンの右腕が鋭い音を立てて迫って来ていた。
「凜音!」
「――っ!」
「ぴっ!」
仕方がなく赤火さんを抱きかかえ、受けるための体制を取ろうとしたが、マフリルが魔法陣を展開。ドラゴンの爪を弾いてくれた。
「助かったよ、マフリル!」
「ぴよ!」
一瞬の攻防が終わり、ドラゴンから少し距離を取り呼吸を整える。マフリルは腕に抱えた荷物より役に立つな。
「しかし……どうしたものか」
「凜音! この体勢、恐ろしい魔物から守って貰っているお姫様みたいだな!」
「……」
確かにお姫様抱っこの形ではあるが……こいつをドラゴンに向かって放り投げてやろうか。
「凜音、落ち着け。ドラゴンだからと恐れるな。気楽にやればいいんだ」
「……」
「緊張していたら実力をだせないぞ! なぁに、いざとなったら私が囮になってやる。お前は気にせず戦え」
確かに……初めて会うドラゴン相手に少し浮足立っていたかも知れないな。さすがはSランク探索者、戦いに対する心構えを説かれるとは。
「……よし! 気楽に行こう」
「ああ、その意気――あぁ!? あぁぁぁーーー!?」
ということで抱えていた赤火さんを後ろに放り投げ……戦闘再開だ!
「グルルル……」
こちらを待っていてくれたらしいドラゴンも待ちきれない様子。
「こいよ、糞トカゲ。お前を倒して、俺はドラゴンスレイヤーになる!」
「グルッ!? ギャアアオオオォォーーーン!」
プッツン状態のドラゴンが怒りに任せて突っ込んでくる。しかし俺の右手にはフランバスター!
「はぁっ!」
「――ッ!?」
大口を開けたドラゴンの口を上段から思いっきり剣を叩きつける。切断は叶わない。
間髪いれずに振るわれる爪を剣で弾く。爪が欠けたが後方に弾き飛ばされる。
口からブレスが漏れる――吐き出される前に頭の下に潜り込んで思いっきり殴り上げる。
尻尾の叩きつけはフランバスターで防ぎ、切り落とすことに成功。
「ギャアアオオオーーーン!?」
「え、ええ……?」
ドラゴンの悲鳴と、後ろから何やら呆れる声が聞こえる。
「……グルルルッ!」
「あ、逃げるな! 卑怯者!」
空に飛び立つドラゴン、しかし空中で静止してこちらを睨みつける。
「逃げたんじゃない! 空からの魔法攻撃だ!」
「む……」
確かに、マフリルが魔法を使う時のように魔法陣が見える。それに加えて口からブレスを吐く予兆も見られる。
しかし遅い! どうせ俺が飛べないだろうと油断してるな?
「対空攻撃魔法発動……『リバースメテオ』」
「ギャン!?」
一握りの魔鉄の塊が、空を昇る星のようにドラゴンを貫く。
「何だ……何を……リバースメテオ?」
「これが俺の隠され遠距離攻撃魔法……!」
もちろん、魔鉄ゴーレムの残骸である。
しかしこれはただの魔鉄の塊ではない! フランに頼んで投げやすさや空気抵抗と重さのバランスを研究して作られた特別性! まさにフランと俺の共同作業! もはやックス!
そうだ、フランと言えばランチョン出すの忘れてた。今のうちに出しとこ。
「ガッ……ギャアア……」
ズドンという音を立て、ドラゴンが地面に落ちる。まだ生きてはいるようだが、胸を貫かれて……とても痛そうだ。
「『凜音様! ダンジョン到達が遅れるとのことでしたが……え?』」
いけない、一応予定が遅れるとメッセージは送っていたがさすがに遅すぎたようだ。心配かけちゃったな。
「『ド!? ドドドドぉ~~~!?』」
「フラン、連絡が遅くなってごめんね。お詫びに、今日はドラゴン肉でバーベキューだよ!」
「『ふ、ふぇぇぇぇーーー!?』」
マイク越しにまひるちゃんの声も聞こえるね。よかった、ドラゴン肉を喜んでくれているみたいだ。
「さて……最後に言いたいことは?」
「グルルル……」
「……そうか、俺もお前と戦えて光栄だったよ」
そういいながら首を切り落とす。もちろん最後まで言葉は通じなかった。
10
あなたにおすすめの小説
現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜
涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。
ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。
しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。
奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。
そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜
昼寝部
ファンタジー
2XXX年、X月。
俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。
そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。
その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。
俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。
これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
異世界帰りのハーレム王
ぬんまる兄貴
ファンタジー
俺、飯田雷丸。どこにでもいる普通の高校生……だったはずが、気づいたら異世界に召喚されて魔王を倒してた。すごいだろ?いや、自分でもびっくりしてる。異世界で魔王討伐なんて人生のピークじゃねぇか?でも、そのピークのまま現実世界に帰ってきたわけだ。
で、戻ってきたら、日常生活が平和に戻ると思うだろ?甘かったねぇ。何か知らんけど、妖怪とか悪魔とか幽霊とか、そんなのが普通に見えるようになっちまったんだよ!なんだこれ、チート能力の延長線上か?それとも人生ハードモードのお知らせか?
異世界で魔王を倒した俺が、今度は地球で恋と戦いとボールを転がす!最高にアツいハーレムバトル、開幕!
異世界帰りのハーレム王
朝7:00/夜21:00に各サイトで毎日更新中!
男が少ない世界に転生して
美鈴
ファンタジー
※よりよいものにする為に改稿する事にしました!どうかお付き合い下さいますと幸いです!
旧稿版も一応残しておきますがあのままいくと当初のプロットよりも大幅におかしくなりましたのですいませんが宜しくお願いします!
交通事故に合い意識がどんどん遠くなっていく1人の男性。次に意識が戻った時は病院?前世の一部の記憶はあるが自分に関する事は全て忘れた男が転生したのは男女比が異なる世界。彼はどの様にこの世界で生きていくのだろうか?それはまだ誰も知らないお話。
転生?したら男女逆転世界
美鈴
ファンタジー
階段から落ちたら見知らぬ場所にいた僕。名前は覚えてるけど名字は分からない。年齢は多分15歳だと思うけど…。えっ…男性警護官!?って、何?男性が少ないって!?男性が襲われる危険がある!?そんな事言われても…。えっ…君が助けてくれるの?じゃあお願いします!って感じで始まっていく物語…。
※カクヨム様にも掲載しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる