目が覚めたら、関西弁黒髪八重歯のイケメンが見下ろしていて欲しい人生でした。

あきら

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にまんえんでヤらせてくれる

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 拝啓、お母さん。元引きこもりの僕が、何とかかんとか重たい身体を引き摺って駅には辿り着くことが出来ました。
 大阪は何だか、凄い所です。人々の足は速く、忙しげに行き交って…。いや、これでも一年間は東京の満員電車を経験していたのです。あの時と比べれば、こちらの混み具合など失礼ながら屁でもありませんよ。だけどね。何と言うか、熱量が…。

 って、まずは自己紹介とご挨拶から始めるのでしたっけ。なにぶん主人公になる機会が初めてなもので、色々と段取りが悪く申し訳ございません。
 みなさん初めまして、おはようございます。僕の名前は、神崎宙斗18歳ホモです。名前の読み、「そらと」です。微妙にキラッキラしてるのかそうでもないのか、判別のつけ難い名前で申し訳ございません。何でも、作者が今推しているクライミング選手の名前から頂戴したのだとか。
 本日この日から、晴れて高校二年生と相成りました。え?さっき18歳って言ってた気がするけど、さてはダブったのかって?ハイ、そうですね。謹んで、おダブりになっておりました。容姿から「留学」したのかとよく言われますが、「留年」の方です。どうぞ、お間違いなきよう。
 そもそも、留年したのは…。って、この辺りは長くなるのでよしましょう。決して経緯を考えていない訳ではありませんが、おいおい説明させて頂きます。1ページ目からあまりに説明が長いと、読者さんがダレますからね。
 だけど容姿繋がりで、ちょっと自身の見た目について語らせて下さい。身長は180cmを超えていて、外国の血を引いているかと思しき王子様フェイスで…。自慢かって?謙遜とか抜きで、カケラもそんな事ありませんよ。マジで、損しかした事がないですね。
 男性からも女性からも、好かれる時と嫌われる時が極端なんですよね。それも、どちらかと言うと「嫌われる」寄りです。あまり絡みのない女性陣からはチヤホヤされていたようですが、言った通りホモなのでどんだけモテた所でねぇ…。大体が他人の彼女さんにホレられて、その相方の男性にブチ切れされるのがオチです。たまにその男性が凄いタイプな事があるので、そんな時はむしろこっちが掘ってほしいと思います。
 そうです。何を隠そう(他人には隠してますけど)僕は、薄い本での立ち位置は「受け」なのです。作者のあきらさんは「受けとは身長が低くあるべき」と考えている人なので、これはなかなかの大抜擢ですよ。カケラも、嬉しいとは思いませんけど。
 ついでに言うなら、重度の腐男子です。いや、昔から素養はあったのですよ。だけど受験勉強のさなか、出来るだけ押さえつけて…。そこに来て、言った通りの引きこもり生活に突入したじゃないですか。こう…欲望が、爆発したと言いましょうか。一年ほど、ずーーーっと薄い本やら乙女ゲー漬けの生活を送っておりました。ガチでこのまま転生して、異世界で悪役令嬢としてでも過ごすのかと思っておりましたよ。
 だけど、みなさん嫌ですよね。身長が18○cmの、悪役令嬢だなんて…。って、何だかんだで自己紹介に結構な文字数を費やしてしまいました。そろそろ、現実に戻んないと。
 心機一転、大阪の高校にて第二の人生をやり直すつもりでしたが…。引きこもり明けの豆腐メンタルに対し、大阪の気風はなかなかに厳しい所がありました。荒々しい人波に乗って、うまく歩く事が出来ない…。とうとう、一歩も動けずに立ち止まってしまいました。背後からは、そんな僕を邪魔そうに次々と人が突き飛ばして去って行きます。自慢じゃないですが、図体が場所を取ることにかけては他人に負ける気がしませんからね。
 もう駄目だ、おしまいだぁ…。所詮こんな僕に、第二の人生だなんて無理なお話だったのです。このまま引き返して、昨晩のゲームの続きでも…と思っていたら。一条の光が、閉じた瞼を通り越して僕の目を突き刺しました。この、眩い程の光。暗闇に燦然と輝く、世界の創造にも似た神々しい光とは…?

 そう、それは八重歯だ!

 目を疑いました。昨晩までプレイしていたゲームの八重歯キャラが、画面をぶち破って登場したかのように駅構内を歩いていたのです。しかもその制服、よく見れば僕がこれから通う高校のものでは…?
 「ちょ…ちょっと待って下さい、君…」
 そう言って、声をかけようとした時です。背後から、ひときわ荒々しく突き飛ばされると同時に罵声を浴びせかけられました。
 「おう兄ちゃん、どこに目つけてるんじゃボケェ!デカい図体して、チンタラ歩いてんちゃうぞコラ!」
 はい、ここでみなさんに伝えておきたい事があります。作者のあきらさんは、関西弁ネイティブです。なので、もっとリアルな大阪弁を記述するなら些細な事です。だけど、それって逆に嘘くさくなるんですよね。だからこの作品では敢えて、ちょっとエセっぽい関西弁で通そうと思っています。まぁ流石に、「ボテくりまわす」とまでは言いませんけどね。今まで生きてきて、聞いた事ありませんよそんな言葉。
 って、無駄口叩いてる場合じゃないです。勢いよえ突き飛ばされた僕の身体は、そのまま堂本光一くんの階段アクションよろしく階段を転がり落ちていたのですから。あぁ。僕の人生、これで終わったのかな。生まれ変わったら身長の十の位と一の位が逆転した受けキャラになって、攻めのイケメン様に溺愛されるんだ…。そんな事を考えがら、意識を失いました。そして…。

 




 「あ!目ぇ覚ましたで!おい、大丈夫か?意識、ハッキリしとるか?これ、指は何本や?」
 あれ、ここは天国かな。ゲームキャラの影○と鉄○くんを足して、ちょうど良い感じで割ったような八重歯が僕を見下ろしているぞ。心なし、声も両者の声優さんを合わせたような。そして、「にまんえんでヤらせてくれる」と指を突き出している…?
 繰り返しながら僕は受けなんで、逆に二万円払うからヤって頂きたい今日この頃ですけどね。そうだな。むしろ、そこのセリフは「そろそろ、指二本入れるで!お前、大丈夫か?」の方が相応しいかな。ぐへへ…。
 って、いつまでも腐男子フィルターを働かせてる場合じゃない!タイトル回収する訳でもありませんが、目が覚めたら関西弁黒髪八重歯のイケメンが僕を見下ろしていたのですよ。ここは、転生後の世界…?それとも、やっぱり夢かな。
 「二本…ですか?君は、一体…」
 「おぉ。意識は、しっかりしとるようやな。オレの名前は、桐島大雅。もっとちゃんと介抱したいけど、生憎これからイかなあかん所があるねん」
 「イく…?一人にしないで…じゃなくて。一体、どこへですか?」
 「あのなぁ。オレ、お前を突き飛ばしたオッサンと口論になってな。殴り飛ばして、ちょっと前歯とか折ってもうてん。これから駅長室に行って、場合によっては警察の厄介になるかも知れん。そしたら、後はよろしくなー!」
 「え?よろしくって、そんな急に言われても。僕、これからどうしたら…。って、マジで一人にしないでー!」
 そう叫ぶのも虚しく、彼は駅員さん達に腕を捕まれFBIに連行される宇宙人よろしくその場を立ち去ってしまうのでした。

 拝啓、お母さん。大阪は何だか、本当に本当に凄い所です…。
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