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第一話 吉川さんとの関係
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「お兄ちゃん、バター取って」
「はい」
「ありがと」
「もうお父さん、ご飯のときに新聞やめてください」
「ん?お、おう――」
僕の家のいつもの朝の光景。
僕と一つ下で同じ学園に通うひなは食パンにハムエッグと生サラダ。
父さんはご飯に味噌汁と焼き鮭。
母さんは台所とダイニングテーブルを行ったり来たり。
朝の情報番組の三回目のじゃんけんタイム。
「今日はパーだ!」
いつもギリギリで入力するひな。よくもまぁそんなギリギリで選択できるなと感心する。
そしてその結果は――
何やらお笑い芸人が複数でいつものじゃんけんメロディを歌いながら出したのは、グー。
「よし勝ったー!今日は良いことあるわ!」
ひなが右拳をつい上げて勝利の勝鬨を上げる。
「はいはい、じゃあ今日はひながご飯作ってね!」
ようやくテーブルについた母さんが父さんと同じ朝
ご飯の焼き鮭の身をほぐして口に運ぶ。
「えー!」
ひなが母さんにブーイングする。
その時――
ピンポーン……
呼び鈴が鳴った。
一体誰だろう?壁の時計を見ると七時四十分を指していた
「誰よ、このクソ忙しい時間に!」
母さんが苛ついた声を出す。そりゃようやくご飯にありつけたばかりなのだから仕方ないよね。
「あたしがでるよ」
と、ひなが玄関に向かう。
僕もあまり余裕がないので手持ちの残りのパンを口に放り込んで薄めのコーヒーで流し込んだ、その時――
ドタドタドタとひなが廊下を走ってきて勢いよくリビングの扉を開けた。そのひなの顔には驚愕という文字がそのまま書かれてあるようだ。
「ひな!女の子なんだからそんなに……」
という母さんの声を遮るように
「今はそんな場合じゃないの!」
そう言って、僕に近すぎるくらいに近づくと、
「お兄ちゃん、あ、あの……」
と、荒げた息でどもるひな。
「なんだよ、近いよひな」
押しのけようとする僕の手を取ったひなが更に顔を近づけて、
「だから近い……」
「お兄ちゃん、吉川先輩とどういう関係なの?」
「へ?」
ど、どどど、どーゆー関係って……クラスメイト……でも告白していいって言ってもらったから恋人?……でも結婚が云々……僕と吉川さんってどんな関係?
僕が言い淀んでいると、ひなはまた玄関に戻って今度は、吉川さんと一緒に戻ってきた。「朝食中にお邪魔いたします」と礼儀正しくそして優雅に笑顔でお辞儀をする吉川さん。やっぱ可愛いです。父さんも母さんも吉川さんの可愛い笑顔にやられている表情。
そんな空気の中――
「吉川先輩、家のお兄ちゃんとどういう関係なんですか?」
とひなが吉川さんに聞くと、吉川さんは「あらそんな事」と言いながら僕のそばに来て、
「わたしと義人さんは結婚を前提にお付き合いしている仲です」
と、突然の我が家にとっては爆弾発言。
母さんは口に含んだ味噌汁を盛大に吹き出して咳き込む、父さんは読みかけの新聞を折り目から半分に破って、聞いた当のひなはというと、顔を引きつらせてその場で固まってる。まぁ僕も半分固まっていたんだけど、吉川さんを見上げると、そこには満面の笑みを浮かべて僕を見る吉川さんの顔があった。もうそれだけで幸せな気分になる僕。
しかし、そんな空気を打ち破ったのはまたしてもひな。まだひきった顔のまま、
「い、今――け、けけけ、結婚と、仰いましたか?」
さすがに高校一年で「結婚」という言葉は早々聞かないだろうね。僕もそうだし――
しかし僕は昨日、言い間違いだけど結婚してほしいと吉川さんに告白して、吉川さんからOKを貰っているから、吉川さんの言うとおり、僕たちは結婚を前提にしているというのは間違いはないんだけど、やっぱ驚くよね――
「あ、あの吉川さん?」
咳き込みから回復し口の周りやテーブルを吹いた母さんが吉川さんに話しかける。
「はい、なんでしょうおかあさま?」
吉川さんが体ごと母さんに向く。吉川さんが動くと甘い良い匂いがしてすごくこう――
「何ニヤけてんのよ、お兄ちゃん!」
ひなが僕を睨んでくるけど、そんなことより今は吉川さんの良い匂いを嗅いでいたい気分。何か、僕って変態?
