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岩本大地
やめて!俺のために、二人が争わないで
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さて、そんなこんなで勝負が始まったぞい。
ギャラリーの方を見やれば、トオイがさぞ心配そうな顔をして観戦しておる。また別の方角を見やれば、雪兎くんが心配を越え発情したメスのような顔でこちらを見守っておった。
『やめて!俺のために、二人が争わないで!』
とでも、思っておるのであろうか。うんうん。金輪際、君のために戦っておるわけではないぞい。
「余所見をしている、余裕があるのか…?覚悟!」
そう言って、対戦相手の岩本大地が間合いを詰めてきおった。ほうほう。流石に将来有望視されてるだけあって、巨躯に似合わぬ素早い動きじゃの。
時に、読者の皆さん。先ほど雪兎くんも言うておったが、最近の柔道の試合をどう思うかの?身体のデカい外国人選手が、ケッタイな色をした道着を身に着けて相手選手に襲いかかっておる。言うなれば、プロレスか何かと同じじゃな。身体と身体のぶつかり合い。身体が大きければ、大きいほど有利。
それはそれで、格闘技の真理をついているとは言えるじゃろう。だが、ことに柔道としてはどうかな?そうじゃ。柔よく剛を制す。それこそが、柔道における本質と呼ぶものじゃな。この岩本は図体の割にこまごまとした技巧をこらして来おるが、どれもこれも小手先のもの。ワシにとっては、児戯にも等しき所業じゃわい!
「ほいさっと」
言うた刹那、技を繰り出す岩本の腕をば掴んで一本背負いにて投げ飛ばしてやった。巨大な身体が宙に浮く様を、ギャラリーの皆様にも楽しんで頂けたのではないかな。投げられた岩本は、しばらくの間呆然と寝転んでおったが…。
「完敗だ…。まさかこの俺が、こうも見事に投げ飛ばされるとは。噂に、違いはなかった。どうか辻村くん、お願いだ!我が柔道部に、入部してはもらえないだろうか?君ならばどんな試合でも、百戦百勝だ!端的に言うと、君が欲しい。俺に出来ることなら、何でもするぞ!」
ん!?今、何でもすると言ったかの!?あまり、意味深な言い方をするな。そこな雪兎くんが、嫉妬の表情を浮かべておるじゃろう…。
と思いきや、案外『こんなカップリングも悪くないな』みたいな表情をしておった。えぇいこの、骨の髄まで腐り切った男子が!
「入部については、考えよう。まことにすまんが、ワシは試合や大会に出ることは出来ないのじゃよ」
そう言い切ると、岩本は目に見えて落胆の表情を見せた。そして、後ろからは小声で雪兎くんが話しかけてくる。
(いいんですか?むかし足を負傷して、泣く泣く選手の道を諦めたって聞きましたけど。これを機会に、かつての夢を追いかけたりしないんですか?今回の若返りは、トオイくん以外に自分のためでもあると思わないんですか?)
そうじゃな。自分のためであるとは、思っておった。しかし不思議なことに、果たせなかった夢を再挑戦しようなどとはカケラも思い至らん。足の傷は、いづみを庇ってオート三輪に撥ねられた時に出来たもの。この事件をきっかけに、彼女との仲を深めることができた。いわば、名誉の負傷じゃな。
もし再び選手の道を目指したりしたならば、その思い出こそに傷がつく気がした。若返り自体も、一体いつまで続くものか分からんしの。そう、それと…。
何となく、フェアじゃない気がしたのじゃ。世の中に、負傷して涙を飲んだスポーツ選手は星の数ほどおる。彼ら彼女らを差し置いて、ワシ一人むかしの夢を追いかけようなどとするのは抜け駆けと言うもの。
結局ワシの立場は、体験入部員としての仮入部に落ち着いた。ついでと言えようか、トオイも同じく仮入部させることに成功したよ。家事もあるので、本格的に部活に打ち込ませる訳にはいかんが…。
これは、神の与えた機会と言うもの。苛めの件はワシの勘違いであったが、いつまた危害を加えてくる輩が現れるか分からんしな。ここは心を鬼にして、心身ともに一から鍛え直してやろうぞ。
ついでにトオイの元・取り巻きたちまで仮入部し、ワシに寝技をかけられる際妙に嬉しそうな顔をしておったがこれはまた別の話…。
ギャラリーの方を見やれば、トオイがさぞ心配そうな顔をして観戦しておる。また別の方角を見やれば、雪兎くんが心配を越え発情したメスのような顔でこちらを見守っておった。
『やめて!俺のために、二人が争わないで!』
とでも、思っておるのであろうか。うんうん。金輪際、君のために戦っておるわけではないぞい。
「余所見をしている、余裕があるのか…?覚悟!」
そう言って、対戦相手の岩本大地が間合いを詰めてきおった。ほうほう。流石に将来有望視されてるだけあって、巨躯に似合わぬ素早い動きじゃの。
時に、読者の皆さん。先ほど雪兎くんも言うておったが、最近の柔道の試合をどう思うかの?身体のデカい外国人選手が、ケッタイな色をした道着を身に着けて相手選手に襲いかかっておる。言うなれば、プロレスか何かと同じじゃな。身体と身体のぶつかり合い。身体が大きければ、大きいほど有利。
それはそれで、格闘技の真理をついているとは言えるじゃろう。だが、ことに柔道としてはどうかな?そうじゃ。柔よく剛を制す。それこそが、柔道における本質と呼ぶものじゃな。この岩本は図体の割にこまごまとした技巧をこらして来おるが、どれもこれも小手先のもの。ワシにとっては、児戯にも等しき所業じゃわい!
「ほいさっと」
言うた刹那、技を繰り出す岩本の腕をば掴んで一本背負いにて投げ飛ばしてやった。巨大な身体が宙に浮く様を、ギャラリーの皆様にも楽しんで頂けたのではないかな。投げられた岩本は、しばらくの間呆然と寝転んでおったが…。
「完敗だ…。まさかこの俺が、こうも見事に投げ飛ばされるとは。噂に、違いはなかった。どうか辻村くん、お願いだ!我が柔道部に、入部してはもらえないだろうか?君ならばどんな試合でも、百戦百勝だ!端的に言うと、君が欲しい。俺に出来ることなら、何でもするぞ!」
ん!?今、何でもすると言ったかの!?あまり、意味深な言い方をするな。そこな雪兎くんが、嫉妬の表情を浮かべておるじゃろう…。
と思いきや、案外『こんなカップリングも悪くないな』みたいな表情をしておった。えぇいこの、骨の髄まで腐り切った男子が!
「入部については、考えよう。まことにすまんが、ワシは試合や大会に出ることは出来ないのじゃよ」
そう言い切ると、岩本は目に見えて落胆の表情を見せた。そして、後ろからは小声で雪兎くんが話しかけてくる。
(いいんですか?むかし足を負傷して、泣く泣く選手の道を諦めたって聞きましたけど。これを機会に、かつての夢を追いかけたりしないんですか?今回の若返りは、トオイくん以外に自分のためでもあると思わないんですか?)
そうじゃな。自分のためであるとは、思っておった。しかし不思議なことに、果たせなかった夢を再挑戦しようなどとはカケラも思い至らん。足の傷は、いづみを庇ってオート三輪に撥ねられた時に出来たもの。この事件をきっかけに、彼女との仲を深めることができた。いわば、名誉の負傷じゃな。
もし再び選手の道を目指したりしたならば、その思い出こそに傷がつく気がした。若返り自体も、一体いつまで続くものか分からんしの。そう、それと…。
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