職場で一番嫌いな奴と、なんでか付き合うことになった話

あきら

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職場で一番嫌いな奴と、なんでか付き合うことになった話

紹介できる方?できない方?どっち?

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 「『マージナル・サーフ』しぶき君総受け本」「しぶき君と、渚のいけないエトセトラ!」「しぶき君の口内に移り住みたい」

 …あ、これアカンやつや。せっかく馴染んできたと思ったのに、終わりかな。今回の職場も。明日から、また新しい仕事探ししなきゃ…。あと今の職場と家近いんで、引っ越しも検討した方がいいかなぁ…。真っ白な頭で、なんとかそこまでは考えていると。
 「…『マージナル・サーフ』っスか。オレも見てました。道北しぶき君、推しなんっスか」
 大量の薄い本を拾いながら、彼が言った。…え?失礼だけど今、何とおっしゃいまして?ヤンキーには隠れオタクが多いって聞くけど、その類かな。そう言えばやはり休憩室にて、「○○○の声優って、○○D?」とか話してたような。それはDじゃなくて○山○だってことを、声を大にして教えて差し上げたかったけどね。
 「…意外ですね。保志さん、こう言うアニメとか見てるんですか」
 そう返すのが、精一杯だった。本当は、こう言う本に対する理解もあるんですか…?って、聞きたかったけれど。
 「まぁ、人並みには。トゥイッターで、『aoi』ってアカウントで絵描いてるんスよね。しぶき君も描いたことあるッスよ。ほら」
 「はぁ?aoiさん?神絵師やんけ!…ごめんなさい。ちょっと、本性出ちゃった」
 すごい今更ながら、彼のフルネームを思い出した。保志葵くん。すごい主人公感溢れると言うか、BL小説での攻め役みたいな名前だな。いやまぁ、BL小説での攻め役なんだろうけど。
 「…aoiさん、ずっと前からファンでした。って言ったら、なんか過去形みたいだな。えぇと。現在完了進行形です。ずっと前からあなたの作品に惹かれ、今現在もファンであり続けています。トゥイッターでも、フォローしてるし…」
 「マジすか。辻村さんのアカウント、教えて下さいよ。フォロバしますから」
 「え?それって、紹介できる方?できない方?どっち?…って、どっちも駄目だ!…と、とにかく。本を拾ってもらって、ありがとうございます。夜も遅いし、お話はまた今度…」
 そう言って去ろうとする俺の腕を、彼が掴んで静止した。何やら物事を伝えたそうな、必死の形相だ。
 「…あの、まだ何か?」
 「オレの正体だけ聞いて帰ろうなんて、そんなのズルいっスよ。そ、その…。ずっと前から聞きたかったんスけど、辻村さんの正体って」
 「はい?」
 「Aquaちゃんっスよね?巷で評判の歌姫。歌声をトゥイッターやらU-tubeに投稿しては、その都度バズってるんスよね?」

 …は?いきなり何をぬかしてけつかるんじゃ、このガキは。つい本性が出ちゃったけど、つまりはそう言うこった。
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