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第二章★
052:何かを感じる……。
しおりを挟むーー開戦から3時間半
■星華高校_理科室
(大和 真)
「良いコンビネーションですね。お互いをよく理解出来ているみたいですね。微笑ましい……」
元々、理科室だった場所はビーカーやフラスコの破片が床に散らばっていた。窓ガラスは全て割れていて机はぺしゃんこになっていた。
「ぐだくだ喋ってねーで来いよ!」
恭二は鎖付き鉄球を遠心力を使い、横に振る。
天王星は超スピードで鉄球を避け、恭二に接近し、神威刀を2本同時に縦に振る。
「――がっ! 」
「恭二!? 」
俺はまずいと思い、水神の領域の力で恭二の元に一気に駆け寄ろうとする。
「来るなっ! 大丈夫だ! 」
恭二は跳躍し、鉄球を引き戻す。そして天王星の刀の追撃を鉄球で防ぐ。そこを沙也加が重力弾を放ち、天王星は一旦、退く。
「ふふふ、君達では俺には勝てませんよ。Level差が大きいですから」
天王星は少し笑いながら言うと沙也加が不意に重力弾を撃つ。
「…!? 」
「Level差がなによ! 絶対にあんたなんか倒して、私達は現実世界に帰るんだから! 」
「その通りだ。それにLevelが全てじゃない」
俺はそう言い、沙也加と恭二にアイコンタクトをした。
理科室に緊張が走り、俺は足に力を入れる。水神の領域を一旦解除する。草薙刀に水が吸い込まれていく。
足場が普通の床に変わる。
「何かをする気ですね。なら、オレもそろそろ本気で行きますね」
「沙也加まだかっ!? 」
恭二が沙也加に聞くと沙也加は首を横に振る。額には大粒の汗が見える。
「どうやらあの子がなにかするみたいですね。可愛い女の子を殺すのは忍びありませんがしょうがありませんね」
天王星は動き出した。
凄まじいスピードで一気に接近してきたと思ったら目の前から消える。
「…!? 」
鉄のぶつかり合う乾いた鈍い音が響き渡る。少し火花が散るのが見えた。
「恭二っ!? 」
「真も来い! 俺と真でコイツを相手にする。沙也加を守れ! 」
「分かった! 」
天王星が沙也加に向けて降り下ろした刀を恭二が受け止めていた。
俺はそこに駆け出し、草薙刀の力を使う。草薙刀からデカイ水の弾を何発も放つ。
「――っふん! 」
天王星は恭二の鉄球をいなし、俺は天王星の懐に入る。
会長が教えてくれたんだが、草薙刀の能力はオート式と手動式の二種類がある。水神の領域と言う技は、存在力を消費して初めて使うことができるようになる。
だけど、常に草薙刀に纏っている水はオート式で存在力を消費しない。この存在力を消費しない能力を操る術を会長から学んだ。
「おおぉオオぉおオおッ! 」
俺は草薙刀の水を使い、刀の刀身を伸ばした。
「…っつ? そう来ますか! 」
天王星もこれには驚き、神威刀が何か、音声を出した。俺は気にせず刀を振り落とした。
「…! 」
「なっ…まじかよ? 」
恭二が後ろから驚愕の声を上げていた。俺の刀は天王星の肩だけを抉るのみだった。要するに天王星は軽症だった。
「――お前……まだ早く動ける……のかよ? 」
「ふふふ、さっきまでのが"音速術 起"という技でしたが、今使っているのは"音速術 承"です。おかげで存在力をだいぶなくなりましたね」
天王星はどこか雰囲気が変わり始めていた。天王星は肩の傷を確認し、俺らに言う。
「遊びは終わりだ。そろそろ殺しにかかります! 」
天王星の刀が青白く輝き、機械の音声が不気味に流れる。
━━━━━━━━━━━
※技発動!