「あのね、吉川さん。あなた達はまだ高校生でしょ?それにね、何も取り柄のないこんな子でいいの?あなたならもっとお似合いの――」
何言ってくれてるんだよ母さん!
言い返してやろうと立ち上がろうとした僕の肩に手を当てて僕を制した吉川さんは、母さんを立ったまままっすぐ気見据えるて――
「おかあさま。こんなことを申し上げては失礼ですが、私はずっと義人さんを見続けてきました。入学式のとき、私と目が合ったときの義人さんの照れた表情も、体育で上手にできなくて悔しそうにする姿も、毎日おかあさまの手作りと思われますお弁当を美味しそうに食べるその表情も、私にとって義人さんはとても大切な存在なのです。もし義人さんに合わないと思われるならば私を悪く言っていただいても構いません。でも義人さんから昨日結婚してくださいとお申し込みいただいた時、私は心から喜んだのです。私が心から好きで愛する義人さんに結婚を申し込まれたのですから」
そういってニッコリ微笑む吉川さんに母さんはもう何も言わなかった。
けど、ひなは別だった。
「お兄ちゃん、交際申し込むより先に結婚申し込むって、お兄ちゃんの頭はどうなってるのよ!」
と、ひなが僕の頬を思い切りつねってくる。
「い、いひゃい!いひゃいってひあ!」
「そりや痛くしてんだからとうぜんでしょ!」
兄妹でそんなことしていると、何やら黒いスーツに見を包む女性がリビングに入ってきた。
「お嬢様、そろそろお時間が――」
黒スーツの女性に言われて、ひなに頬つねられたまま目だけを壁にかけられている時計に目をやると、現在時刻八時五分。遅刻する時間だ。
「あ、ヤバッ!遅刻する!」
ひなは僕の頬から指を離して一目散に玄関へ走る。
「義人さん、私達も向かいましょう!」
と吉川さんがソファにおいていた僕のカバンをとって渡してくれる。
「おかあさまおとうさま、続きは夕方以降にお時間をいただけますか?」
吉川さんがそういって名刺風のカードを二枚取り出して、父さんと母さんに一枚ずつ手渡す。
「今夜七時にうちにおこしください。場所はお渡ししたカードに書かれております。もしこ不明な点がございましたら、そちらの番号までお電話をいただければうちの者が対応いたしますので。それでは行ってまいります」
と、再び優雅に父さん母さんにお辞儀をすると、黒スーツの女性に「車を回しなさい」と一言告げた。
えっと――吉川さんっていったい――
吉川さんに連れられるままに玄関に行って別の黒スーツの女性に靴を履かせてもらうと、そのまま玄関に止めてある車に載せられた。車の中は席が対面になっている。僕が座ったその目の前には唖然として固まったままのひながちょこんと座っている。
「あれ、ひな?」
ひなに声をかけると、
「あの黒いお姉さんにお姫様抱っこされて載せられた」
と答えるひなの瞳はハート型になっている。
そして、僕の隣には当たり前のように吉川さんが座ってきた。
そして運転手と助手席の人が乗るとすぐに車が発進する。
「レミさん、裏門から入ります。私と義人さん、そしてひなさんの上履きを裏門の通用口に用意してください」
「承知いたしましたお嬢様」
レミさんと呼ばれた助手席の黒スーツの茶色い髪の女性が吉川さんの指示に返事するとスーツの襟を口に近づけて吉川さんの指示どおりのことを言い、しばらくして――
「お嬢様、ご用意完了いたしました」
と顔は前を見たままでそう言ってきた。
吉川さんは「ありがとう」だけ言って、僕の腕に抱きついてくる。吉川さんの甘い匂い再び。
吉川さんの良い匂いに良い気分になっていると、突然スネを蹴られた。蹴った主は目の前のひなしかいない。ひなに抗議の目を向けると、
「鼻の下伸ばしちゃって、変態!」
