俺の武術は異世界でも最強だと証明してやる!

ぽりまー

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ルナとエスティアス村

22話

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 アテネから帰還すると、いつ情報が伝わったのか世間話はは詩音のアーレス祭優勝の話ばかりで、ギルドでは祝勝会が行われていた。

「お前は大したヤツだぜ! 流石俺を倒しただけのことはあるな!」
「ガリウスさん! 同じ話ばっかりして、飲み過ぎですよ!」
「そうだ。あれ見せてくれよ。あれ」

 詩音は懐から優勝の証である金製の札を取り出す。札を掲げると大歓声が起きた。

「これが例の札か! 大したもんだ! なんせ俺を倒したんだからな! がははははは!」
「またですか! もう!」

 ガリウスが更に酒を飲むのをセシルが止めようとする。ふと、セシルが何かを思い出したように詩音の方を見る。

「そういえば、右京さんあてにクエストが来ていましたね」
「帰ってきたばかりなのに仕事の話か……」
「まあ受けるのは右京さん次第ですし。ですが今回のアーレス祭の件から遠方の方からも依頼が来ているんですよ」

 アーレス祭は大きな大会なだけあり、詩音の噂は瞬く間に広まっていた。

「まあ、しばらくはまた休みたいし、今は受けないかなあ」
「そうですか。また受ける気になればお越しくださいね」
「そんなことより、今日は食って食ってくいまくるぞ!」

 祝勝会は大盛り上がりで、ギルド内の酒場がしまった後も二次回三次会とはしごし、日が昇るまで続いた。


    ◇◇◇◇◇◇
 


 アテネの戦いからひと月ほど経った頃、屋敷に一通の手紙が届いた。

「誰からだ?」
「えーとこれは……クロエからですか」
「知り合いか?」
「はい。故郷の友人です」

 クレアとクリスタも興味を示し、寄ってきた。

「ほう、友人からの手紙か」
「ええ、なんだか懐かしいですね。もう一年半会っていませんから」
「なんて書いてあったのです?」
「よんでみますね」

 ルナは封筒を開き手紙を広げる。

「えっと。ルナ。元気にしてる? 私はめっちゃ元気だよ! でも最近村の周りに魔物がたくさん出る様になったんだよねー。まあ村の皆で毎日殲滅してるからそんなに困ってないけどねー。まあ、こんな感じだけどいつ帰ってくんの? またお茶したいなー。あ、もしかして村のみんながまだ怒ってるんじゃないかって心配してるんなら大丈夫! 村長さんルナとまた話がしたいって言ってたし! 帰ってきても大丈夫だよ! 私、待ってるからねー。以上です」
「なんか軽いなあ」
「ルナさん、村の人が怒ってるって、何かしたんですか?」
「ま、まあ少々ありまして」
「言いたくないんなら無理に言うことないだろ。それより、ルナはどうするんだ? 帰るのか?」
「そうですね。クロエとはまた会いたいですけど……」
「村人が怒ってそうで行きづらいってことか」

 ルナはうつむき、悲しそうな顔をした。

「なら、みんなで行けばいいじゃん」
「おお! 詩音、いいことを言ったぞ!」
「みんなで行けば怖くないだろ? みんなで庇ってやることもできるし」
「そうですね。私もルナさんの故郷、行ってみたいですし。エスティアス村」
「クリスタはルナの故郷のこと知ってるのか?」
「ええ。エスティアス村ですよね。知ってますよ。そこは村民すべてが魔法使いの村です。それも相当に優秀で、魔法による技術革新でで世界で一番文明が発達している村といわれています」
「なるほどなあ。結構興味湧いてきたな」
「では、やはりみんなでエスティアス村へ行ってみるとしよう」
「おうよ。ルナもそれでいいか?」
「はい」

 ルナは笑って答えた。だがその笑顔はほんの少し引きつっていた。

 次の日、詩音たちは馬車に乗り、王都を後にした。

 


 エスティアス村は馬車を二回乗り継いで四日かけて中継地点の街へ行ったあと、一日歩いたところにある。詩音たちは現在馬車を降り、徒歩で村まで向かっていた。

「流石に遠いなあ」
「流石に疲れたぞ……」
「疲れたとか言うから疲れを感じるんですよ」
「あ、あれ見てください」

 ルナは眼前に異変があることに気付いた。目の前には泥のモンスターが群れを形成していた。

「あれなんだろ」
「フラークマンですね。気を付けてください。フラークマンは魔法で底なし沼を作り、おぼれ死んだ獲物を捕食するんです」

 詩音たちに気付いたフラークマンは魔法を放った。そして周りの足場がどんどん緩くなっていった。

「逃げろ!」

 クレアが叫ぶ。ルナ、クレア、クリスタの3人は沼地から逃げられたが、詩音は逃げ遅れてしまった。

「詩音!」
「心配すんな。これくらい!」

 詩音は足首が沼に浸かったところで、足を動かし始めた。

 水の上を走るためにはどうすればいいだろうか。それは方足が沈む前にもう片足を出せばいい。それは現実的に不可能だって? そう思った人は分かっていない。右京詩音という男の超人さをまだわかっていないのだ。

 詩音は手足を高速で動かし、沼の上を走り始めた。

「沼の上を走ってるぞ…………」
「なんでもありですねあの人…………」

 そのまま詩音は沼を渡り切った。

「な? 何とかなったろ?」
「やってることが非常識ですけどね……」

 詩音たちはなんとかフラークマンを撒き、村のある森へ入っていった。



 森は確かに魔物が多く発生していた。詩音たちは魔物をことごとく倒しながら進んで行った。

 そして、少し行ったところに魔物の中に武装したゴブリンを数体した。

「おーし。あいつらも倒すか」

 ゴブリンは詩音に気付くと慌てて武器を構えた。

「なんだお前! どっから来た!?」
「このゴブリンしゃべるぞ!?」
「ニンゲンのくせに、オレたちの邪魔しやがって! 殺して食ってやる!」

 ゴブリンは詩音に襲い掛かった。詩音は一匹一匹的確に突きを当て、あっという間に倒してしまった。

「なんだったんだ。こいつら」
「もしかしたらこのあたりの魔物が増えていることに何か関係があるのかもしれないな。邪魔をするなとも言っていたし。なにかたくらみが働いてるのではないだろうか」
「そうですね……確かになにかありそうではありますが」
「考えてもしょうがないだろ。わかんないことが多すぎるし。それよりも早く村を目指そうぜ」
「そうですね」

 詩音たちは取り合えず先を進むことにした。



 何時間か歩いて日が落ちそうになったとき、少し先に大きな明かりの集合体が見えた。

「見えました。あれがエスティアス村です」
「すごく明るいな」

 村は遠くからでもわかるほど明るく、都市部の夜景の様だった。

「日本を思い出すなぁ。てことはあそこ相当発達してんな、絶対」
「あの光、全部火じゃないって話本当ですか?」
「その話本当か!? クリスタ!」

 目的地が見え、詩音たちは大はしゃぎしていた。

「それも行ってみればわかるさ。もう少しだし、早く行こうぜ!!」

 詩音たちは明かりの方へ走り出した。


 
 
 
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