俺の武術は異世界でも最強だと証明してやる!

ぽりまー

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激闘! アーレス祭

21話

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 詩音はオーベロンの詠唱を止めようと、オーベロンに近づこうとする。

「そうはさせるか!」

 オーベロンは蟲に命令し、詩音を襲わせた。

「うおっ…………おい! 約束だろうが! 正々堂々と戦え!」
「約束なんてもうどうでもいいよ。本来のボクならこんなこと気にもしなかったのに、ただの気の迷いでちょっと油断しちゃっただけさ」

 空には大陸中の蟲が集まったのかと思ってしまうほどの数が集まり、太陽の光を遮って空を埋め尽くし、夜のように暗くなった。魔法を詠唱しているオーベロンだけが魔力による光を発している。

「もうすぐ完成さ。ボクの最高の魔法が……!」

 そのとき、詩音は蟲を払いのけ、一瞬だがオーベロンへ続く穴を作ることに成功する。

「見損なったぞ! オーベロン! お前は、お前だけは……覚悟しろぉ!」

 詩音は勝負を投げられた怒りを拳に込め、オーベロンに突っ込む。

「もう遅いよ! 夏の夜の夢バグアビサル!!!!」
「島原流、閃拳!」

 オーベロンの魔法が発動すると同時に、詩音の閃拳がオーベロンの顔面を打ち抜く。拳は顔面を凹ませ、そのまま吹き飛ばした。

 詩音は上空を見上げる。そこには小さい物からこの世には存在しない大きさまで、様々な虫で埋め尽くされていた。やがて虫たちは螺旋を描きながら上昇し、大きな球を作った。

「お前たちはもう終わりだ……! あの虫たちはもう少しで地上に降りてくる。そしてこの地を跡形もなく消し去るのさ!」

 夏の夜の夢は虫たちが対象を飲み込むことで攻撃をする。物質などは蟲が食うことで消滅させ、概念や魂、魔法で物理が通用しないものなどは虫たちが生成する亜空間、奈落に飲み込んでしまう。つまり、虫たちが通った後には人や物質はおろか、そこに存在していたという記録、記憶さえも消し去ってしまう。

「やべえ。どうするよ……これ!」

 そのとき、暗闇に一つ光が現れたことに気付く。

「な、なんだあれ」

 光は上昇していく。中央に人のシルエットが見えた。

「る、ルナか!?」

 ルナは杖を掲げ、何か魔法を詠唱している。

「ま、魔法なんて効くものか……これは魔法も奈落へ飲み込んでしまうんだ。発現した時点でもう終わってんだよぉ!!!」

 ルナは詠唱を終えたようで、杖からオーベロンの時と同じ色を発していた。

「本当は嫌だったのですが、詩音さんやみんなが危ない……ですから仕方ありません。夏の夜の夢!」

 ルナは夏の夜の夢を放ち、互いに奈落へ飲み込ませることで打ち消した。真っ暗だった空は、すべての虫が消滅したことにより、青空を取り戻していた。

「な、なんでボクの夏の夜の夢が使えるんだ……おい、あの魔法使いの名前、なんていった!」
「なんで教えなきゃいけないんだよ」
「なんでって……まあいいや。もうボクには関係のないことだし。そうだ、君に一つ忠告しておくよ」
「ルナを悪くゆうなよ……! 俺はさっきの勝負を無しにしたお前のこと許せねえんだ。これ以上言えば殺しちまうぞ」
「あの魔法使いには気を付けた方がいい。ボクの見間違いじゃなければ、あの子はボクらの世界に手を出すような裏切者だよ」
「黙れぇ!!!!」

 詩音はオーベロンの顔面に下段突きを放った。突きはオーベロンの頭部を地面に叩きつけ、地面に巨大なクレーターを作った。

 とどめを刺したところで、観客席で戦っていたルキウスとクレア、街にいたルナとクリスタが走り寄ってきた。

「詩音! 大丈夫か!」
「ああ……」
「良かった。それにしてもまた勝利したな! これで魔王軍幹部2人目だ」
「ああ。クレアたちも観客をよく守ったな」
「大活躍だっただろう?」

 クレアは自慢するように言う。鎧や体のボロボロ具合を見れば相当厳しい戦いだったことが想像できた。

「詩音さん! またやりましたね!」
「流石魔王軍幹部ですね。とても回復しがいのある、いい身体になってます」

 ルナとクリスタも勝利を喜んでいるようだった。

「ああ。そうだな」

 しかし、詩音は少し心ここにあらずという感じだった。

「どうしたんですか? 詩音さん」
「そうだぞ。もっと勝利を喜べ!」
「ああ。いや、オーベロンが死ぬ前、気になることを言ったんだ」
「そうです。私も疑問が。ルナさん。なぜ先ほどオーベロンと同じ魔法を使用できたんですか?」
「あ、あれ? あれは見様見真似というかなんというか」
「魔王軍が使用する魔法についてもよく知っていたようですし」
「それに関することなんだけd」
「わ、私研究が好きで! それでいろいろ調べてたんです! だから私、魔法についてはとっても詳しいんですよ! それより、みなさんお疲れでしょう? 治療して宿で休憩しませんか?」
 
 ルナは挙動不審で、話題をそらすように早口でまくしたてた。

「帰るか。あ、そうだ、まだ決勝戦がまだじゃないか。ルキウス、決勝戦をやろう」
「無茶を言うな。儂はもう立ってるのがやっとなのだぞ。それにオーベロンを倒したのだ。その実力は本物だ。右京が優勝でよいと思うがな。納得できんか。ならルールにのっとろうか」

 ルキウスは両腕をできる限り上げ、叫ぶ。

「参った!!!」

 詩音たちはいきなりの出来事に唖然とした。

「これで良いだろう。儂は参ったを宣言した、これで右京が優勝だ」

 ルキウスは右京の方を叩き、称えた。

「ルキウスさんともしたかったんだけどな……」
「今じゃどうやっても勝てんだろうし。儂ももっと強くなるから、そうしたらまたやろうか」
「ああ……約束だぜ」

 ルキウスと詩音は固い握手を交わした。

「よし。では宿に戻るとしよう。もっとも、この騒ぎで宿がやってるのならな」

 詩音たちは宿に戻り、クリスタに治療してもらった。宿や街の店はあの騒ぎの後にもかかわらず、早急に復旧し、日が落ちるころには完全に元通りになっていた。

 夜、宿屋に市長からの使いが入り、詩音のアーレス祭優勝の表彰式、及び詩音とそのパーティーが魔王軍幹部討伐したことへの感謝状の授与式を行うという知らせをもらった。



 深夜、ルナは宿から出て、月を見ながら黄昏ていた。

「やっぱり、さっきのはやりすぎだったかな。でもやらないとアテネが無くなっちゃうとこだったし……あのことは秘密にした方がいいよね。もしばれたらパーティーから追い出されちゃうかも……そんなのやだ。やだよぉ」

 ルナは誰にも気づかれないよう、静かに泣いた。

  
 次の日、表彰式及び、感謝状の授与式は厳かに行われた。そして詩音にはアーレス祭優勝の証である金製の札を渡され、以後アーレス祭優勝者を名乗ることが許可された。これは相当名誉なことであり、札を見せればたいていのところでVIP扱いされるほどだ。

「授賞式も終わったことだし、家へ帰ろうか!」
「はい!」
「いろいろありすぎてどっと疲れたぞ……」
「今回も面白かったですねぇ」

 4人は帰りの馬車に乗り、王都へ向かうのだった。



                                                          
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