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第一章★
014:大量の消滅。
しおりを挟む――さらに同時刻
■大凶高校_校舎内
(上杉 昇)
生徒の1人が時間稼ぎに戦ってくれると言った。俺は最優先すべきことを考え屋上から他の生徒を連れて降りた。
20人くらいを引き連れて移動をする。皆、選りすぐりのメンツで相手代表への奇襲のために編成されている。
それにしても生徒会長は何故前線に来ないのだろうか。恐らく校内で一番強いはずだ。生徒会のメンバーも草壁さんしか来ていない。会長なりになんか考えているのだろうか。
――タッタッタツ
走りながら俺は考える。それにしても相手はどうなっているんだろうか。
色々な場所から悲鳴や銃声、金属音が聞こえるから戦闘は行われている。だが、予想では大凶高校に乗り込む途中で敵と接触するはずだった。
なのに大凶高校は立心館の攻撃陣をすんなりと敷地まで受け入れていた。どういうことだろうか。
俺達は暗い廊下を走り階段を降りる。
広い空間に辿り着く。
ここは体育館のようだ。高い天井からはわずかながら明かりが灯っている。なんか薄暗い。あえてそうしているのだろうか。
「………! 」
気づく。体育館の地べたには何人もの殺されてしまった生徒が横たわっていた。
ん?なんか…なんだろう。だが、敵味方両方だが傷のつき方がややおかしく思えた。
「あのー…上杉さん。なんか変じゃないですか?」
ふと後ろから話しかけられる。確か、体を金属に変える靴を使う女だ。名前は植村だっけ。ツインテールの可愛い女の子だ。
「ああ、確かにな。まるで一太刀で一気に全員を切り捨てたような殺られ方だな」
――ガタ
物音がし、生徒達に緊張が走る。俺は辺りを見回すと体育館の端に動く人影がいた。俺は他の生徒を待機させ、その人影に近づく。制服は俺達と同じだから味方か。
「お前だけか生き残りは? 」
「あ、ああ……」
生き残りは男で手には支給品と思われるボクシンググローブを着けていた。
――シュュュュュュュッ
急に辺りが騒がしくなる。よく見ると周りの死体から白い煙が出ている。
『し、死体が消滅していく!? 』
『な、なんで!?』
生徒の何人かがヒステリック気味に叫び混乱している。俺もさすがに驚いていた。
あっちこっちで悲鳴が上がる。
死んでいる死体が消滅していっていやがる…。死んだら消えるのか。死んだら何も残らないのかよ…。生きていた痕跡すらも。
「…皆一撃で死んでいったんだ。妙な…武器で」
ボクシンググローブの男は震えながら呟く。
「仲間は誰に殺られたんだ?教えてくれ」
「……キタムラって名乗ってた」
なるほど…大凶高校で高Lvのうちの1人と聞いている。そいつがこのあたりにいるのか。
「よし、お前は怪我はあるか? 」
「ない…です」
怪我がある奴は戦闘終了さえしていれば立心館の体育館に強制送還されるらしい。これは俺達の高校だけで、回復組の誰かさんの能力ならしい。
「よし、お前の名前は?俺は上杉 昇」
「藤吉 和義です。二年生の…」
「ウチと同じクラスの男の子です。先ほど屋上に残った芹澤君ともクラスメートです」
「そうか。分かった」
もう既に体育館はすっかり戦いの跡がなくなっていた。血も死体も。
俺がB班の生徒達の場所へ藤吉と戻ろうとした時どこからか足音が聞こえた。
――コツ
――――コツ
体育館に足音とハキハキとした男の声が聞こえる。
「やあ、君達は立心館の学生達かい?」
――ヒュオッ
どこか飄々とした声がする。同時にビュオッっと風切り音がし、B班の生徒達の体に線が走った。
「……!! 」
体が半分になる。上半身がボトボトと牡丹の花のように崩れ落ちていく。
「――うわぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁッ!! !!」
藤吉は頭を抱え悲鳴を上げる。
