その悪役令嬢、今日から世界を救う勇者になる

ごーぐる

文字の大きさ
69 / 165
幼少期編

38 疫病の悲劇

しおりを挟む
お兄様と私はその一週間をパタパタと動き回った。
タイムリミットは近く、対マラリア用の薬を量産している。
かといって、到底足りる気はしない。
私はクロロキンを作る魔法を創って魔法使いを総動員させた。

もちろん、私自身も薬を魔法で量産する。
一日でおよそ百ほどはできるのだが、まだまだ足りない。
クロロキンに副作用がないわけはなく、それを考慮した上で私のものは副作用なしで作っているので、魔力消費が激しすぎる。

かといって活動ができなくなるまで魔法を使うわけにはいかない。
緊急事態やとうのマラリアの原虫がやってきたときに対象できなくちゃ困るからだ。
一応、お兄様とお父様に状況把握と薬等の位置、配布の方法を確認させているものの、安心はできない。

そして、遂に迎えた最初の患者報告の日。
あらかじめ配っていたものを含めて大体領民の半数分の薬が出来上がった。
さらに、新しく設立したばかりの薬局と、環境局と、健康研究所(大学内の施設)で医療団を作ってある。
総勢百五十名の精鋭、ちなみに団長は私だ。
一時的なものなので私が団長の方が都合がいいというお父様との話し合いの結果だ。

とはいえ、私がこの場を離れるのはまずいので(主に商会や学校の方が)実際に現場指揮をしてもらっているのは三人の副団長たちである。
お父様は薬学に関しては私に丸投げなので、今回は領政にしか関わってもらっていない。
もちろん、報告等はしているが。

「ルイっ、薬の在庫確認をしてきて!ルーベンスは来ている報告書の書類整理をお願い、一通り目を通してくれないかしら?多いようならチェニーを連れていって構わないわ。あ、お兄様!それが終わったらこっちのをお願いしますわ」
私はお兄様用に用意した机にどんと紙束を置く。
お兄様は不服そうに項垂れた。

「……サァラ~、この激務はいつまで続くんだい?お兄ちゃん早く可愛い妹とデートに行きたいんだけど」
「もう少しの辛抱ですわ、にいに。なぁに、後一ヶ月は休みを取っているではありませんか、大丈夫ですよ」
黙って働け!
領地、領民のために、それが私たちの一生の仕事なんだよ。

「お兄ちゃんは君の健康状態も気になるんだけど」
「それなら安心してくださいませ。ちゃんと毎日五時間寝てますわ」
九時から二時までしっかり熟睡している、ちんまいままは嫌だしね。
「いや、足りないでしょ……」
兄の常識的発言は妹には届いていなかった。

その時、バタバタと足音がしたと思ったら、書類整理に行ったはずのチェニーが慌てた様子で部屋に入ってきた。
チェニーが礼儀作法を飛ばして無断で部屋に入ってくるなんて珍しい、そう思った私は何ごとかとチェニーに問いた。

「大変です、お嬢様!奥様がお倒れになられましたっ!!」
「「!?」」
私とお兄様は同時に立ち上がり急いでお母様の部屋へと向かう。
「お母様のご用体は?!」
思い切り廊下を走っているが気にしない、チェニーの様子からそれほどの事態だと思うから。

「今、医者を呼んでいますが、生憎、実力のあるものは全員出払った状態でして。学生しか捕まえられませんでしたっ。それもどんなに頑張っても到着に三十分はかかるそうですっ!」

ーーー医療団が裏目に出た。

その事実に私は後悔してしまう。
まだ疫病は領でも端っこの方にしか現れていない。
そのため、広範囲で団が散っているのだ。
北に来るほどその数は現状少ない。
蚊は南からやって来るものだからと、先に潰してしまおうと思ったのが間違いだった。

この時期は疫病に加え、風邪などが流行るころ。
医者は皆忙しい時期で、数の少ない教会も満員状態なのだ。
「ーーーラ。サラ、サラ」
ぐるぐるとそんなことを考えていてお兄様に肩を叩かれるまで気がつかなかった。
「……にいに」

「サラ。なにを後悔しているの?それは今すること?君は唯一この家で病気に詳しいんだよ。大丈夫だ、なにかあればお兄ちゃんがどうにかしてあげる。だから勇気を出して」
お兄様はにこりと微笑んだ。
「ーーーうん、ありがとう」
肩が軽くなった私は、落ち着いて部屋に入った。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

幼馴染の許嫁は、男勝りな彼女にご執心らしい

和泉鷹央
恋愛
 王国でも指折りの名家の跡取り息子にして、高名な剣士がコンスタンスの幼馴染であり許嫁。  そんな彼は数代前に没落した実家にはなかなか戻らず、地元では遊び人として名高くてコンスタンスを困らせていた。 「クレイ様はまたお戻りにならないのですか……」 「ごめんなさいね、コンスタンス。クレイが結婚の時期を遅くさせてしまって」 「いいえおば様。でも、クレイ様……他に好きな方がおられるようですが?」 「えっ……!?」 「どうやら、色町で有名な踊り子と恋をしているようなんです」  しかし、彼はそんな噂はあり得ないと叫び、相手の男勝りな踊り子も否定する。  でも、コンスタンスは見てしまった。  朝方、二人が仲睦まじくホテルから出てくる姿を……  他の投稿サイトにも掲載しています。

処理中です...