その悪役令嬢、今日から世界を救う勇者になる

ごーぐる

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学園編

78 いざ、伯爵領へ

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お母様の部屋から戻り、私は早速町娘衣装一式に着替えて、伯爵家に向かうことにした。
「……本気?サラ様」
そんな私の背後にシュタリとウサミミが降り立つ。

「影さん。久しぶりですわ」
「おひさ」
飾り気のない言葉が影らしい。
今日は室内に合わせてなのか茶色の装いだ。

「今日、影が護衛。ぼそっ(正直要らないと思うけど)」
「なにか、言いまして?」
「何も」

こういう気兼ねなさがいい。
本人に言えば調子に乗るから言わないけど。

「それにしても、やっぱりウサミミですのね」
「まあ、影だし」

いやいや、影=ウサミミはおかしい。
そういえば、影一さんもウサミミを着けていたか……。
もしかして一族でそういう決まり事でもあるのだろうか?
今度、影一さんに聞いてみよ。

私はぼけーっと菓子棚を見ている影を見て、苦笑いしながら荷造りする手を止めたのであった。

荷造りを終えた私は影を連れて伯爵領までテレポートする。
「じゃあ、影は見てる。ばいばい」
「はい、頑張ってお仕事してくださいね」

背後からいきなり気配が消えて、さすがだなと思う。
しかし、私は知っている。
影が仕事中にたまに居眠りをしていることを。

「よぉし、いざ、御祖父様御祖母様にご挨拶ですわ!」
私は茂みから外れて伯爵まで歩き出す。
地図を見たかぎり、伯爵家までは一本道で、他に方法が思い付かなかったのだ。

街道に入れば、さすが敏腕で有名なハールス伯爵。
平日なはずなのに、祭りの日のように賑わっている。
もうすぐお母様の弟である長男に家督を譲るらしいが、勿体無いと思ってしまう程だ。

「安いよー!トマト五ペニー!」
ーーー五十円(日本円換算)!?
屋台のおばさんの言葉に思わずパッと振り向いてしまった。

途端、おばさんがニヤリと笑ったのが分かる。
やばい、一瞬日本人に戻っちゃった……。
セールスに弱い系日本人だった私は、賢者時代、買い物をすべて部下に任せていたことを思い出した。

「どうだい、貴族のお嬢さん。お一ついかが?」
「ーーーどうして貴族と分かるのでしょうか?」

一応、チェニーに平民用の服を用意させていたので、私は今、何処にでもいる町娘スタイルだ。
なぜバレたのだろう?

「なんでって、そりゃあそんな肌もつるつるでべっぴんさんな珍しい瞳のお嬢さんだったらねぇ。貴族じゃない方が納得いかないよ。どうせ、お忍びとかだろぅ?うちの領は治安もいいし、そういうやつは多いよ。まあ、トマトの安売りに目をつけるやつは少ないけどねぇ」

なぁるほど。
どうやら私の見た目に問題があったようだ。
うーむ、確かに貴族は美しい容姿の方が多いからなぁ……。
お金がある分、美容に手をかけられるからだろう。
他にも聞きたくない過去とかも関係していそうだ。

「……じゃあ、一つ貰おうかしら」
「はいよ、硬貨の使い方は分かるかい?」
「大丈夫よ、親切にありがとう。参考にさせてもらうわ」
「ははは、楽しみなさい、お嬢さん!」

おばさんはトマトを直接渡してくれた。
私は料金を支払って、真っ赤なトマトにかぶりつく。

ふむ、甘い。

私は垂れる汁を溢さないように四苦八苦しながら、軽い足取りで伯爵家に向かうのであった。
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