89歳のワシが若返って、男とフラグを立てる話

あきら

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岡坂登生(2)

(一緒にラブホに入る程度の)清い関係

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 5月5日(木・祝)晴れ

 みなさんこんにちは。辻村颯16(89)歳じゃよ。こどもの日じゃな。長かった連休も、もう終わりじゃ…。いやまぁ、これまた明日の金曜日を無理やり休みにしとる会社や学校も多かろうが。

 今日はひ孫のトオイと、近所の市民プールにやって来たぞい…。何でまた、プールなのかじゃと?いやまぁ、どう言う話の流れじゃったか…。学校にて、ワシが泳げないのがバレてしまったのじゃな。
 と言うかそもそもトラウマによって水が怖いと言うのは、つい先日判明したのじゃが。昔の彼が川に呑まれた事をきっかけに、無意識に水に関わるのを避けておったのじゃな。幸い(?)海なしの群馬県じゃし、戦後の混乱期でプール授業がなかったためそんな支障を生じる事はなかった。
 まぁ…。家族にてプールや海に行った時は、ずっと水に入るのを避けておったかの。今更ながら、申し訳ないことをした気がするぞい。その、罪滅ぼしと言う訳でもなかろうが…。来たるべき学校プール授業に備え、こうして特訓のためやって来た訳じゃな。
 室外プールじゃったが、カケラも寒いとは思わなんだよ。周りにも、泳ぎに来た家族連れなどが山ほどおる。5月じゃが、季節の管理に未だ慣れておらぬ令和ちゃんが真夏並みの気温と取り違えたものと見える。
 ちなみに学校の指定水着はもっとピッチピチの、いわゆるビキニ型の競泳パンツじゃぞい。昔は、大して何とも思わなんだが…。今改めて見ると、ここまで面積少なくする必要あるかの!?との印象を、受けざる得なかったぞい。これを履いたトオイや笹川の姿を想像すると、ちょーっといけない気分にならなくもなかったが…。いかん、心頭滅却じゃ!



 「どうしたの?颯くん。ほら、足が止まってるよ。バタ足!バタ足!」
 ワシの手を引きながら、トオイが言うたぞい。まさか茅ヶ崎の海岸で浮き輪で波に漂っておったあの幼子から、泳ぎの指導を受ける日が来ようとはの。負うた子に、教えられ…かの。用法、合っとる?
 「いい感じじゃん。これなら、すぐに泳げるようになるよ。颯くん、運動神経いいもんね。…そうだ。夏になったらさ。みんなで、海に行こうよ!雪兎くんや、他の友達も誘ってさ。懐かしいなぁ。おれ、子供の頃はひい爺ちゃんや家族みんなで神奈川まで泳ぎに行ったもんだよ」
 うん、知っとる。他ならぬ、ワシが連れて行ったんじゃからの。
 「そ、そうじゃな…。悪くないのぉ。おぉ、そうじゃ。海には、笹川縁も連れて行かんかの?きっと、楽しくなると思うんじゃ…」
 そう言うと、トオイは珍しく目に見えて嫌そうな顔をしたぞい。
 「縁、縁って…。颯くん、めっちゃあいつの事言うよね。ってか、ちょいちょい会ってるのも知ってる。やっぱ、付き合ってるんだ…?」
 「わー!わー!ワシと笹川は、(一緒にラブホに入る程度の)清い関係じゃぞい!と言うかトオイは、どっちに対して嫉妬しとるんじゃ?知っとるぞ。LIMEにて、告白したと…。やっぱり、彼への想いを断ち切れないんじゃないかの?」
 「うん…そうだよ。正直に言うね。おれ、ずっと子供の頃からあいつの事が好きだった。色々あって、告白の返事はあやふやになったけど。だけど、分かるんだ。縁の中には、ずっと昔から誰かの存在が心を占めてるみたい」
 「何じゃと?それは、初耳じゃな。それは、一体誰じゃい?」
 「さぁ、分かんない。聞いても絶対、誰だか教えてくれない。あのさぁ、話は変わるけど。おれ、颯くんの事も大好きだよ。ほんの一ヶ月ほど前に出会ったばかりだけど、ずっと昔から君のことを知ってた気がする…」
 いや、そりゃまぁずっと昔から会ってはおったからのう。でも…。
 「でも、駄目じゃよ。ワシらは、そう言う関係になる訳には行かん」
 「また、そんなこと言う。おれ達が付き合う事の、何がいけないって言うの…?」
 「何でもじゃよ。だけど、見ておれ。きっとお主と縁が結ばれるよう、最善の努力をするからの」

 そう言うとトオイは、やはり完全には納得しかねるような表情をした。すまんの、トオイ。重ねて、ワシらがそう言う関係になる訳にはいかんのじゃ。
 しかし、見ておれ。言うたとおり、きっとお主と縁が結ばれるよう手を引いてやるでの!
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