優等生の美少女に弱みを握られた最恐ヤンキーが生徒会にカチコミ決めるんでそこんとこ夜露死苦ぅ!!

M・K

文字の大きさ
28 / 32
2. ヤンキー君と引きこもりちゃん

14. 真・天の岩戸作戦

しおりを挟む
「よーし、防衛戦気合入れていくぞ!!」
「は、はい!!」
「…………」
「西南からの攻めが厳しい! このままじゃ城壁を突破されるぞ!!」
「私の軍が挟撃する形で進軍する!!」
「流石環だ!! これで西と南も守りは盤石だぜ!! 問題は北と東だ!!」
「東は私と颯空君が同盟を結んでいる勢力から援軍が来る……!!」
「よーし!! そりゃ心強い!! 後は北だけだ!! おい! 北はお前の軍だぞ!? ちゃんと配置したんだろうな!?」
「…………」
「美琴さん、頑張ろうね!」

 いつものように環の家に集まってゲームに興じる颯空と美琴。だが、一人だけいつもと違う。環の声にも応えないまま、美琴は自分のスマートフォンを心ここにあらずといった様子で見つめていた。その頭の中には戦略ゲームに関することなど一切なく、棒立ちの自分の軍をただただ眺めている。

「ま、まずいぞ!! 敵が集中的に北から攻めてきやがる!!」
「っ!! わ、私の軍を今から北に配置するよ!!」
「それはまずい!! 環が止めているから西と南を放置できるんだ!! それなのにお前が動いたら……!!」
「美琴さん!! なんとか凌いで!!」
「…………」
「み、美琴さん?」

 扉越しに環が話しかけても、美琴の耳にはまるで入っていない様子。置物と化している彼女の軍を敵軍が素通りして、颯空の城を攻め立ててきた。必死の抵抗も空しく、そのまま呆気なく城を落とされ、颯空の画面にでかでかと『斬首』の文字が浮かび上がる。キッと眉を吊り上げた颯空は怒りにまかせてスマホをテーブルに叩きつけた。

「おい、てめぇ! やる気あんのか!?」
「え?」
「え? じゃねぇよ!!」

 颯空の怒鳴り声でようやく我に返った美琴が颯空の方へ顔を向ける。その顔があまりにもきょとんとしていたため、それ以上何も言えなくなり、颯空は舌打ちしながら自分のスマホに視線を戻した。

「あ、ご、ごめん。ぼーっとしてた」
「ぼーっと、って……今日はこれで三回目だぞ?」
「……美琴さん、何かあった?」

 遠慮がちに環が尋ねる。まさか環から心配されるとは思っていなかった美琴は目を丸くして彼女の部屋の扉を見た。

「だ、大丈夫よ。大した事じゃないから。心配してくれてありがとうね」
「……そう? それならいいんだけど……」

 見えてはいないと頭では理解しつつも、美琴は笑顔を浮かべる。だが、すぐにその笑顔に影が差した。
 大した事じゃないのは嘘である。今自分が悩んでいるのは、藤代環の今後の身の振り方を左右する重要な事柄だからだ。とはいえ、それを具体的に伝えるわけにはいかない。先ほど二人の目を盗んで確認したところ、環の母親である佳江は彼女に学校との取り決めを話していないらしい。そうである以上、自分がそれを環に打ち明けることはできない。
 とはいえ、明日か明後日のどちらか一日は学校に来てもらわなければ、あのクラスから彼女の席がなくなってしまう。核心には触れないようにして、それとなく学校へ来るように彼女を説得しなければ。緊張を誤魔化すように咳ばらいをした美琴は、自分のスマホを机に置いて、努めて白々しい視線を颯空に向けた。

「それにしても、ここの所毎日毎日環さんの家にお邪魔してスマホゲームをしてるけど、あなた大丈夫なの?」
「はぁ? 大丈夫って何がだよ?」
「中間試験」

 美琴の言葉を聞いた瞬間、颯空の体がピシッと固まる。それだけで美琴の問いへの答えには十分だった。予想通りの反応を見せる颯空に対して、美琴はこれ見よがしにため息を吐く。

「そういえば、今週末から始まる大型連休で勉強するとか言ってたわね」
「……うっせぇな。お前には関係ねぇだろ」
「関係なくなんかないわよ。私が生徒会に推薦している人が落第点を取るようだと困るもの」
「ちっ……」

 颯空が盛大に顔をしかめた。こんなのは環の家でやる必要のない話だという事は美琴も分かっている。これはゆっくりと本題に近づくための布石なのだ。

「連休入れてあと三、四週間。授業を聞いてなかったとしても、十分巻き返せる時間だわ」
「あーもう、説教臭い話するんじゃねぇよ。せっかく楽しく群戦やってんだから、また今度にしろ」
「また今度にしたらその時はその時で適当な難癖付けて、私の話なんて聞こうとしないでしょ?」
「…………」

 もちろん、そのつもりだったのだが、美琴の指摘が正しい事を認めたくないので、颯空は沈黙を選択する。

「私と行動を共にしている以上、本音を言えばトップ三十位には入って欲しいけれど、流石の私もそこまで高望みはしないわ。とはいえ、半分以上の順位は取りなさいよ?」
「おいおい、無茶言いやがるぜ」
「別に無理難題ってわけじゃないでしょ?」
「お前が敬愛する会長が出すものと同じくらいには難題だな」

