ある日突然、悪役令嬢になった神童魔法使い

ごーぐる

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1 転生したら断罪寸前の悪役令嬢

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「フィビヤール・フリミリィー、今日をもって貴様との婚約を破棄させてもらう」
「?」
フィビヤールは情けない声を出す。

言い訳のように聞こえるだろうが、誰だって目を覚まして皆目一番にこんなことを言われればこうなるのではないかと思う。
というか誰?どこ?
疑問符しか起こらない中で冷静におとなしくしている私を誉めてほしいくらいだ。
確かに私の名前はフィビヤールであるが、目の前の男と女は知らないやつであって、知りもしない婚約をいつのまにやら破棄するらしい。

「あ、そうですか」

なぜか手に持っている扇を閉じ、収納する。
先ほど婚約破棄宣言をした人はたじろぎ、声を震わせている。

「お、驚いたよ。君は大暴れするものだと思ったのだが………」
「まぁ?婚約破棄をする(らしい)私を目の前にして、他の女性と手を組んでいる不実な方と婚約なんて馬鹿馬鹿しいですし。私、結婚に大きな夢なんか見ておりませんから、仕事の方が好きなんですよね」
「ーーー!?なにを戯れ言を。どの口ががそのような!」

真面目に返せば、真面目に怒られてしまった。
(事実なんだけどなぁ……)
しかし、この状況で話が通じると思った私が間違っているのだろうか。
会話の根本が分からない、相手の意図も分からない、そもそも今どういう状況なのかも分からない、こんな状態で会話が成立するわけないかと結論付ける。

「申し訳ありません、が流石に不本意過ぎるように感じましたのでこれで失礼させてもらいます」
唖然としているのを良いことにささっと扉まで移動する。
巨人でもいるのかと思うくらい大きく豪勢な扉を開き、きらびやかな部屋の外に出ると、これまたきらびやかな階段があり、玄関口には衛兵のような人たちが立ち並んでいる。
衛兵たちは部屋から出てきた私に驚いたが、姿勢を乱すことはなく階段をゆったりと降りる私を見ているだけだった。

夢なのか、死後の世界なのか知らないが、この私は真っ赤なドレスにゴチャゴチャとした宝石の類いとやけに重たい装備で、そのわりに靴はピンヒールと歩きづらいことこの上ない。
重さは軽量でどうにでもできるが、裾の長いドレスを捌くのも面倒だし、足元が見えなくて不安を感じる。
もう見えないしいいかと、五ミリほど浮んでやることにした。

「フィビヤール嬢、待ちたまえ!!!」
長い階段を下り終え、庭が見えたところで婚約者だったそうの男の叫びが聞こえてくる。
「嫌」
私は素直にそれだけ言って、静かに引きついてきた女性と男性に手を引かれて馬が引く車に乗った。

「は、話しはまだ終わりではないんだ、ぞ……」
残された男……第二王子リオネル・ベッソンは途方にくれながらその場で立ち尽くすだけだったそうな。
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