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3章 大学入学編

小鳥遊美奈の熱愛報道 4

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 お母さんとの晩御飯を終えた私は、リン様が会見を始めると言った19時前になったため、自室に戻る。

 どうやらリン様は私に電話をした後、SNSを使って配信することを告知していたようで、19時前にも関わらず、すでに100万人の方が待機していた。

「SNSでは『配信をします』としか書いてなかったから、何の配信をするか楽しみにしてる人たちが多いだろうなぁ」

 きっと今から配信される内容が私の熱愛報道に関してとは誰も思っていないだろう。
 そんなことを思っていると19時となる。

『あー、あー。聞こえますかー?』

 そのタイミングで首を傾げながら声を出すリン様が画面に映し出される。
 私の想像通り熱愛報道の件に関しての配信を行うようで、リン様が着ている服は週刊⚪︎春に載っている男性と同じ服装だ。

〈聞こえますよ!〉
〈リン様の声だっ!〉
〈耳が癒されるぅ〉
〈今日のリン様もイケメンだよ!〉

 等々、リン様の質問に視聴者が一斉にコメントする。
 私もその流れに乗じて「リン様カッコ良すぎです!」と、質問に対して全く関係のないコメントをする。

『あ、そっか。コメントを見れば分かるのか。みなさん、ありがとうございます』

 コメントの存在に気づいたリン様が苦笑いしながら応える。

〈今日は何の配信ですかー?〉
〈告知だけされたので、何の配信か楽しみにしてました!〉

 そんなリン様にさっそく視聴者が質問をしてくる。

『19時に配信をすることしか伝えませんでしたからね。それだけの情報で150万人の方が集まってくれて嬉しいです』

 現在の視聴者数は150万人だが、これからどんどん増えるため、配信が終わる頃には何万人の方が視聴しているかが予測できない。

『さて、今回の配信ですが、俺は皆さんに謝りたい事があるため配信しました』

 その言葉にコメント欄が荒れる。

〈えっ!活動休止とか言わないよね!?〉
〈リン様、何かやらかしたの!?〉

 等々、リン様が今から謝ろうとしている内容に見当がついていない視聴者が様々なコメントをする。
 そんな中、とある人が私の熱愛報道と結びつける発言をした。

〈え、リン様が着てる服、美奈ちゃんの熱愛報道に載ってた男性と同じ服やね?〉

 そのコメントを見て私は気を引き締める。

「おそらくリン様はこのコメントを拾う。そのことを聞いた視聴者はどんな反応をするのだろうか……」

 そう思い、私はビクビクしながら視聴を続ける。

『あ、今、小鳥遊さんの熱愛報道に載っている男性と同じ服を着てるってコメントした人がいましたね』

 私の想像通り、その人のコメントをリン様が拾う。

〈え、もしかして小鳥遊美奈の彼氏ってリン様なの?〉
〈た、確かに写真に写ってた男と同じ服を着てるぞ!〉
〈待って!リン様の彼女が美奈ちゃんってこと!?〉

 リン様が拾ったことで話題が私の熱愛報道へと移り、今ではリン様と写真の男性が同一人物だと思っている人が多数現れる。

『みなさんが気づいた通り、小鳥遊美奈の熱愛報道に写っている男性は俺です。一般男性ではありません』

 そんな中、リン様が力強く言い放つ。

 すると…

〈えぇーっ!リン様が小鳥遊さんと付き合ってるの!?〉
〈いやぁぁぁぁっ!リン様に恋人がぁぁぁっ!〉
〈う、嘘だよね?リン様に彼女がいるとか嘘だよね?〉
〈ぎゃぁぁぁぁっ!!!私のリン様がぁぁぁ!!!〉

 等々、コメント欄が荒れに荒れまくる。

「みんな驚いてる……というか発狂してる人多いなぁ。でも、みんなの気持ちはわかるよ」

 もし何も知らずに配信を見ていたら私も発狂していた自信があるので、視聴者のことをバカにできない。
 そんな視聴者たちを放置して、リン様が続きを話し始める。

『ですが、俺と小鳥遊さんは付き合ってません。今回、週刊⚪︎春に載っている記事は間違いだらけです。俺と小鳥遊さんは、とある撮影の休憩中に周辺を散歩していただけです』

 そして、私との熱愛報道を否定する。

「み、みんなはどんな反応をするのかな……」

 私はドキドキしながらコメント欄を見る。

〈良かったぁ。リン様はまだフリーなんだ!〉
〈じゃあ、週刊⚪︎春の間違った情報に踊らされただけか〉
〈散歩ってところ以外が間違った情報なんだね〉

 すると、週刊⚪︎春の情報ではなく、リン様の発言を信じる人が大勢現れた。
 中には〈手を繋いでるよね!?本当に付き合ってないの!?〉と、リン様の発言を聞いても納得できてない人はいるが、ごく少数だ。

 しかも…

〈週刊⚪︎春の写真を見る限り小鳥遊さんが写真の男に恋してる風に見えたけど、散歩の相手がリン様だったらそんな顔しちゃうよね!〉
〈うんうん!私でも美奈ちゃんの顔になっちゃうよ!〉
〈リン様の手を引いて散歩するのも仕方ない〉

 と、私のことを擁護するコメントが多数みられる。

「さすがリン様……」

 私が熱愛報道を否定しても、こうはならなかっただろう。
 絶対、一般男性のことを根掘り葉掘り聞かれ、熱愛報道が間違いであることを信じない人が多く現れた。

「しかもリン様だったら仕方ないよねって言ってくれる人が大勢いる。私のミスを擁護してくれるのは嬉しいなぁ」

 視聴者の大半がリン様ファンなので私を擁護するコメントが多いのは必然的だと思うが、そのコメントに私は救われる。

『俺と小鳥遊さんは一緒に仕事をしただけで、彼女とは友達です。それ以上の関係はありません』

〈小鳥遊さんとは一緒に仕事をしただけなんだね!〉
〈休憩中に仲良くしてるところを撮られただけなんだ。2人は災難だったね〉
〈リン様の彼女じゃなくて安心しました!〉

 たくさんの人が週刊⚪︎春の熱愛報道ではなくリン様の言葉を信じてくれたことで、私はようやく気持ちが楽になる。
 その安堵感から身体に力が入らなくなり、その場にペタンと座り込む。

「今になって疲れが出ちゃったよ」

 リン様とのお散歩デートという楽しい出来事があった後、ドン底に突き落とされる。
 そして何事もなかったかのように私のスキャンダルが落ち着く。
 ここ数日間で天国と地獄を味わった私は、ようやく心が休まる。

『では、質問タイムに移ろうと思います。今回の件で聞きたいことがあれば何でも聞いてください。やましいことは何一つないので、何でも答えますよ』

 画面内のリン様が視聴者に向けてそう言った。
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