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第一章★
020:題名のない本。
しおりを挟む――由川・草野戦闘開始から数分後
■大凶高校_地下室
(大和 真)
俺は傷ついた身体を起き上がらせる。
視線の先には生徒会2人が戦っている。戦闘は激化していてニシノもかなりの負傷をしている。
弓矢の女子生徒は肩から流血している。かなり深傷を負っているけど怪我をもろともせず弓矢を次々と放っていた。
もう一人は男でなぜか普通のギターを振り回している。
ニシノは変わらず大量の手裏剣を操っていて、二人を近づけないようにしていた。戦いのレベルが違う。
3人の戦闘を見ながら俺はホトケの言葉を思い出していた。
”この世界は存在力で動かされている”と言っていた。そしてその存在力は人のカリスマ度で決まってくる。
生徒会メンバーは校内選挙で決まる。当然、認知度も人気もそこそこないと入れない。だからなのか。あの二人も強いと思う。
俺は身体をなんとか動かし藤吉の安否を確認する。大丈夫だ。気絶しているだけだ。問題はナルだ。ニシノの手裏剣攻撃の直撃を受けているのだ。
地面に仰向けに横たわるナルの傷口を俺は確認する。傷口は思ったよりは深くはない。ただ、切り傷の数が多いから出血量がやばい。肩の傷が一番、大きく血が周りの地面を真っ赤に染めていた。
「おいナル?」
返事がない。
どこかもっと安全なところに移動したい。
俺は2人を引きずるように運び、最初の地下施設入口付近にまで戻る。ここなら二人は大丈夫だろう。二人とも死んではいない。俺は安堵の溜息をつく。
回復組に引き渡せばしっかり傷は治してくれるようだ。
ーーカァァァァア
やがて、藤吉とナルが少しずつ白い光に包まれ消えていく。
先程、草壁さんがMSPから回復組に連絡してくれたとのこと。相坂さんという人が回復組の隊長らしくその人に治してもらいなさいと言っていた。
俺達3人は時期に立心館へ戻してくれるよう取り次いでくれている。
そして二人は無事、立心館に戻れたようだ。俺1人だけになる。
「俺もそろそろ戻るのか」
俺もかなりの深手だ。
手裏剣で刻まれた傷痕が痛々しい。
「………………」
だかしばらくしてもいっこうに帰還の気配がない。
忘れられてるのだろうか。少し不安がよぎり始めた時、俺の身体は光だす。一人安堵の溜め息をつき、光に身を委ねる。
なんか、もう色々とあって酷く疲れていた。でも今は生き残れさえすれば良い。生きていることに感謝をする。
頭が真っ白になり、頭がぐるぐるとする。
しばらくして、意識が戻り俺は目を開けた。
◇◇◇◇◇◇
「………え!? 」
目を開けた先には土、岩、砂利、そしてでかい洞穴があった。
俺はでかい洞穴に近づき、岩肌に触る。
なんだこの場所は?
周りは霧に埋もれてよく分からないが空気が澄んでいる。都会とかじゃなさそうだ。俺は地下にいたんだよな?
ここはどう見ても立心館に見えないしどうなってるんだ?
焦りが見え身体が冷や汗に滲む。俺は地面の砂利を歩き洞穴への入り口の前に立つ。看板が立っていた。
木製だが風食されていてぼろぼろだ。
文字が書いてあるみたいだが全然読めない。
「……どこなんだよここ……」
分かることは立心館高校でも大凶高校でもない。それだけだ。
回復組の相坂さんには負傷者を察知して本校に帰還させる能力があると聞いている。恐らく俺はその能力で大凶高校から立心館に戻ったはずなんだけど、ここはあまりにも立心館とは似ても似つかない。
ここはどこなんだ?
洞穴に風が吸い込まれていく。まるで、俺を誘っているようだ。俺は張られた鉄線を乗り越え、洞穴に入る。まるで誘い込まれるように。
「……………うっ」
足場が悪い。中はジメジメとしていて岩肌が湿っている。暗くて分からないからMSPをライト代わりに使う。
所々、地面には水溜まりがある。どこかに地底湖でもあるんじゃなかろうか。
俺は重い身体を動かし奥へと進む。しばらく進むと何故か壁が前に立ちはだかった。
「行き止まりか?」
どうみても岩が道を塞いでいた。
だけどこの岩はどこか、人工的に感じる。ちゃんと加工された岩のようだ。
俺は表面に触わり観察をする。
「…………!!」
岩には四角に穴が空いていた。俺は四角く作られた穴を覗いてみる。貫通しているわけではないみたいだ。
中には何かある…?手を伸ばし、取ろうとする。大抵こういう穴に手を入れると何か罠がありそうだと脳裏によぎる。真実の口みたいだ。
どうか、何もありませんように。
無事にゆっくりと何かを取り出せて俺はそれを見た。
「…………本?」
題名は何も書いていない。なんだこりゃ。題名のない本なんて聞いたこともない。
俺はページを試しに捲ってみた。
「……………何にも書いてない?」
わけが分からないが一応、半分、無意識に懐に入れた。間違いなくガラクタだが。
「……………」
するとその瞬間また俺の身体は光に包まれ始めた。何がどうなってるのか全く分からん。
でも、まるで俺をここに来させたかった。そして本を渡したかった。そんな気がする。光に俺は身を委ねた。
今度こそ立心館に戻ってくれ。
ついに周りがブラックアウトし俺の意識は消えた。
…………
……
…
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