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ルナとエスティアス村
24話
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「ごめんください!」
詩音がインターホンを押すと、中から男が出てきた。
「どちらさんですか…………」
男はルナの顔を見ると急に不機嫌な表情になる。
「ただいま……」
「帰って来るなと言ったはずだが?」
周りに気まずい空気が漂う。詩音は空気を断ち切ろうと間に割ってはいる。
「ま、まあまあ。せっかく帰ってきたんですし……ね?」
「あんだお前たちは、部外者が口を出すな」
「デスヨネ……」
中から女性も出てきた。
「お客さんにその言い方は失礼ですよ。あ、帰ってきてたのね……ルナ」
「はい。ただいま、母さん」
「お前に帰る家などないわ。さっさと出ていけ」
「いつまでそんなこと言ってるんですかあなたは。もう村の人の誰もルナのこと何も言ってないのに。さ、入ってはいって。皆さんも」
「あ、おじゃましまーす……」
居間も修羅場みたいな雰囲気で詩音たちの胃は結構ピンチだった。
ルナの母が最初に沈黙を破った。
「ルナ、こちらの方たちは?」
「私のパーティーメンバーです」
「右京詩音です」
「クレア・バンガードだ」
「クリスタです」
「そうだったの。私はルナの母のジゼルです。ルナがいつもお世話になっております。」
「い、いやこちらこそ……」
「ルナとパーティーメンバーになるなんてとんだ物好きだなお前ら」
「そういうこと言わないの! お父さん!」
「どういうことですか?」
詩音が苛立ちが混じった声で聞く。
「まさか、ルナお前仲間に話してないのか? それで仲間だとよく言えたな」
「あ?」
「落ち着け! 詩音!」
飛び掛かろうとする詩音をクレアが羽交い絞めにする。
「ならおれが代わりに教えてやろう。ルナはな! 魔王軍幹部の副官だぞ!」
「「「はあ!?」」」
3人はいきなりの発言に理解が追いついていなかった。
「言い方ですよお父さん。正しくは元、です」
「それでも驚きなんだが……どういうことだ? ルナ」
ルナはうつむき、何かあきらめたような表情で事情を話し始めた。
「3年位前に私は魔王軍幹部と会いました。そのときに魔法を教えてやるから魔王軍に入れと言われました。私は魔法はほぼ知っていたので断ろうとしたんです。でも教えてくれる魔法は黒魔法でした。禁忌であると知っていたのですが、好奇心に勝てずに承諾してしまいました。だがら1年の間魔王軍幹部の副官として働くことを条件に魔法を教えてもらってたんです」
「でも今は違うんだろ?」
「はい」
「ならいいじゃんか」
「はい……そうですね、ってえ?」
ルナは思っていた反応と違った反応が返ってきて困惑していた。
「今は違うんだからいいじゃん。まあ今もって言われても何とかする予定だったけど。ともかくなんだとしてもルナは俺たちのパーティーメンバーってことは変わらないだろ」
「そうだな」
「あたりまえです」
「お前はルナが裏切るとは思わんのか?」
「ちっとも。それよりなんでマクシムさんはそんなに怒ってるんだよ。ただただ怒ってるだけじゃ何も解決しないだろうが」
「怒るに決まってるだろうが! 村長の娘であるおまえが、あろうことか禁忌を破り黒魔法に手を出すなど、村長として許せるわけがなかろう!」
「本当にそれだけか?」
「………………お前の言う通りだ。一番はルナが魔王軍に入ったって聞いてめちゃくちゃ心配だったんだ」
「父さん……」
ルナは大粒の涙を流す。
「ルナ。俺はお前が心配で、何もできなかった自分が腹立たしくて今までこんな態度をとってきてしまった。本当にすまなかった」
マクシムはルナに深く頭を下げる。
「父さん……父さん!」
ルナはマクシムに飛びつき、懐に顔をうずめて、泣いた。
「まあ、いい感じに収まったみたいでよかったよかった」
うんうんと感心している詩音にマクシムが言った。
「それはそうと右京、お前がルナを任せられる人間なのか? 人となりはよさそうだが男は強くなくては女を守れん」
「なるほど」
詩音は金の札を取り出した。
「これが一番解かりやすいかな」