と、毒ついてくるひな。
ひなよ、お前の彼氏もひなの匂いに鼻の下伸ばしていると思うぞ。
ひなには高校に入ってから付き合ってる彼氏がいる。なぜ知ってるのかって?そりゃ紹介されたから。というか、ひなと彼氏が、その――事に及ぼうかとしているとき、本を読みながら歩いていた僕は、ひなたちのその空気を全く読めてなくて、僕の部屋と間違ってひなの部屋のドアを開けちゃって、ひなと彼氏の戸田春樹くんが、その――キスしてるところをバッチリ見ちゃって、それて紹介されたというか――
まぁ、ひなは兄の僕が言うのも何だけど可愛いと思う。まぁ兄への当たり方はきついけど、それだけで彼氏くんには甘いのだろうと思うし。それにひな達の――その最中の声も壁越しに聞こえてきたこともあるし――でもまぁ、ひなは声を少し落とした方がいいと思う。うちの壁はそこそこ防音仕様になってるのに声が聞こえるってのは……まぁ盛り上がってるんだから仕方ないことだとは思うけども、童貞な僕のことも考えてほしいよ。思わずひなの声で自家発電しそうになったじゃん。
「今なんか変なこと考えてたでしょ!」
どうしてこうひなは勘が鋭いのだろうか。
でも女の人全般的に勘が鋭いっていうよね。てことはやっぱり吉川さんもそうなのかな――
と左側にいる吉川さんを見てみると、何か鼻をスンスンやってるような……も、もしかして僕臭かったりする?今まで彼女なんてできたことないから体臭の臭いまで気が回らなかったよ。
臭かったらどうしよう!
吉川さんに嫌われたら、僕立ち直れないかも――
「はい」
「ありがと」
「もうお父さん、ご飯のときに新聞やめてください」
「ん?お、おう――」
僕の家のいつもの朝の光景。
僕と一つ下で同じ学園に通うひなは食パンにハムエッグと生サラダ。
父さんはご飯に味噌汁と焼き鮭。
母さんは台所とダイニングテーブルを行ったり来たり。
朝の情報番組の三回目のじゃんけんタイム。
「今日はパーだ!」
いつもギリギリで入力するひな。よくもまぁそんなギリギリで選択できるなと感心する。
そしてその結果は――
何やらお笑い芸人が複数でいつものじゃんけんメロディを歌いながら出したのは、グー。
「よし勝ったー!今日は良いことあるわ!」
ひなが右拳をつい上げて勝利の勝鬨を上げる。
「はいはい、じゃあ今日はひながご飯作ってね!」
ようやくテーブルについた母さんが父さんと同じ朝
ご飯の焼き鮭の身をほぐして口に運ぶ。
「えー!」
ひなが母さんにブーイングする。
その時――
ピンポーン……
呼び鈴が鳴った。
一体誰だろう?壁の時計を見ると七時四十分を指していた
「誰よ、このクソ忙しい時間に!」
母さんが苛ついた声を出す。そりゃようやくご飯にありつけたばかりなのだから仕方ないよね。
「あたしがでるよ」
と、ひなが玄関に向かう。
僕もあまり余裕がないので手持ちの残りのパンを口に放り込んで薄めのコーヒーで流し込んだ、その時――
ドタドタドタとひなが廊下を走ってきて勢いよくリビングの扉を開けた。そのひなの顔には驚愕という文字がそのまま書かれてあるようだ。
「ひな!女の子なんだからそんなに……」
という母さんの声を遮るように
「今はそんな場合じゃないの!」
そう言って、僕に近すぎるくらいに近づくと、
「お兄ちゃん、あ、あの……」
と、荒げた息でどもるひな。
「なんだよ、近いよひな」
押しのけようとする僕の手を取ったひなが更に顔を近づけて、
「だから近い……」
「お兄ちゃん、吉川先輩とどういう関係なの?」
「へ?」
ど、どどど、どーゆー関係って……クラスメイト……でも告白していいって言ってもらったから恋人?……でも結婚が云々……僕と吉川さんってどんな関係?