 スマホをいじりながら颯空が小馬鹿にしたように笑った。普段であればここで彼に噛みついているところだが、今日はそんな事をしている場合ではない。苛立ちをグッと堪え、全く会話に参加してこない環に僅かな不安を抱きつつ、美琴はぎこちない笑みを颯空に向ける。

「ほら、中間試験が終われば楽しい課外授業があるじゃない! だから、頑張りなさいよ!」
「は? 課外授業? なんだよそれ?」
「え……?」

 美琴の笑顔が凍り付いた。颯空の顔を見る限り、本気で分かっていなようだ。よくよく考えたら、それは何もおかしい事ではない。なぜなら、彼は学校に来ても四六時中眠っているのだから。
 だが、それはまずい。このままでは作戦が台無しになってしまう。ここは強行突破するしかない。

「も、もう久我山君たらー! ホームルームの時間も居眠りしてるから大事な話を聞き逃しちゃうんだぞ?」
「え……」

 予想外の展開に内心激しくテンパっているせいで、少しキャラがおかしい美琴を見て、颯空が若干困惑する。しかし、そんな事は気にしていられなかった。今は颯空にどう思われようと関係ない。

「中間試験明けにある課外授業は飯盒はんごう炊飯すいはんよ! 大自然の中で、便利な道具も使わずに私達の力でご飯を作るの! どう!? とっても楽しそうでしょ!?」
「あ、あぁ」

 学校行事にまるで興味のない颯空が課外授業を楽しいそうだと思うわけもないのだが、美琴の余りにすごい剣幕に、首を縦に振る事しか出来なかった。

「あーそういえば、課外授業の班分け、明後日の金曜日だったわよね?」
「はぁ? んな事、俺が知るわけ」
「金曜日だったわよね!?」
「お、おう。金曜日だ」

 血走っているようにも見える美琴の目に恐怖すら感じる颯空。だが、当の本人は次の台詞の事で頭がいっぱいだったため、ドン引きしている颯空になど眼中になかった。

「そうだ、環さん! 金曜学校に来ない? 是非、一緒の班になりたいわ!」

 無邪気な子供のような明るい声で、そして、シャボン玉に触れるような優しい声で美琴が言った。本当はもう少し綺麗な流れで言うつもりではあった。本来、美琴の思い描いていた作戦は、部屋の外から課外授業の楽しさをもうアピールして、環に外への興味を持ってもらうというもの。名付けて、『真・天の岩戸作戦』。キャスティングミスはあったにしろ、割と自然に誘えたのではないか。

 そんな風に思っていた美琴は、答えた環の声を聞いて、自分の甘さを痛感した。

「学校……」

 その声は行き先を見失った子供のようにか細く、四文字の言の葉しか発していないというのに、小刻みに震えているのが伝わってきた。

「環さん……?」

 美琴が困惑の表情を浮かべる。環が今、どんな顔をしているのかはわからない。だが、扉越しでも彼女の纏う空気が変わったのははっきりと感じた。

「あ、あの環さん? 別にそんな深い意味はないのよ? ただ、こうやって仲良くもなれたわけだし、一緒に課外授業の班になれたら楽しいかな、って思っただけで」
「美琴さん、颯空さん」

 慌てて言い訳し始めた美琴の言葉を遮るように、環が二人の名前を呼ぶ。

「ごめん……今日は帰ってくれないかな?」
「……!!」

 予想外の言葉に、美琴は大きく目を見開いた。今までこんなにも明確に拒絶された事があっただろうか。その震える声を前に、美琴の心に罪悪感と後悔の大波が押し寄せてくる。

「た、環さん! あ、あのね!」

 何を言おうとしているのか、自分でもわからない。ただ、このままではまずいと思い、美琴が必死に声をかけようとした。だが、颯空に肩を掴まれ、反射的に振り返った美琴は、彼の無表情の顔を見て口から言葉が出なくなる。

「……帰るぞ」
「っ!?」

 小声でそれだけ言うと、颯空は床に置いていた自分の鞄を担ぎ、廊下を歩いて行った。頭が真っ白になっていた美琴であったが、このままここにいてもどうすることもできないので、夢遊病者のような足取りで颯空の後を追う。

「ごめんね……ごめんね……」

 そんな彼女の耳に環の悲痛な声がいつまでも木霊していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ
青春
神童と言われた天才サッカー少年は中学時代、日本クラブユースサッカー選手権、高円宮杯においてクラブを二連覇させる大活躍を見せた。 将来はプロ確実と言われていた彼だったが中学3年のクラブユース選手権の予選において、選手生命が絶たれる程の大怪我を負ってしまう。 サッカーが出来なくなることで激しく落ち込む彼だったが、幼馴染の手助けを得て立ち上がり、高校生活という新しい未来に向かって歩き出す。 そんな中、高校で中学時代の高坂修斗を知る人達がここぞとばかりに部活や生徒会へ勧誘し始める。 サッカーを辞めても一部の人からは依然として評価の高い彼と、人気な彼の姿にヤキモキする幼馴染、それを取り巻く友人達との刺激的な高校生活が始まる。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件

暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話

水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。 そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。 凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。 「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」 「気にしない気にしない」 「いや、気にするに決まってるだろ」 ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様) 表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。 小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。

処理中です...