「これは……アーレス祭優勝の証じゃないか!」
クレアはどこからか瓶や板を持ってきた。
「詩音。これを使ったらいい。」
「なるほどな。」
詩音は机に瓶を置き、手刀を構える。
「シャアッ!」
手刀を横に振ると、瓶の位置はそのまま、上部だけが切り離され飛んで行った。
次はクレアが持った木の板を手刀で切り飛ばす。
「す、すごい……」
マクシムは目の前の光景から目が離せなかった。
「な、ならこれはどうだ。エスティアス村でも一番硬い金属でできた板だ。これはいけるか?」
マクシムはそういうと板を持ち、身構える。
「シャラアッ!!!」
詩音は回し蹴りで、まるで紙のように金属の板を切り裂いて見せた。
「おお―――」
周りから拍手が沸いた。
「こんなもんですかね」
「いや、右京くんのすごさは十分わかった。アーレス祭優勝の右京詩音といえば魔王軍幹部も討伐していると聞くし、素晴らしいな! よし、右京くん、いや、詩音くん! 婿にこないか?」
「え?」
「ちょ、何言ってるんですか父さん!!」
ルナは顔を真っ赤にして言った。
「これだけの実力と人の好さだ。彼にならルナを預けても全く問題ないし、次期村長を次いでもらいたい。どうだね詩音くん、うちの娘は。俺が言うのもなんだがめちゃくちゃ可愛いだろう。婿に入ってくれれば、娘は詩音くんにあげよう」
「確かに可愛いですよね」
「ちょっ、詩音さん!?」
「まあでもちょっと気が早いと言いますか。自分まだ未成年ですし」
「未成年? なにを言ってるんだ。君の年はもう結婚できるだろう」
「そうなんですか? そうだなあ」
「父さん! 詩音さんも! 話が早すぎます! 私の気持ちも聞かずに勝手に話を進めて!」
「ルナは嫌なのかぁ。なんか告白してないのに振られたみたいな気持ちになってきた」
「べ、別に嫌というわけじゃ」
よくわからない言い合いをしていると、外から大きなサイレンが鳴り響いた。
「魔王軍襲来! 手の空いているものは至急対応してください!」
「すまんな。ちょっと行ってくる」
「あ、自分も行きますよ。マクシムさん」
「本当か! なら詩音くんたちも一緒に来てくれ!」
詩音たちは魔王軍が攻めてきた森の方へ向かった。
詩音がインターホンを押すと、中から男が出てきた。
「どちらさんですか…………」
男はルナの顔を見ると急に不機嫌な表情になる。
「ただいま……」
「帰って来るなと言ったはずだが?」
周りに気まずい空気が漂う。詩音は空気を断ち切ろうと間に割ってはいる。
「ま、まあまあ。せっかく帰ってきたんですし……ね?」
「あんだお前たちは、部外者が口を出すな」
「デスヨネ……」
中から女性も出てきた。
「お客さんにその言い方は失礼ですよ。あ、帰ってきてたのね……ルナ」
「はい。ただいま、母さん」
「お前に帰る家などないわ。さっさと出ていけ」
「いつまでそんなこと言ってるんですかあなたは。もう村の人の誰もルナのこと何も言ってないのに。さ、入ってはいって。皆さんも」
「あ、おじゃましまーす……」
居間も修羅場みたいな雰囲気で詩音たちの胃は結構ピンチだった。
ルナの母が最初に沈黙を破った。
「ルナ、こちらの方たちは?」
「私のパーティーメンバーです」
「右京詩音です」
「クレア・バンガードだ」
「クリスタです」
「そうだったの。私はルナの母のジゼルです。ルナがいつもお世話になっております。」
「い、いやこちらこそ……」
「ルナとパーティーメンバーになるなんてとんだ物好きだなお前ら」
「そういうこと言わないの! お父さん!」
「どういうことですか?」
詩音が苛立ちが混じった声で聞く。
「まさか、ルナお前仲間に話してないのか? それで仲間だとよく言えたな」
「あ?」
「落ち着け! 詩音!」
飛び掛かろうとする詩音をクレアが羽交い絞めにする。
「ならおれが代わりに教えてやろう。ルナはな! 魔王軍幹部の副官だぞ!」
「「「はあ!?」」」
3人はいきなりの発言に理解が追いついていなかった。
「言い方ですよお父さん。正しくは元、です」
「それでも驚きなんだが……どういうことだ? ルナ」
ルナはうつむき、何かあきらめたような表情で事情を話し始めた。
