優等生の美少女に弱みを握られた最恐ヤンキーが生徒会にカチコミ決めるんでそこんとこ夜露死苦ぅ!!

M・K

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1. ヤンキー君と優等生ちゃん

5. 生徒会長

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 翌日、登校してくる生徒達の中に、腕を組み昇降口の前で佇んでいる美琴の姿があった。その様はまるで五条大橋の前で仁王立ちする武蔵坊弁慶そのもの。生徒会として美琴が校則違反の生徒を厳しく取り締まっている事を知っている他の者達は特に不思議にも思わず、美琴の横を通り過ぎていく。

「渚さん、おはようございます! 朝から生徒会のお仕事ですか?」
「おはよう。うーん、生徒会の仕事といえばそうなのだけど、今日は少しいつもと違うのよ」
「そうなんですか……なんだかよくわからないけど、頑張ってください!」
「ありがとう」

 いつものように話しかけてくる男子生徒に軽く対応しつつ、美琴は静かに待っていた。そして、それから十分ほど校舎の前に立っていると、周りの生徒達がざわつき始める。その原因をもたらしている男を見た美琴はニヤリと笑みを浮かべ、ゆっくりとその男に近づいていった。

「おはよう」
「……よぉ」

 気怠そうな様子で鞄を担いでいた颯空は声をかけてきた美琴から顔をそむけながらそっけなく返事する。だが、特に気にした様子もなく、颯空の変化に対する周りの反応を楽しんでいた。

「……おい、あれって久我山颯空だよな? 不良の」
「あぁ。あんな野蛮な空気を醸し出している奴なんてうちの学校には他にいないだろ」
「急にどうしちゃったんだろう……?」
「もしかして渚さんが改心させたのかしら?」

 そんな言葉が聞こえてくる。思わずにやけそうになるのを我慢しながら、不機嫌そうな颯空の方を見た。

「意外と似合ってるじゃない。私はそっちの方が好きよ?」
「……お前に褒められても何にも嬉しくねぇよ」

 吐き捨てるように言った颯空を見て、美琴の口角が僅かに上がる。耳からは学生生活に不必要なリングピアス、首からはネックレス、そして禍々しい模様が彫られた極太の指輪もなかった。見た目的には清新学園の生徒に相応しい、とまではいかないが比較的まともになっている。

「まぁ、いいわ。それより、昨日した約束はちゃんと覚えているわよね?」
「……あれ、本気で言ってたのか?」
「当然でしょ」

 昨日の約束、それはもちろん颯空が生徒会に入るというもの。弱みを握られている手前、颯空にはあれこれ口出す事は出来ないが、それでも自分の考えを言う権利くらいはある。

「なぁ、冷静になって考えてみろって。俺が生徒会とか普通にありえねぇだろ」
「なによ? あんただって昨日はノリノリだったじゃない。杠葉ゆずりは先輩とお近づきになれるって」
「シーッ! シーッ! 声がでけぇよバカ!!」

 周りを見ながら颯空は必死に人差し指を唇に当てる。確かに、昨日美琴から生徒会に入るよう命じられ、渋っていた時にその話をされた颯空は少しだけ乗り気になっていたのだが、一晩眠った結果、それがどれだけ愚かしい事か、冷静になった彼にはしっかりと理解することができた。

「とにかく今日の放課後、会長室に行くから心の準備をしておいてね」
「……へいへい」

 とはいっても、美琴がそれを望む以上、颯空にはどうすることもできない。不良と優等生という異色すぎる組み合わせを朝から見て唖然としている他の生徒達を置いて、颯空はため息を吐きつつ美琴の後について校舎の中へと入っていった。

 そして、放課後。宣言通り美琴の手によって生徒会の会長室へと連れてこられた颯空だったのだが……。

「ありえないな。却下だ」

 まるで大企業の社長室のように整然とされた部屋の奥で机に両肘をつき手を組んだ男が、扉の前に立つ二人へ鋭い視線を向けながら冷たい声で言い放った。

「得体のしれない男を入れるほど生徒会は生易しい組織ではない」

 ……まぁ、そうなるよな。

 堂々と椅子に座っている男を見ながら、颯空は頭をかいた。目の前にいるのは清新学園のトップに君臨する生徒会長、神宮司じんぐうじまこと。朝会などに参加しない颯空でも知っている名だ。だが、実物を見たのは初めてであり、それで颯空の抱いた感想は『ただ者ではない』という事だった。
 中学時代、喧嘩では敵なしだった颯空ですら一切の隙を見つけることができない。清新学園というぼんぼんやお嬢様が数多く通う学校の生徒会長など、頭でっかちの真面目君かと思ったら、どうやらそんな事はなかったらしい。まったく、おかしな学校だ。

