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学園編

95 パーティーの続き

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何を言うでもなく、一曲踊れば解放されたので、何事もなかったかのように壁際でご飯を食べていた。
もくもく、やっぱりケーキ以外は美味しいんだよなぁ……。
しかし、なんというか肉料理が多いのは仕方のないことなのだろうか?
さっきから肉を薄切りにしたやつしか食べていない。

あー、うちの料理が食べたい。
というか、米食べたい。
元より薄味党な私にはこの世界の料理が濃いめで好みでなかった。
既に、米は入手しているが、和食を広めている訳ではないので、食べる機会もそうない。
その内レシピを公開して、研究してもらうかと和食を領地で広める算段を立てて、暇を潰した。

目線があるにはあるのだが、なぜか皆私に話しかけては来ない。
あれか?私が誰か分かんないとか?
いやしかし、先ほどまではお兄様といたのだから誰かくらいわかりそうなものであるが。

そしてお腹一杯になり、ついには魔法の研究を始めた。
警備の人たちが驚いちゃうので結界を張って、感知無効にしながらだが。
ちょうど、最適化したい魔法がいくつかあったので、それを解読し始める。

すると時間はするすると流れていき、あっという間にお兄様が帰ってきた。
「お帰りなさいませ、お兄様。随分と時間がかかりましたわね」
すでに一時間以上は経っている。

お兄様は不機嫌そうに舌打ちをした。
「あの野郎、長々と世間話をしやがって……。サァラ、誰にも話しかけられてない?」
「ええ、お兄様」

今日は影がいないことを知っているので、堂々と嘘をつく。
会っていないといえば、会っていないのだ。

「……そうか」
お兄様はニコリと微笑んで同じく壁に寄り添った。
あり?案外反応薄いですネ?

もっと、長々と愚痴るかと思ったが。
私は怪しいなぁとお兄様の表情を見る。
お兄様は私に探るように見つめられ、少し目を泳がせていた。

ーーーなんか小細工してたな?
おかしいと思ったのだ。
いくらなんでも私は公爵令嬢である。
しかも、宰相の娘。
つり目で美人ではないが、不細工なわけでもないし、普通に媚を売る貴族くらいはいるだろうと思っていた。

この国では、親しくない男性に令嬢が自分から話しかけにいくのはあまりよろしくないとされている。
そして、私には親しいといえる貴族はいない。

このツーセットを理解した上でお兄様は「なら、話しかけられなければいいわけだ」と思ったのだろう。
そしてそれをどうやったのか分からないが、見事に成し遂げた。
まったく、そんなことに頭を使わないでほしい。

「心配性すぎですわ。私だって、多少なりとも狐をどうにかする術は持ち合わせておりますのよ?私はもう十六歳ですわ、流すくらいなら簡単に出来るのに」
「そういう問題ではなく、寧ろ十六だから困っているんだ。天使に虫が付いたらどうする!?」
あくまで小声でお兄様が叫んだ。
小声で叫ぶって器用だなぁ。

「いえ、それが目的でしょう?なんのためにわざわざ出席したくないパーティーに出たと思っているんですの?」
家でファニやティスと遊んだり、魔法研究したり、仕事したりやりたいことは沢山あるのに。

「だったら、来なくてもいいだろ?サァラは一生領に居てよ!」
お兄様癇癪に近いシスコンぶりに頭が痛い。

ふと気がついた。
もしかして、私にもし好きな人が出来たとしても、この兄とお父様よって排除されるのではないかと。
……それは可哀想だな。
なんだか、今世でも一生独身の未来が視えて、泣きそうになったのであった。
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