「3年位前に私は魔王軍幹部と会いました。そのときに魔法を教えてやるから魔王軍に入れと言われました。私は魔法はほぼ知っていたので断ろうとしたんです。でも教えてくれる魔法は黒魔法でした。禁忌であると知っていたのですが、好奇心に勝てずに承諾してしまいました。だがら1年の間魔王軍幹部の副官として働くことを条件に魔法を教えてもらってたんです」
「でも今は違うんだろ?」
「はい」
「ならいいじゃんか」
「はい……そうですね、ってえ?」
ルナは思っていた反応と違った反応が返ってきて困惑していた。
「今は違うんだからいいじゃん。まあ今もって言われても何とかする予定だったけど。ともかくなんだとしてもルナは俺たちのパーティーメンバーってことは変わらないだろ」
「そうだな」
「あたりまえです」
「お前はルナが裏切るとは思わんのか?」
「ちっとも。それよりなんでマクシムさんはそんなに怒ってるんだよ。ただただ怒ってるだけじゃ何も解決しないだろうが」
「怒るに決まってるだろうが! 村長の娘であるおまえが、あろうことか禁忌を破り黒魔法に手を出すなど、村長として許せるわけがなかろう!」
「本当にそれだけか?」
「………………お前の言う通りだ。一番はルナが魔王軍に入ったって聞いてめちゃくちゃ心配だったんだ」
「父さん……」
ルナは大粒の涙を流す。
「ルナ。俺はお前が心配で、何もできなかった自分が腹立たしくて今までこんな態度をとってきてしまった。本当にすまなかった」
マクシムはルナに深く頭を下げる。
「父さん……父さん!」
ルナはマクシムに飛びつき、懐に顔をうずめて、泣いた。
「まあ、いい感じに収まったみたいでよかったよかった」
うんうんと感心している詩音にマクシムが言った。
「それはそうと右京、お前がルナを任せられる人間なのか? 人となりはよさそうだが男は強くなくては女を守れん」
「なるほど」
詩音は金の札を取り出した。
「これが一番解かりやすいかな」
「これは……アーレス祭優勝の証じゃないか!」
クレアはどこからか瓶や板を持ってきた。
「詩音。これを使ったらいい。」
「なるほどな。」
詩音は机に瓶を置き、手刀を構える。
「シャアッ!」
手刀を横に振ると、瓶の位置はそのまま、上部だけが切り離され飛んで行った。
次はクレアが持った木の板を手刀で切り飛ばす。
「す、すごい……」
マクシムは目の前の光景から目が離せなかった。
「な、ならこれはどうだ。エスティアス村でも一番硬い金属でできた板だ。これはいけるか?」
マクシムはそういうと板を持ち、身構える。
「シャラアッ!!!」
詩音は回し蹴りで、まるで紙のように金属の板を切り裂いて見せた。
「おお―――」
周りから拍手が沸いた。
「こんなもんですかね」
「いや、右京くんのすごさは十分わかった。アーレス祭優勝の右京詩音といえば魔王軍幹部も討伐していると聞くし、素晴らしいな! よし、右京くん、いや、詩音くん! 婿にこないか?」
「え?」
「ちょ、何言ってるんですか父さん!!」
ルナは顔を真っ赤にして言った。
「これだけの実力と人の好さだ。彼にならルナを預けても全く問題ないし、次期村長を次いでもらいたい。どうだね詩音くん、うちの娘は。俺が言うのもなんだがめちゃくちゃ可愛いだろう。婿に入ってくれれば、娘は詩音くんにあげよう」
「確かに可愛いですよね」
「ちょっ、詩音さん!?」
「まあでもちょっと気が早いと言いますか。自分まだ未成年ですし」
「未成年? なにを言ってるんだ。君の年はもう結婚できるだろう」
「そうなんですか? そうだなあ」
「父さん! 詩音さんも! 話が早すぎます! 私の気持ちも聞かずに勝手に話を進めて!」
「ルナは嫌なのかぁ。なんか告白してないのに振られたみたいな気持ちになってきた」
「べ、別に嫌というわけじゃ」
よくわからない言い合いをしていると、外から大きなサイレンが鳴り響いた。
「魔王軍襲来! 手の空いているものは至急対応してください!」
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「本当か! なら詩音くんたちも一緒に来てくれ!」
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