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二刀流剣士
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迷宮に入れる者たちは、迷宮内の魔物と戦うことで、身体的なレベルアップをする事ができる。
更に、レベルアップによって、特殊な能力を覚える事があり、それは迷宮探索にとって大きな力となる。
通常は五レベル上がる頃には、何らかのスキルが手に入る。遅くてもレベルが二桁になるまでには何かしらのスキルが得られるはずなのだが。
「レベルアップ……はぁ…………一七でも駄目だったか……」
まさに溜息しか出ない状況と言うやつだ。
次は溜息さえも出なくなるかもしれない。
迷宮の東部にて、ソルトは二ヶ月ぶりにレベルアップをしたのだが、またもや何のスキルアップも手に入らなかった。
二ヶ月。
パーティーが解散してから、一人で迷宮を歩き、ほぼ毎日、せっせと雑魚敵を倒しに倒して、ようやっとレベルアップしたのに。
そろそろ諦めるべきなのかな。
そんな思いがつい小さく口をついて出てしまった事に気がついて、僕は頭をガリガリと掻きむしってしまった。
いや、まだだ。
僕はまだ、迷宮で何もしていない。何もできていない。
何よりまだ生きている。
どれだけ時間がかかろうと、諦めたら駄目だ。
諦めることだけは許されない。
この状態で、モチベーションを保ち続けるのは難しいことだ。
だから、こういう時、ソルトは自暴自棄を装って、普段なら隠れてやり過ごす数の敵にでも突撃する。いや、本当に半ば自棄糞なのかも知れない。
通路を敢えての事だが、迂闊にも何も確認せずに曲がり、そこで目に入った敵との戦闘に突入した。
今回の相手は、ゴブリン二匹と迷宮狼三匹の五匹の魔物だ。
ゴブリンとは、二足歩行で武器を使う、緑色の肌の醜い魔物だ。背は一五〇センチくらいで大きくはない。頭部に角なような瘤があるので、小鬼とも呼ばれている。
迷宮狼は、所謂普通の狼だ。ただ、迷宮に現れる狼は倒したら消えてしまうので、そこが迷宮外にいる狼とは違うところだ。痩せ細っていて毛がバサバサなので弱ってるように見えるのだが、これは「そういう」魔物なのだ。普通に素早く動くし、普通に獰猛に咬み付いてくる。
一人で相手をするには数が多いのだが、ソルトは「来いよお!」と叫びつつ、自ら一番手前にいる迷宮狼に斬りかかっていったのだった。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ」
流石に五匹相手はキツかった。
危なく死んじゃうところだった。
確かに、レベルが上がって、ここに来た頃よりも全然早く動けるようになったし、剣で与えるダメージだって最初の三倍くらいになった。
当て所が良ければゴブリンや迷宮狼なら一撃で倒す事だってできるようになった。
でも、やっぱり数に物を言わせた攻撃回数の多さや、背後、足元、ジャンプなんかの多角的な攻撃の全部を躱すことはできない。
自分の体力を数値化できるなら、たぶん、ニ、三点しか残ってないだろう。
そのくらいダメージを受けたし、太ももをゴブリンの剣で斬られてしまったせいで、今は歩く事もできそうにない。
「くぅぅぅぅぅ……痛って……」
ヒップバッグから傷薬を取り出して、斬られて肉が見えてしまっているその部分にドロっと掛けると、声を我慢できない程の痛みを感じる。
でも、その痛みの分だけの効果はちゃんとある。
一五センチくらいあった傷口が見る間に塞がり、更に疲労や全身の軋みも回復していくんだ。
一回十万円の超高級傷薬は、その値段に応じた効果がちゃんとある。流石に体力全快とまでは言えないけど、もう、普通に走って出口に向かうくらいはできそうだ。
ゴブリンと迷宮狼がドロップしたのは、狼の毛皮二枚だけだった。ゴブリンは何も落とさないことが多い。
今回の迷宮探索で手に入れたのは、狼の毛皮が八枚と、迷宮大ミミズの肉三個と栄養土一個だ。全部を買い取ってもらっても、二万円くらいにしかならないだろう。
大赤字だ。
でも、五匹を同時に相手にしても、僕の二刀流で切り抜ける事ができた。
かなりの無茶だったけど、いつか同じ目にあった時に、諦めずに戦うことができる。
スキルはないけど、僕は確実に強くなってるんだ。
左の腰に下げた長剣の柄を右手で掴み、右の腰に下げた短剣を左手で掴む。
交差した両手を一気に引き上げて、二振りの剣を鞘から抜く。
そして、少し先にいる一匹のゴブリンに向かって走る。
そして、短剣で軽く牽制して、長剣を突き出してゴブリンの首を貫いた。
こんな事は、最初の頃の僕にはできなかった事だ。
両手で持っても重たいと感じていた長剣も、今や右手一本で自由に振ることができる。