ーーーーーーーーーー
★衝撃刃
━━━━━━━━━━━
天王星の二本の刀が携帯のバイブのように振動し、まるで悲鳴のような甲高い音を奏でている。
「あれはまずいぞ!沙也加はまだか?」
「もう少しかかるよ!どうしよう!?」
「恭二! ここじゃ、逃げ場がない!」
「確かにそうだな。よし、沙也加と真!こっちに来い!」
恭二が既に割れている窓ガラスから飛び降りた。
「沙也加! 」
俺は沙也加をおんぶし、窓から飛び降りた。
「待ちなさい! 」
天王星も後を追って理科室から飛び降りる。
落下中、下を見ると真下はテニスコートだった。オムニのコート。さすが星華高校だ。設備が整っている。
着地し、沙也加を下ろす。
「ありがとう真」
「いえいえ。沙也加は存在力を練ってて。あの技を使うんだよね?」
「うん」
俺と恭二はテニスコートを見渡し、天王星の着地した場所を確認する。
「よし、俺が行くぜ」
恭二が一歩、歩み出ると俺が恭二を止め、言う。
「俺もいけるよ!」
「……ああ、でも真は存在力大丈夫か?」
俺は頷き、俺と恭二は天王星に向かって同時に走り出した。
天王星の刀は依然として、光り輝き、共鳴している。おそらくあれに触れるとアウトだろう。
なら、遠距離攻撃で様子を見るか。
なら水神の領域よりもオートで使える水を使うことにするか。俺は草薙刀に力を込め、刀身から水が溢れ始めた。
恭二は鎖付き鉄球を振り回し、天王星に向けて放っていた。
「遠距離攻撃だなんてオレには無駄ですよ」
「…! 」
今までとは段違いなスピードで天王星は恭二に迫る。恭二も目で追うのがやっとみたいだ。
恭二は鉄球を防御に使おうと鎖で手繰り寄せようとしていた。
「無駄ですよ」
天王星は一気に恭二の懐に入り込み、刀を振り上げた。
「おらっ! 」
恭二は咄嗟に左手に力を込め、青白く発光すると左手からも新たに鉄球が召喚され、それで防御する。
「はっ、これでテメーの攻撃は効かな――!? 」
鉄球はいきなり砕けちり、恭二は唖然とする。
「ほら、ボーとしてる暇はありませんよ」
また天王星は超スピードで、恭二の後ろに回り込む。沙也加は存在力を練りながらもはらはらと恭二を見ていた。
これはまずい。
俺も恭二の元に行き、奴の刀身は直に触れたらまずいのは明白だから俺は刀身に水を張らせていた。
「…っへぇ。なかなか……」
「らぁぁぁぁあぁぁァぁぁあぁぁァぁあぁぁっ! 」
俺の草薙刀と奴の神威刀の刀身がぶつかる。
鈍く乾いた音がテニスコートに響き渡る。 そのまま、俺は水を使い、上手く衝撃をいなした。
「いいぞ真! 」
恭二が跳躍し、また攻撃を繰り返す。
善戦しているように見えるけど今回、天王星と恭二は武器の相性が悪い気がする。いつもの恭二なら冷静にサポートに回ったりとか他の戦い方をしそうな気もするけど、この戦いの中でだんだん強引なやり方になってきている気がする。
小回りとスピードのない武器は今回危険すぎる。それは恭二も分かってはいるはずだ。
なんだろう…頭の良い、恭二らしくない気がしていた。どこか無茶な戦い方をしているような…そんな気がした。気のせいかな…。恭二は呼吸が荒く目だけは爛々としている。
存在力不足?いや、まだそんなに使ってないはずだし、それはない。沙也加もどこか恭二を不安げに見ていて、チラチラと俺に目で語りかけてくる。
俺は水の弾を放ち、天王星を奥のコートまで引かせた。
そして俺が大凶高校戦の後に覚えることができた二つ目の技を発動する。
━━━━━━━━━━━
※技発動!
ーーーーーーーーーー
★水神の葵鱗
━━━━━━━━━━━
俺は恭二の手を掴み、沙也加の元に駆け出し、三人で集まる。
「――へぇ、作戦タイムですか?」
俺ら三人の周りの人口芝のコートから水が溢れだし、俺らを囲んだ。
「まあ、良いです。待ちましょう。弱者への労りです」
もっともこの防御は簡単には破れないはずだ。水が180度囲んでいる中で、恭二に話しかける。
水が激しくぐるぐると俺達三人の周りを高速回転している。まるで水の竜巻。ゴウゴウと水がうねる結界の内側で、恭二に俺は聞く。
「恭二は体調が悪いの? 」
「私も確かに違和感を感じてた。恭二らしくないよ」
恭二はだんだん、頭脳を使った戦いをしなくなってきたのだ。どちらかというと力任せな感じだ。
恭二にもスピードが速い天王星を相手にそれでは駄目なのは分かっているはず。
「……いや、別になんでもないと思う」
そう言いつつも、身体はふらふらしている。目だけはやけにギラついている。
「なら、存在力のほう?」
「いや、それはないよ。だって恭二にMSPを向けて計ってみてもまだ存在力はあるみたいよー」
沙也加がMSPをポッケにしまい直す。
原因が分からない今は、できる最善の策は沙也加の能力の発動させることだ。
「沙也加はもういける? 」
「うん。ちょうど準備できたよ」
恭二を休ませ、水神の葵鱗を解く。水の竜巻の高さが少しずつ下がっていく。
「やっとですか……。待ちくたびれましたよ」
水の向こうには二本の刀を構え、ニヤリと微笑む天王星がいた。
「行くぞ沙也加! 」
「うん! 」
俺は草薙刀を構え、沙也加はグラビディガンをゆっくりと構える。
……………
……
…
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