混乱しているようで我を忘れている。
俺は足音と声のした方を見ると、天然パーマの不思議な人物がいた。服装は勿論、制服で手には変なヒモみたいな物を持っている。いや、鞭か。
「あ、危なかったですっ!上杉さんは大丈夫ですか? 」
さっきの攻撃を金属化で逃れたのか植村が俺の所に駆け寄ってくる。
「おい、二人は逃げろ。ここは俺が残る」
俺は二人に大声で言う。ただ、嫌な汗が噴き出ていた。正直余裕がなかった。
「い、嫌です!上杉さん1人じゃ死んじゃいます! 」
植村はまだ体育館に残っている。普通の女の子ならもう逃げ出している。意外と勇敢な女の子なのだと俺は思った。見た目は気弱そうでお嬢様みたいな雰囲気なのに。
「大丈夫だよ。皆まとめて殺すからさ。らーくぅーにしてあげるよ」
天然パーマはそう言い、鞭を構えニヤニヤと笑っている。顔は狂気に満ちてる。普通の高校生だったやつが随分と殺人鬼らしくなってるじゃねーか。
少しでも二人が逃げる素振りを見せれば攻撃をしてくるだろう。
「おぉぉおぉぉおぉぉおぉぉおぉォォおぉォォおぉォォおぉォォおぉォォおぉォォおぉォォおぉォォおぉォォおぉォォっ!! 」
俺は二人を置いといて走り出す。さすがに戦いに参加させるわけにはいかない。俺が倒す。
俺は右手の指に嵌め込まれた指輪に視線を向ける。
俺の支給品は指輪だ。上空じゃ魔法の絨毯に形状を変化させた。だが、これは本当の能力じゃない。
この指輪の本当の能力は好きな両手に持てる限りの質量の物に姿を武器変えるというのが能力だ。
存在力をゴッソリ使うから連発はできないがかなりのレアな武器だと分かっている。
「アァあァァッ!!」
指輪は青白く発光する。俺は大きな大剣をイメージする。指輪は形状を変えていく。
俺は片手に大剣を持ち、握り締めていた。
相手はきっと相当の強さのはずだ。気持ちを引き締める。
体育館には対峙する二人。
俺が先に動くか。
「…!! 」
俺は一気にキタムラとの間合いを詰め、大剣をキタムラに突き刺そうとする。
「切り刻んでやんよ」
奴のヒモ状の物が突然発光しだす。同時に跳躍する。奴は上から俺の大剣を真っ二つにした。
「軟らかいね君の武器。手加減が難しいなぁー」
キタムラは着地し、一気に俺に駆け出してくる。
やつのレベルもおそらく100は超えているだろう。俺のレベルは108。勝てない相手じゃないはずだ。戦争は始まったばかりでお互い初期ステータスのままだ。レベルに差はそこまでないはず。
俺は武器を大剣から変えることにする。大剣は接近戦には向かないし、何より奴とは接近戦は避けるべきだ。
右手が再び青白く発光する。俺の手には拳銃がある。どこにでもある普通の拳銃だ。
何発も連続して撃ちキタムラを遠ざける。
普通拳銃の弾なんて見えず避けられないのだがナイトメアに来てから生徒の身体能力は格段に上がっているそのために拳銃の弾を避けるのは難しい話ではなかった。
「へー、便利な支給品だね」
拳銃の弾はキタムラを襲う。奴はそれを全て光の鞭で叩き落としてしまう。まずいな。
「ふふふ、まだまだだね」
「うるせぇ! 」
「その武器は想像したものを創り出すんだろう?思い切って大砲とか戦車とか創っちゃえよ」
「創りたいが限界があるみたいでね。そもそもどこまで創れるようになるのかも分からん」
「なんだ…。つまんねーの」
「…!! 」
「君に飽きちゃったよ」
奴は凄まじいスピードで一気に俺の懐まで来る。
やべぇ。
俺はジャンプし避ける。
俺のいた場所に光の鞭が空を切る。
俺は奴に向けて拳銃を向けて撃つが奴は光の鞭で弾く。跳躍し俺を追ってくる。俺はバスケットのゴールネットを足場に拳銃を撃つがやはり弾かれる。
「死んじゃえ」
奴は鞭を戸惑うことなく俺に向けて下ろしてきた。
…………
……
…
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