僕は強くなっている。
もう一度、自分に催眠術でもかけるかのように、小さく呟いた。
更に、レベルアップによって、特殊な能力を覚える事があり、それは迷宮探索にとって大きな力となる。
通常は五レベル上がる頃には、何らかのスキルが手に入る。遅くてもレベルが二桁になるまでには何かしらのスキルが得られるはずなのだが。
「レベルアップ……はぁ…………一七でも駄目だったか……」
まさに溜息しか出ない状況と言うやつだ。
次は溜息さえも出なくなるかもしれない。
迷宮の東部にて、ソルトは二ヶ月ぶりにレベルアップをしたのだが、またもや何のスキルアップも手に入らなかった。
二ヶ月。
パーティーが解散してから、一人で迷宮を歩き、ほぼ毎日、せっせと雑魚敵を倒しに倒して、ようやっとレベルアップしたのに。
そろそろ諦めるべきなのかな。
そんな思いがつい小さく口をついて出てしまった事に気がついて、僕は頭をガリガリと掻きむしってしまった。
いや、まだだ。
僕はまだ、迷宮で何もしていない。何もできていない。
何よりまだ生きている。
どれだけ時間がかかろうと、諦めたら駄目だ。
諦めることだけは許されない。
この状態で、モチベーションを保ち続けるのは難しいことだ。
だから、こういう時、ソルトは自暴自棄を装って、普段なら隠れてやり過ごす数の敵にでも突撃する。いや、本当に半ば自棄糞なのかも知れない。
通路を敢えての事だが、迂闊にも何も確認せずに曲がり、そこで目に入った敵との戦闘に突入した。
今回の相手は、ゴブリン二匹と迷宮狼三匹の五匹の魔物だ。
ゴブリンとは、二足歩行で武器を使う、緑色の肌の醜い魔物だ。背は一五〇センチくらいで大きくはない。頭部に角なような瘤があるので、小鬼とも呼ばれている。
迷宮狼は、所謂普通の狼だ。ただ、迷宮に現れる狼は倒したら消えてしまうので、そこが迷宮外にいる狼とは違うところだ。痩せ細っていて毛がバサバサなので弱ってるように見えるのだが、これは「そういう」魔物なのだ。普通に素早く動くし、普通に獰猛に咬み付いてくる。
一人で相手をするには数が多いのだが、ソルトは「来いよお!」と叫びつつ、自ら一番手前にいる迷宮狼に斬りかかっていったのだった。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ」
流石に五匹相手はキツかった。
危なく死んじゃうところだった。
確かに、レベルが上がって、ここに来た頃よりも全然早く動けるようになったし、剣で与えるダメージだって最初の三倍くらいになった。
当て所が良ければゴブリンや迷宮狼なら一撃で倒す事だってできるようになった。
でも、やっぱり数に物を言わせた攻撃回数の多さや、背後、足元、ジャンプなんかの多角的な攻撃の全部を躱すことはできない。
自分の体力を数値化できるなら、たぶん、ニ、三点しか残ってないだろう。
そのくらいダメージを受けたし、太ももをゴブリンの剣で斬られてしまったせいで、今は歩く事もできそうにない。
「くぅぅぅぅぅ……痛って……」
ヒップバッグから傷薬を取り出して、斬られて肉が見えてしまっているその部分にドロっと掛けると、声を我慢できない程の痛みを感じる。
でも、その痛みの分だけの効果はちゃんとある。
一五センチくらいあった傷口が見る間に塞がり、更に疲労や全身の軋みも回復していくんだ。
一回十万円の超高級傷薬は、その値段に応じた効果がちゃんとある。流石に体力全快とまでは言えないけど、もう、普通に走って出口に向かうくらいはできそうだ。
ゴブリンと迷宮狼がドロップしたのは、狼の毛皮二枚だけだった。ゴブリンは何も落とさないことが多い。
今回の迷宮探索で手に入れたのは、狼の毛皮が八枚と、迷宮大ミミズの肉三個と栄養土一個だ。全部を買い取ってもらっても、二万円くらいにしかならないだろう。
大赤字だ。
でも、五匹を同時に相手にしても、僕の二刀流で切り抜ける事ができた。
かなりの無茶だったけど、いつか同じ目にあった時に、諦めずに戦うことができる。
スキルはないけど、僕は確実に強くなってるんだ。
左の腰に下げた長剣の柄を右手で掴み、右の腰に下げた短剣を左手で掴む。
交差した両手を一気に引き上げて、二振りの剣を鞘から抜く。
そして、少し先にいる一匹のゴブリンに向かって走る。
そして、短剣で軽く牽制して、長剣を突き出してゴブリンの首を貫いた。
こんな事は、最初の頃の僕にはできなかった事だ。
両手で持っても重たいと感じていた長剣も、今や右手一本で自由に振ることができる。
僕は強くなっている。
もう一度、自分に催眠術でもかけるかのように、小さく呟いた。
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