 おかしいと言えばもう一人。

「生徒会というのは他の生徒の模範にならなければならない。つまり、誰よりも規律や規範を重んじ、どこを切り取っても完璧でいる必要がある。それくらいは理解していると思ったぞ、渚」
「あ、も、もちろんですっ!」

 木の棒でも入っているんじゃないかと思わせるほどに背筋をピンッと伸ばし、敬礼しそうな勢いで美琴が答える。ここに来てからずっとこの調子だった。自分を生徒会に入れたい、という簡単な説明ですら、しどろもどろになりながら十分以上かかったのだ。

「少なくとも俺にはその男がルールを守るような男には見えないのだが?」
「お、おっしゃる通りです!」
「ルールを守れない者が生徒会に入り、どうやって他の生徒に示しをつける?」
「お、おっしゃる通りです!」
「……ダメだこりゃ」

 ポンコツとなり果てた美琴に、颯空は小さく息を吐く。自分のような男に対して毅然きぜんとした態度で接してきた女とは思えない。とはいえ、美琴の様子がおかしいからと言って、このまま黙っているわけにはいかない。生徒会に入る事が出来ず、美琴に秘密がばらされでもしたら目も当てられない。

「おいおい、会長さんよぉ……生徒会長ともあろう男が見た目だけで人を判断してもいいのか?」
「生徒会長として様々な生徒を見てきた。人を見る目には多少の自信がある。それにアポイントもなしで突然目の前に現れた者が生徒会に値するか判断する材料など、見た目ぐらいしかないだろう?」
「いや、まぁそうだけどよ……」
「それとも何か? 俺を納得させるに足りるエピソードでもあるのか?」

 眼鏡越しにギロリと誠が睨みつけると、颯空はグッと口ごもった。。自分が生徒会に入るに相応しいエピソードなどあるわけがない。なぜなら、颯空自身相応しいなどとは思っていないからだ。

「まぁ、でも一応聞いておいてやろう。どうしてお前は生徒会に入りたいのだ?」
「あぁ? そんなの決まってんだろ。えーっと……」

 颯空はガサゴソとポケットを漁ると、くしゃくしゃに丸まった紙を取り出す。

「『生徒一人一人に寄り添う生徒会の一員になりたいから』。うん、そうそれだ」
「…………なるほど」

 ばっちりカンニングペーパーを見ながら言った颯空に、美琴は頭を抱えた。一方、誠の方はジッと颯空の事を見つめている。

「生徒に寄り添う生徒会、ね……」
「生徒会っていうのはそういうもんだろ? 校則を破ってる奴を目のかたきにするだけじゃねぇはずだ」
「あぁ、その通りだ。風紀を乱す生徒は厳しく取り締まり、悩みを抱える生徒には救いの手を差し伸べる」

 誠はゆっくりと椅子の背もたれに寄りかかった。そのまま黙って何かを考えると、静かに口を開く。

「生徒会に憧れを抱く生徒も少なくない。生徒会に入りたい、という生徒もしかりだ。そういう相手を門前払いというのもいささか不憫な話か」
「え? じゃ、じゃあ……!!」

 期待に満ちた表情を見せる美琴に待ったをかけるように、誠は手を前に出した。そして、その手を閉じ、人差し指を立てる。

「明日までに一つでも生徒会らしい仕事をしたら、お前が生徒会に入る事を認めよう」
「なんつー上から目線な、いてっ!」
「ほ、本当ですか!?」

 余計な事を言おうとした颯空の足を踏みつけ黙らせた美琴が前のめりになりながら聞くと、誠はゆっくりと頷いた。

「約束は守る」
「あ、ありがとうございます! 失礼します!」

 頬を僅かに紅潮させながら美琴は勢いよく頭を下げる。そして、颯空の腕をつかむと、そのまま引きずるようにして会長室から出て行った。
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