僕が言い淀んでいると、ひなはまた玄関に戻って今度は、吉川さんと一緒に戻ってきた。「朝食中にお邪魔いたします」と礼儀正しくそして優雅に笑顔でお辞儀をする吉川さん。やっぱ可愛いです。父さんも母さんも吉川さんの可愛い笑顔にやられている表情。
そんな空気の中――
「吉川先輩、家のお兄ちゃんとどういう関係なんですか?」
とひなが吉川さんに聞くと、吉川さんは「あらそんな事」と言いながら僕のそばに来て、
「わたしと義人さんは結婚を前提にお付き合いしている仲です」
と、突然の我が家にとっては爆弾発言。
母さんは口に含んだ味噌汁を盛大に吹き出して咳き込む、父さんは読みかけの新聞を折り目から半分に破って、聞いた当のひなはというと、顔を引きつらせてその場で固まってる。まぁ僕も半分固まっていたんだけど、吉川さんを見上げると、そこには満面の笑みを浮かべて僕を見る吉川さんの顔があった。もうそれだけで幸せな気分になる僕。
しかし、そんな空気を打ち破ったのはまたしてもひな。まだひきった顔のまま、
「い、今――け、けけけ、結婚と、仰いましたか?」
さすがに高校一年で「結婚」という言葉は早々聞かないだろうね。僕もそうだし――
しかし僕は昨日、言い間違いだけど結婚してほしいと吉川さんに告白して、吉川さんからOKを貰っているから、吉川さんの言うとおり、僕たちは結婚を前提にしているというのは間違いはないんだけど、やっぱ驚くよね――
「あ、あの吉川さん?」
咳き込みから回復し口の周りやテーブルを吹いた母さんが吉川さんに話しかける。
「はい、なんでしょうおかあさま?」
吉川さんが体ごと母さんに向く。吉川さんが動くと甘い良い匂いがしてすごくこう――
「何ニヤけてんのよ、お兄ちゃん!」
ひなが僕を睨んでくるけど、そんなことより今は吉川さんの良い匂いを嗅いでいたい気分。何か、僕って変態?
「あのね、吉川さん。あなた達はまだ高校生でしょ?それにね、何も取り柄のないこんな子でいいの?あなたならもっとお似合いの――」
何言ってくれてるんだよ母さん!
言い返してやろうと立ち上がろうとした僕の肩に手を当てて僕を制した吉川さんは、母さんを立ったまままっすぐ気見据えるて――
「おかあさま。こんなことを申し上げては失礼ですが、私はずっと義人さんを見続けてきました。入学式のとき、私と目が合ったときの義人さんの照れた表情も、体育で上手にできなくて悔しそうにする姿も、毎日おかあさまの手作りと思われますお弁当を美味しそうに食べるその表情も、私にとって義人さんはとても大切な存在なのです。もし義人さんに合わないと思われるならば私を悪く言っていただいても構いません。でも義人さんから昨日結婚してくださいとお申し込みいただいた時、私は心から喜んだのです。私が心から好きで愛する義人さんに結婚を申し込まれたのですから」
そういってニッコリ微笑む吉川さんに母さんはもう何も言わなかった。
けど、ひなは別だった。
「お兄ちゃん、交際申し込むより先に結婚申し込むって、お兄ちゃんの頭はどうなってるのよ!」
と、ひなが僕の頬を思い切りつねってくる。
「い、いひゃい!いひゃいってひあ!」
「そりや痛くしてんだからとうぜんでしょ!」
兄妹でそんなことしていると、何やら黒いスーツに見を包む女性がリビングに入ってきた。
「お嬢様、そろそろお時間が――」
黒スーツの女性に言われて、ひなに頬つねられたまま目だけを壁にかけられている時計に目をやると、現在時刻八時五分。遅刻する時間だ。
「あ、ヤバッ!遅刻する!」
ひなは僕の頬から指を離して一目散に玄関へ走る。
「義人さん、私達も向かいましょう!」
と吉川さんがソファにおいていた僕のカバンをとって渡してくれる。
「おかあさまおとうさま、続きは夕方以降にお時間をいただけますか?」
吉川さんがそういって名刺風のカードを二枚取り出して、父さんと母さんに一枚ずつ手渡す。
「今夜七時にうちにおこしください。場所はお渡ししたカードに書かれております。もしこ不明な点がございましたら、そちらの番号までお電話をいただければうちの者が対応いたしますので。それでは行ってまいります」
と、再び優雅に父さん母さんにお辞儀をすると、黒スーツの女性に「車を回しなさい」と一言告げた。
えっと――吉川さんっていったい――
吉川さんに連れられるままに玄関に行って別の黒スーツの女性に靴を履かせてもらうと、そのまま玄関に止めてある車に載せられた。車の中は席が対面になっている。僕が座ったその目の前には唖然として固まったままのひながちょこんと座っている。
「あれ、ひな?」
ひなに声をかけると、
「あの黒いお姉さんにお姫様抱っこされて載せられた」
と答えるひなの瞳はハート型になっている。
そして、僕の隣には当たり前のように吉川さんが座ってきた。
そして運転手と助手席の人が乗るとすぐに車が発進する。
「レミさん、裏門から入ります。私と義人さん、そしてひなさんの上履きを裏門の通用口に用意してください」
「承知いたしましたお嬢様」
レミさんと呼ばれた助手席の黒スーツの茶色い髪の女性が吉川さんの指示に返事するとスーツの襟を口に近づけて吉川さんの指示どおりのことを言い、しばらくして――
「お嬢様、ご用意完了いたしました」
と顔は前を見たままでそう言ってきた。
吉川さんは「ありがとう」だけ言って、僕の腕に抱きついてくる。吉川さんの甘い匂い再び。
吉川さんの良い匂いに良い気分になっていると、突然スネを蹴られた。蹴った主は目の前のひなしかいない。ひなに抗議の目を向けると、
「鼻の下伸ばしちゃって、変態!」
と、毒ついてくるひな。
ひなよ、お前の彼氏もひなの匂いに鼻の下伸ばしていると思うぞ。
ひなには高校に入ってから付き合ってる彼氏がいる。なぜ知ってるのかって?そりゃ紹介されたから。というか、ひなと彼氏が、その――事に及ぼうかとしているとき、本を読みながら歩いていた僕は、ひなたちのその空気を全く読めてなくて、僕の部屋と間違ってひなの部屋のドアを開けちゃって、ひなと彼氏の戸田春樹くんが、その――キスしてるところをバッチリ見ちゃって、それて紹介されたというか――
まぁ、ひなは兄の僕が言うのも何だけど可愛いと思う。まぁ兄への当たり方はきついけど、それだけで彼氏くんには甘いのだろうと思うし。それにひな達の――その最中の声も壁越しに聞こえてきたこともあるし――でもまぁ、ひなは声を少し落とした方がいいと思う。うちの壁はそこそこ防音仕様になってるのに声が聞こえるってのは……まぁ盛り上がってるんだから仕方ないことだとは思うけども、童貞な僕のことも考えてほしいよ。思わずひなの声で自家発電しそうになったじゃん。
「今なんか変なこと考えてたでしょ!」
どうしてこうひなは勘が鋭いのだろうか。
でも女の人全般的に勘が鋭いっていうよね。てことはやっぱり吉川さんもそうなのかな――
と左側にいる吉川さんを見てみると、何か鼻をスンスンやってるような……も、もしかして僕臭かったりする?今まで彼女なんてできたことないから体臭の臭いまで気が回らなかったよ。
臭かったらどうしよう!
吉川さんに嫌われたら、僕立ち直れないかも――
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